《脇役転生の筈だった》45

私はしだけ皆と話してから、諦めて兄に電話をかけた。

すると、1コールもしないうちに兄が出る。

『どうしたんだい、咲夜?

僕がしくなった?

大丈夫、明日は港へ迎えに行くからね。

い可い僕の天使』

思わず電話を切りそうになるのをグッと堪え、私はゆったりとした口調で話す。

「お兄様、お迎えの件は大丈夫ですわ。

お兄様にご迷はお掛け出來ませんもの。

ただ……その、ご迷だとは思うのですが…お兄様とどこか夜景の見えるレストランで一緒に夕食をとりたいと思うのですが……駄目、でしょうか……?」

そんな心配そうな聲とは裏腹に私は無表だった。

「……言ってる事と表があってないな…」

「まぁ、そこが咲夜らしい気がするけど…」

私はそんな天也と奏橙を見ると、2人はすぐに視線を逸らした。

『っ……勿論、いいよ。

何せ咲夜のお願いだからね。

楽しみしてるといいよ。

どこかいい所を見繕っておくから』

「ありがとうございます、お兄様!

お兄様と久しぶりに外食出來るだなんて嬉しいです!」

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口調は嬉しさや喜びが滲み出たような口調ではあった。

だが、やはり表は無表だった。

その頃になると耐えられなくなってきたのか天也と奏橙が肩を震わせ始める。

「詐欺だろう」

などと天也が口にしたが気にしない事にした。

ふと、端に座っていた魁斗を見るともう既にお腹を抱えいた。

聲を出さないよう、口元に手を當てていただけいいだろう。

『そ、そうかい?

そこまで嬉しいのかい?』

嬉しそうに口にする兄とは似ても似つかぬ私の表

だが、これで私のために夜景の綺麗なレストランを探すという兄にとっての大義ができただろう。

あの兄の事だ。

絶対に何よりも優先するに違いない。

つまり、だ。

これで屋敷の事は何とかなるはず。

そう思いたい。

「就寢前にお兄様の聲を聞けて良かったですわ。

では、おやすみなさい、お兄様」

『あぁ、おやすみ咲夜』

まぁ、まだ寢ないけど。

私は悪戯っぽく笑うと電話を切り、次に清水へとかけた。

清水もかなりヤバそうだったからだ。

『咲夜様、どうかいたしましたか?』

「……えぇ、し。

真城からは聞きましたが…清水からは答えを聞いていませんでしたから。

清水、あなたは私と共にドイツへ渡るか日本で私の帰りを待つか、どちらを選びますの?」

『咲夜様がいるのでしたらどこへでも』

そんな答えが當然のように返ってきた。

何故そんなにも……とも思うが嬉しくもじる。

そこまで私を信じてくれるのか、と。

「……ありがとうございます。

では、真城にも伝えましたが準備をしてください。

資金は海野家から出しますわ。

その後は…そうですわね、明明後日以降は休日としますわ」

『……どうしても、でしょうか?』

「え?

えぇ……明明後日も休みを……」

『違います。

どうしても、休まなければならないのでしょうか?

咲夜様のお隣を離れる事になるのはやはり抵抗があるのですが……』

……まさかの休日に渋っていたらしい。

そこまでの仕事好きとなるとある意味困るのだが……。

さすがに働きすぎだと思っていたのだが……。

「……せめて、ドイツへと渡る前日は休みをとりなさい。

それが出來ないというのであれば清水、あなたは連れていきませんわ」

『…承知致しました』

なんとか妥協したようだ。

私は電話を切ると深くため息をつく。

真城はまぁ、程々に休むから安心出來るのだが清水は全く休まないので見ているこちらが心配になるのだ。

「はぁ……有能すぎるのも困りますわね…」

「まぁ、それは分かるな」

「……いや、天也の場合と咲夜の場合だと意味が違ってくると思うんだけど?」

私と天也は2人して奏橙の言葉をスルーした。

そんな気が合う私達の様子に奏橙は溜息をつくと優しげな表で紫月とどこかへ行ってしまった。

気付けば魁斗も居なくなっていた。

……まぁ、魁斗はサッカーコートだろうが。

音も自分の部屋に戻ったようで、私と天也の二人きりとなってしまった。

そのため、し居づらくなり、天也の部屋へと移したのだった。

し待っていてくれ。

すぐにお茶を用意する」

すぐに天也は奧に向かいお茶を用意し始める。

「私がやりますわ」

「偶には俺がやるからいい。

咲夜は座っていろ」

そう言われ、私はし躊躇いつつも椅子に座った。

すぐにお茶を容れて天也が戻ってくるとお禮をいい、しばらく無言となる。

私はカップを置くと窓の外を眺めた。

この船は明日の晝には港に著くことになる。

そうなればドイツへ行く前に天也と會えるのは明明後日だけとなるだろう。

それを考えるとしだけ寂しくなる。

「……咲夜」

「…何ですの?」

「あ……いや、何でもない」

「もう……なんですのそれ……」

私はふふっと笑うとしだけ寂しげに瞳を揺らした。

「…そろそろ部屋に戻りますわ。

天也、お茶、味しかったです」

「それは良かった。

……おやすみ、咲夜」

「えぇ、おやすみなさいませ」

私は天也に挨拶をすると名殘惜しいとじながらも隣の自室へ戻った。

ネグリジェに著替え、ベットへると電話から著信音が聞こえた。

こんな時間に誰かと思い名前を見るとラナンだった。

知らないフリをして切ろうとも思ったが私が出るまで何度もかけてくるだろうと思い溜息をついてから電話に出る。

『まさか出るとは思わなかった』

「でなければ出るまで何度もかけてくるのでしょう?」

『まぁな』

私はしみじみ、出て良かったと思った。

出なければ耳元でずっと著信音がなり続ける事になって眠れなかっただろう。

「で、用件は何ですの?」

『いや、用件って程でもないんだけど……』

「そうですか。

では、切りますわ」

『いやいやいや!!

し待て!!』

私は小さく舌打ちすると先を促す。

さっさと寢たかったのだ。

『舌打ちしなかったか!?

お前舌打ちしたよな!?』

「煩いですわね。

さっさと用件を言ってしいのですが」

『おい!?

はっきり言い過ぎだろ!?』

「あら、つい本音が。

モウシワケゴザイマセンワ」

最後は棒読みだった。

他の人ならば失禮だと思うもののラナンには全くそんなことを思わなかった。

そこら辺は兄に似ていると言えるだろう。

だが、別の言い方をするとそれほどまで親しいとも言えなくもない。

『はぁ……。

まぁいい。

咲夜、ドイツに行くんだって?』

「……えぇ、來週には向かう予定ですわ」

『……悠人には?』

周りに負擔をかけてしまうのは分かるがさすがにそろそろ妹離れをさせないと駄目だろう。

シスコンのままでは兄の婚約者になる人が可哀想だし……。

「伝えるつもりはありませんわ。

伝えてしまえばついてくるでしょう?

ですから、ラナン、あなたもお兄様には留學先を伝えないようにしてください」

『……いいのか?』

確かめるような問に私は勿論と頷き周りの口止めも頼むと話を切り上げラナンの靜止すら聞かずに電話を切り、設定を開きラナンを著信拒否にするとそのまま眠りについた。

最初からこうしていればよかったのだと多の後悔をしながら。

その次の朝、メール件數が50程來ていて無言で削除作業をしていたが。

だがまぁ、全てラナンなりの心配や優しさなのだという事を知っているためそんなにも嫌にはならなかったが。

実はラナンも兄と同類なのだと私は考えている。

ラナン自は否定しているが……。

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