《脇役転生の筈だった》47

溫泉から上がり、音と2人で集合の場所へと向かう途中、何を思ったのか音はこんな事を口にしてきた。

「咲夜、殘り1時間は天也と二人きりで過ごしてください。

皆には私から伝えておきますから!」

私は目を見開き何故その様な考えに至ったのかを逡巡する。

とはいえ、理由は既に分かりきっているようなもの。

どうせ會える時間がもうないから…などといった理由だろう。

だが、私は音や紫月とも話したいのだ。

2人きりは確かに嬉しいが……。

音、私は紫月や音とももっと話していたいですわ。

それとも、音は私が邪魔だと?」

「い、いえ!

そういう事じゃないです!

で、ですが……」

「天也とは明後日も話す時間はあるのですから問題ありませんわ」

すると、渋りながらも勧めるのをやめた。

ほんのしだけ後悔しながらも紫月と音との時間を大切にしようと思うのだが……。

部屋にる時、音が天也を手招きした。

そして天也が部屋の外へ出たところで音は私を天也へと押し付け自分だけ中にる。

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そして、カチッと鍵のかかる音がした。

……どうやらスタッフの誰かが関わっているらしい。

要らない気を回しすぎだと思う。

だが、それよりも…だ。

私は今、天也のにいる。

それも仕方ないだろう。

何せ、音が押し付けて行ったのだから。

それでも、だ。

この狀況に思うところがないわけがなく……。

好きな人のの中にいる、それだけで私は今、冷靜さを失っている。

自然と溫が上がっていくのをじる。

初等部の頃とは見違えほどの天也の男らしさに私は思わず直してしまう。

だが流石にずっとこの制でいるわけにもいかないだろう。

そう思いながらも私はただ天也を見上げる形で顔をあげた。

「天也、どういたしますか?」

ほんのり朱に染まる頬を見るに一応は私のことを魅力的に考えてくれているはずだ。

「あ、あぁ……中にるか?」

「そうしたいのですが……鍵がかかっていますの……」

天也は気付かなかったのだろうかと首を傾げる。

が、確かにまぁ気付きにくいかと思い納得するとどうしようかしだけ考えるのであった。

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~天也~

今、俺は一歩もけない狀態にいる。

その原因を作ったのは音だが、迷というわけではない。

何故なら、けない狀態にいる理由が咲夜なのだから。

咲夜にかけられる迷であれば俺はどんなに大変な事であれ嬉しいとじる。

いや、別にこの狀況が迷というわけではないのだが……。

だが、咲夜が俺のにいるというのは嬉しいがそれにより直してしまっているだけなのだ。

音が俺の方へと咲夜を押した時、俺のは咄嗟に咲夜を抱えたのだが…その際ふわりと香ったシャンプーの匂いに直してしまっただけなのだ。

なんとけないことだろうか。

だが仕方ないと思う。

溫泉にってきたばかりなのが分かるほんのりと香るシャンプー、それにらかくサラサラな髪。

それが好きでもない者ならばこんな狀況にはならなかっただろうが相手は咲夜なのだ。

思わず直してしまうのも無理はない。

本人はその破壊力を知らないのだからタチが悪い。

そして、何を思ったのか咲夜は俺を見上げるように顔を上げた。

そのし赤みがかった頬が余計に俺の鼓を早くさせた。

この音が聞こえていない事を祈りながら咲夜の話に耳を傾ける。

「天也、どういたしますか?」

その凜とした可らしい聲に俺はまたドキッとする。

最近はこんな事が多い。

そんなことを思いながらも咲夜の問に答える。

「あ、あぁ……中にるか?」

そのあとに小さく反則だろう……と呟くと咲夜は首をコテンと傾げた。

その仕草のせいで可らしさが倍増される。

咲夜はこういった事を無意識にやるから怖いのだ。

「そうしたいのですが……鍵がかかっていますの……」

咲夜はしすると何かを納得したのか…それとも疲れたのか首をもどした。

そして、鍵のしめられた扉を見て、頷くと咲夜は俺から離れてしまった。

し名殘惜しさをじながらも今は諦める事にした。

「天さんにお願いして開けてもらいましょう。

それか、スタッフルームからつながっていたはずですからそちらから行きましょう」

「……俺といるって選択肢は無いのか…」

殘念だとじながらも俺は諦める。

咲夜が奏橙や結城、音といれるのはもう1日もないのだから。

「そうと決まれば天さんを探しに行きましょう!」

咲夜が笑顔を俺に向ける。

その笑顔は眩しくて、正しく天使のような笑みだった。

咲夜のファンクラブに所屬している者達や悠人先輩が天使や天使様と呼ぶのがしだけ分かる気がした。

「申し訳ありませんが…天さんはいらっしゃいませんか?」

早速咲夜が近くにいたスタッフに話しかける。

その行力は見習うべきところなのだろうが……時々行力がありすぎて困る。

俺は苦笑しながら咲夜を追うのだった。

~咲夜~

「うぅ……恥ずかしい、ですわ……。

あぁ、もう…何故すぐに離れなかったのでしょう……?

離れておくべきでしたわ……」

私は1人悶えていた。

と言っても表には出ていないが。

天也にバレないようにする事だけを意識しているからだ。

バレると恥ずかしすぎて顔も合わせられなくなるのだ。

そのためバレないようにする必要があった。

……私のためにも。

「咲夜、どうかしたのか?

そんな急ぐなんて珍しい……。

そんな急ぐと転ぶぞ」

「っ……何でもありませんわ!」

私は思わず足を止めた。

天也に心のを見かされたようでドキッとしたがすぐに冷靜になる。

深呼吸をすると私は再び歩き出す。

「いいから行きますっ…キャッ…」

急ぎ足になっていたからなのか勢を崩してしまい転びそうになる。

そこを天也が寸前で私の手を引きその結果、最初の狀況と同じ様な狀況へと陥ってしまった。

「大丈夫か?」

「っ…は、はい……。

大丈夫、ですわ」

天也が助けてくださりましたから…。

そう口にしようとしていたのに私の口から出たのは全く別の言葉だった。

だが、天也の吐息が耳にかかり私は天也の尋ねた意味とはまた違う意味で大丈夫では無くなってくるのだから仕方ないのだ。

まぁ、當たり前ではあるのだが、そんな事に気付きもしない天也はホッとため息をつくと私を離した。

そして、仕方ないという様に眉をかすと安堵のじったような聲で話し出す。

「ほらみろ、だから急ぎすぎだと言ったんだ。

怪我でもしたらどうする……」

ウッと言葉に詰まるが私は意趣返しの様な気持ちで、いつもは言えないような言葉を口にした。

「怪我なんてしませんわ。

だって、天也が助けてくださるでしょう?」

すると天也は目を見開いた後に嬉しそうに、だがそれでいて心配そうな表をした。

「出來る限りはするつもりだが……俺がいなかったらどうするつもりなんだ?」

「あら、その時は素直に転びますわ」

「おい……それは駄目じゃないのか?」

ククッと笑って天也は私に軽口を返す。

「というか…私はそんなに転びませんわ…」

呆れ半分だったが天也は悪いと言って笑っただけだった。

仕方ないとばかりに私も笑うのであった。

「天さんがいませんわね……仕方ありませんわ…。

真城、いますの?」

「はいはい、全く…人使いの荒い主だ。

お嬢、スタッフルームの鍵は開けといたぜ」

「流石は報屋ですわね……。

ありがとうございます、真城」

心で関心しつつも私と天也は真城の開けたというスタッフルームへ向かう。

スタッフルームは確かに真城が言っていたように鍵が空いていた。

だが、誰もが慌ただしくいている。

そんな中を通って行くのは私達には無理だった。

「真城にやられましたわね……。

まさか真城まで一緒になっていたとは……。

……ですが、真城はいつ音と……?」

々と疑問はあったが取り敢えず分かった事は真城までグルだったという事だ。

「本當、要らない気を回しすぎですわ……」

「咲夜?」

私の呟きが聞き取れなかったのか天也が名前を呼んでくる。

ドキッとしてしまうがまぁそれはそろそろ慣れたので上手く冷靜を裝うことが出來た………はず。

「何でもありませんわ。

…真城を頼るのは無理そうですから仕方ありませんわね。

あまり…1番行きたくない相手なのですが……磯長さんのところに行きますか……」

あの暑苦しい人というか、話を聞かない人というか……そんな人が多い場所なので行くのが嫌になってくるのだ。

「あ、あぁ……。

……あの人か…悠人先輩と同類のような気がするんだが……」

「お兄様と同類だなんて……有り得ませんわ。

磯長さんはそんなシスコン…?ではありませんし、お兄様は話を……聞きませんわね…」

私は思わず視線を逸らすのであった。

「……磯な……」

「お嬢!!

どうかしましたか!?

この磯長、お嬢のためならば何でも致します!!

おいお前ら!

急いでマカロンを……」

「いいですわ!

磯長さん、中央ホールの鍵を持っていましたら開けていただきたいのですが……」

「……ちゅ、中央ホール…ですか……。

申し訳ありません、お嬢。

奧方から中央ホールの鍵を開けるなと言われておりますので……」

なんということだろうか?

まさかの母もグルだったようだ。

いや、きっとこの計畫を立てたのが母だったのだろう。

それならば真城のことも理解出來るし手際の良さにも納得がいく。

これはもう諦めた方がいいだろう。

「……分かりましたわ。

お仕事中、申し訳ありませんでした。

では、失禮致します」

「お、お嬢…力になれず……。

……いや、奧方にになら……?」

「いえ、そこまでしていただく訳には行きませんもの。

それに……どうやら真城もお母様の協力者のようですし?」

そう、真城がいるからこそ下手に行できないのだ。

真城ならばきっと母に言ってしまうだろうから。

敵に回ると厄介な事この上ない。

「真城……?」

「いえ、何でもありませんわ」

真城の事は昔から仕えている者と私達家族しか知らない。

報屋という事もありその方がいいだろうとの配慮である。

磯長さんは比較的新しい方の人だ。

そのため知らされていないのだ。

……まぁ、屋敷で知っている者と言えば清水の他には面接をした人のみなのだが。

そのため真城には偶に契約違反者がいないか確かめて貰っている。

それもあり知らない方がいいのだ。

「……どうしましょうか?」

「……取り敢えず移するか」

私達はまんまと母の思通りに2人きりの時間を過ごしたのだった。

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