同級生が新たな家族に!!》道中にて

外に出された俺と雪村さんは家の前でけていなかった。

なんせ、行き先を決めてないし、そもそも俺たちはまともに自己紹介すらしていない。雪村さんのことは俺が一方的に知っているだけだ。

このままじゃダメだよなぁ……知らない相手と出かけたくはないだろ。俺だって嫌だしな。よし、まずは自己紹介をしよう。それから、行き先を決めればいいだろう。きっとこれでうまくいくはずだ。自己紹介をしたうえで俺と行きたくないと言われたら……まぁ、それはその時に考えよう。

とりあえず今の方針は決まったのだが、話したことがない相手と話すのには勇気がいる。父さんの言った通り俺は人見知りである。

それに、普通の子でも張するのに相手は雪村さんだからなぁ……

そう、相手はあの學園のアイドルの雪村朱音なのだ。いつもの二倍くらいは張の度合いが増す。

だけど、ここでうじうじしているわけにもいかないので、俺は勇気を振り絞って雪村さんに話しかけた。

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「えっと……雨宮優あめみやゆうです。……よろしく」

俺は相手の顔を見ないという失禮な態度でそう言った。

自己紹介の容は……まぁ。お互い初対面だしこんなもんだよな?それとも、もっと報量を増やした方がよかっただろうか?なんだか不安になってきたぞ。

「雪村朱音です。こちらこそよろしくね」

雪村さんはちゃんと俺の顔を見て自己紹介をしてきた。

雪村さんの態度は俺と全然違ったが容は同じだったので罪悪しの安心を得た。

俺はこれだけで會話を終えるわけにはいかない。次は行く場所を決めなきゃいけないのだから。

だけどこれが一番の問題かもしれない。なんせ、デート経験のない俺にはまともな場所など思い浮かばないだろうからな。だから、ここは雪村さんに丸投……相談することにしよう。雪村さんならこういう時の遊び場とか知ってそうだしな。

「えっと、それで……これからどこに行こっか?」

「雨宮君の行きたいところでいいよ?」

「えっと……」

そうきましたか。

そんなこと言われても、今思いつくのなんて俺がよく行く近くのゲームショップや古本屋くらいだ。だが今そこに行くのはダメだということくらいデート経験皆無の俺でもさすがにわかっている。

う~んどこだ?雪村さんが楽しめて、ついでに時間も潰せる場所は…………

そう考えていると一つだけ思いついた。

「……じゃあ、とりあえず、街にあるショッピングモールに行かない?あそこなら何でもあるし、ここから歩いて三十分くらいで著くし……どうかな?」

あそこにはゲーセンや映畫館、スポーツショップとなんでもござれの場所だから、なんとかなるはずだ。

それに、デートっぽいし、雪村さんも楽しめるところもあるだろうし、時間も潰せるだろうし、我ながらかなり無難なチョイスなような気がしてきた。

だけど所詮俺が選んだ場所だ。自信なんてあるはずがない。どんな返事されるかもわからず、俺はとてもドキドキしていた。

「うん。いいよ。そこに行こ」

俺は雪村さんの表をちらちらと確認していたので、雪村さんが笑顔でそう言ったのが見えた。

よかったぁ。本當によかった。

嫌な顔もされてないので、嫌々というわけはないと思う。拒否られるという最悪の結果だけは避けられたし、とりあえずいいだろう。

「じゃあ……行こっか」

「うん」

俺たちはそう言ってようやく家の前からき出した。

それから俺たちは無言のまま歩いていたが、この時間ははっきり言ってきつかった。初対面の相手と無言で一緒にいるのがこれほどまでにきついとは思っていなかったのだ。まぁ、俺から話しかければいいのだが、そんな勇気はもうないし、そもそも話題がない。

カップルとかよく會話が盡きないよなぁ……それとも、そういった時間ですら良いとじているのだろうか?俺には一生わからん覚だろうなぁ……

そんなことを考えていたが、今はこれからのことを決める方が重要だと思い、そのことについて考えることにした。

それにしても、どこにいけばいいんだ?雪村さんの好みなんて全くわからんし。でも夕食はあそこがいいかな、結構おしゃれだし。まぁ、これも雪村さんの嫌いなものでなければだけど……

結局俺は結論なんて出せずに考え続けていると、今度は雪村さんから話しかけてきた。

「雨宮君って何組だったの?」

「えっと、D組だったよ」

「そっか。D組かぁ……私はね、A組だったよ」

「知ってるよ」

「えっ……どうして?」

「そりゃ、うちの學園で雪村さんって有名だし」

「はははぁ……そうだよね……」

「……」

俺は地雷を踏んでしまったらしく、雪村さんは悲しそうにそして、つらそうに微笑んでいた。

たぶん、雪村さんの反応からして學園でアイドル扱いされることが嫌なのだろう。

だけど、彼の人當たりの良さと優しさで、他人の抱いているイメージを壊さないようにしていたから、周りは気づくこができなかった。俺もさっきの反応を見るまでは、考えたこともなかったしな。

さらに、さっきの俺の発言で今日もそのように見られてしまっているとじたんだと思う。たしかにずっとそう思っていた。雪村朱音は學園のアイドルだと。

でも、今の雪村さんを見て今のままじゃだめだと思う。

これから俺たちは家族となり一緒に住むことになるはずだ。

それなのに、俺が雪村さんをアイドルとして接していくのは、ひどい行為のような気がする。それに、學園でも家でもアイドルを演じていたら、いつか壊れてしまうかもしれない。

そんな、雪村さんは見たくなかった。

だから、これから俺は普通のの子として雪村さんに接しようと思った。

「ごめん」

「んっ?どうしたのいきなり」

「アイドル扱いされるの嫌だったんだね」

「……大丈夫だよ。もう慣れてるから……」

慣れてたからといって、大丈夫とは限らない。

その証拠に雪村さんは、俺の言葉を否定せずにまた悲しそうにそして、つらそうに微笑んでいる。

これは、俺の過ちだ。

俺の行いだけじゃないだろうが、今雪村さんをこの顔にしてしまっているのは俺なのだから。

何とかしなければいけないという思いが、脳を駆け巡る。

出てきた答えは、自分の思いを伝えればいい、なんてものだったがこれしかないような気がした。

自分の思いを人に伝えるのはかなり恥ずかしい。だけど今はそれをやらなければいけない。

ちゃんと自分の思いを伝えるために俺は初めて雪村さんの顔を見る。すると、雪村さんも俺のほうを向いたので、二つの視線が結び付き一つになった。

「雪村さん……これからは、學園のアイドルとしてじゃなくて、一人の子として接するよ」

「えっ……」

俺はさっきの思いをそのまま言った。

雪村さんにはいきなり何言ってるんだ、と思われたかもしれない。

それでも、俺は言葉を続けた。

こんなことになってしまったのは、俺のせいだしこれからのためでもあるからな。

「だから、俺の前では肩肘張らずに普通にしていて大丈夫だから」

「……」

俺は言いたかったことを言い切ったが、雪村さんは黙っていた。

俺の言ったことはまずかったのだろうか、という思いがこみ上げてくる。

「えっと……これから俺たち一緒に暮らすことになるんだし、その方がいいと思ったんだけど……嫌だった?」

雪村さんの沈黙に耐え切れずに、俺は言い訳のような言葉で締めくくった。

後は雪村さんの答えを待つしかない。しでも雪村さんに俺の思いが伝わってくれれば嬉しく思う。

「ううん……全然嫌じゃないよ……ありがとう」

雪村さんの嬉しそうな顔を見れて、俺は安心する。

目元にはうっすらと涙が見えていたが、見なかったことにした。

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