《同級生が新たな家族に!!》ようやく始まったデート 下
エスカレーターでもう一度三階に行き、さっき行ったゲームショップよりも先に進んだあたりから、騒々しいBGMやらゲームの音やらがだんだんと聞こえてきた。そして、さらに進んでいくと目的地のゲームセンターが見えてくる。
「なんか、久しぶりだなぁ……」
雪村さんは、懐かしむようにその景を見ていたが、俺は友達とたまに來るので、また來たなというじだ。
「前にも來たことあるの?」
「ううん。ここは初めてだよ。でも、違うところなら小學生の時に行ったことあるんだ」
「そうなんだ。最近はないの?」
「えっと……中學の時に二、三回行った気がする。でも、學園に上がってからは一回もないよ」
「そうなの?」
「うん。誰もってくれなかったから……」
なるほど。これは學園のアイドルというレッテルのせいだろう。學園にいる人は誰もが雪村さんのことをアイドルとしてしか見ていないからな。遊びにうなんて恐れ多いと思ってる人は多そうだし。なんというか、人気があるせいである意味ボッチになってしまったってじだな。
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俺はまた地雷を踏んでしまったようだ。雪村さんの顔は暗くなっていた。
はぁ……俺は何をやってるんだか。
「それじゃあ、今日は久しぶりなんだし楽しまなきゃね」
「……うん!」
とりあえず、これからを楽しもうというじで俺は雪村さんに話しかけると、雪村さんは暗い顔から笑顔に変わった。
こうして、なんとかゲーセンめぐりを開始することができそうだった。
ここのゲームセンターには、あらゆるゲームがそろっている。リズムゲーム、シューティング、カードゲーム、格ゲー、メダルにプリクラといたものがある。もちろんエアホッケーやUFOキャッチャーなどもある。
今俺たちは、中をうろうろしていた。
さて、どれが雪村さん好みのゲームだろう。なんか、どれでも楽しんでくれそうだなぁ……まぁ、聞いてみればいいか。
「雪村さんは、何かやってみたいのある?」
「えっ!でも……今は雨宮君の番だよ?」
「雪村さんが選んでいいよ。俺ここに來たことあるし、大やったことあるからね」
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「そうなの?でもなぁ……どれも面白そうで悩んじゃうし……あっ!あれやりたい」
そう言いながら、雪村さんが指をさしたのはエアホッケーだった。このエアホッケーは単純に一つのパックを打ち合うだけのやつだ。
雪村さんは定番なのが好きなのかな?
「じゃ、これやろっか」
「うん!」
雪村さんは早くやりたそうな顔をしていた。
このエアホッケーは一回百円だそうだ。雪村さんが、私が払うよ、と言ってきたがここは俺が払うことにした。こういうものは男が払うべきだろう。
お金をれた後、俺と雪村さんはそれぞれ分かれ、お互いにマレットをもって向かい合い、パックが來るのを待っている。
パックは雪村さんのほうに行った。
ゲーセンは久しぶりと言っていたが、さすがにエアホッケーのやり方は知っているみたいだ。パックを今にも打とうとしている。
「いくよ!」
さて、どれくらいの実力かな?お手並み拝見っと……って!うわっ!
そんな余裕をぶっこいていたら、かなり強くパックをはじいたらしく、かなりのスピードでやってきた。
想定外のことに俺は対応に遅れ、雪村さんが一ポイントを獲得した。
「まじかよ……」
「どう?私も結構やるでしょ?」
「……まぁね」
「手抜いたら痛い目見るかもよ?」
雪村さんの目は本気だ。彼の選手としての何かに火をつけたらしい。口調も若干変わっている。
まさか、雪村さんが勝負ごとに熱い人だとは思ってなかったぞ。これは、俺も本気でやらないとダメかもな。できれば勝ちたいし。
「わかったよ。これからは本気でやる」
「うんうん。ほら、次は雨宮君からだよ?」
「はいはい」
俺はそう言って、手元にパックを置いた。
そんな余裕でいられるのも今だけだ!
そして、俺はパックをまっすぐには打たず、壁にバウンドさせてからゴールのをねらった。そう來るとは思っていなかったらしく、俺は楽々と一ポイントを獲得できた。
「壁使うなんてずるいよ!」
「いやいや、俺も本気出すって決めたからこれくらいのことはするよ?」
「負けないんだから!」
「そうこなくっちゃ」
そうして、白熱の戦いはしばらく続いた。
しばらく打ち合ったが、互いに防が固くてなかなか得點がらない。
現時點で、三対三の同點だ。そして、試合時間が殘りなくなってきている。
「なかなかやるね、雪村さん」
「雨宮君こそ」
今パックを持っているのは雪村さんだ。ここで決められれば時間的に俺は負けるだろう。
「これで終わりだよっ」
そう言いながら、渾の一発を雪村さんはまっすぐ打ち込んできた。スピード重視にしたのだろう。
俺はそれを止めようとか、防して引き分けにしようとは思わなかった。
賭けだが、そのまま打ち返すということにした。當たれば勢いよくパックが飛んでいくだろう。空振ればそのまま負けにつながる。
俺は迫りくるパックを、最大限の力をもって最適なタイミングで打ち返す。
ここだ!
カンッ。
俺は會心の一発を打てたようだ。プラスチックが反発する音が響き、かなりのスピードで雪村さんのほうに飛んで行った。
これでどうだ?
俺が見つめているパックを雪村さんは、打ち返そうとするが見事に空振った。
そして、そのままゴールのに吸い込まれていく。
そのすぐ後に、試合終了のBGMが鳴った。俺の勝利が確定した瞬間だ。
よし!
「勝ったぁ~~~」
俺の中で張りつめていたものが緩んだようで、かなり気の抜けた聲が出ていた。
それも仕方ないだろう。かなりいい試合で、なんとか勝てたというじだったし。
というか、お互い真剣にやりすぎて、遊びという雰囲気ではなかった気がする。まぁ、楽しかったから、別に構わないけどさ。
「……負けた」
一方で雪村さんは負けてとても悔しいそうだ。
「ねえ……もう一回やらない?」
雪村さんは再戦を申し込んできた。
もしかして、雪村さんってかなりの負けず嫌い?意外な発見かもしれないな。いや、だからテニスが強いのかもしれないな。
まぁ、でもこれはもういいだろう。他にも楽しいのはたくさんあるし。
「これ以外にもまだたくさんあるから、他のにしない?」
「でも……負けっぱなしは嫌」
雪村さんは対戦にこだわりたいのかな?なら他の対戦ゲームを提案すればここをいてくれるか。
「他にも対戦できるのあるからそれで勝負しよう?」
「……わっかたよ」
雪村さんは、しぶしぶだったがわかってくれたみたいだ。
その後は、リズムゲームやレースゲームなどをやり、リズムゲームでは俺が、レースゲームでは雪村さんが勝利した。やはり雪村さんは、勝ったら嬉しそうに、負けたら悔しそうにしていた。
他にもUFOキャッチャーやシューティングなんかもやったが、そろそろいい時間だ。やれて後一つというところだろう。
「そろそろ時間もきたし、最後にやりたいのある?」
「えっ!もうそんな時間?」
「うん」
雪村さんはゲームに夢中だったようで時間経過を忘れていたらしい。まぁ、よくあることだよね。
「そっか~あのね……一つ一緒にやりたいなって思ってたのあるんだけど……いいかな?」
「いいけど、何やるの?」
何だろうか。エアホッケーでリベンジとかかな?まぁ、そうなったら最後だしいっか。
「あれなんだけど……」
「あぁ~~~」
それはプリクラだった。ごめんね雪村さん。またエアホッケーかなとか思って。
たしかに雪村さんは子だし撮ってみたいという思いがあったのかもしれないな。
けれども、俺とでいいのかって思いはあるが、まぁ雪村さんが撮りたいというならそれでいっか。俺があれこれ言うことでもない気がするし。
「ダメ……かな?」
「いいよ。一緒にやろっか。俺も前々から興味はあったし」
「うん!でも……どれがいいんだろ?」
たしかに、プリクラの臺ってたくさんあるよなぁ。たぶん、臺によって機能が違うんだろうが、知識がない俺にはどれがいいかなんて全くわからない。
「う~ん……ほんと、どれがいいんだろうね」
「雨宮君もわからないか……」
ごめんね。役に立てなくて。
「雪村さんが、これって思ったやつでいいんじゃない?」
「う~ん……じゃあ、これで」
「ちなみに理由は?」
「目の前にあったから」
「そんな理由!?」
「うん。それとも、違うのにする?」
「いや、これでいいよ」
どうせ知識のない俺たちが選んでも、どれも同じようなものだろうし別にこれでいいだろう。
そう思いながら俺は目の前のプリクラの臺にとりあえずお金をれた。
すると説明がり、何人だとか背景を選べとか言われたがそういったものは全部雪村さんに任せた。俺にはそういったセンスがないからな。
作しながら雪村さんは「なんか、中學の時の全然違うよ」と言いっていたが、無事に設定を終わらせたようだ。
撮影はすぐに始まるという。
「えっと……どんなポーズをとればいいんだ?」
「う~ん……ピースとかじゃない?」
「なるほど」
雪村さんがそう言ったので俺はとりあえずピースをすることにした。彼も同じくピースをしている。
カウントダウンの後にシャッター音が鳴った。
目の前の畫面には笑顔の雪村さんと、無表の俺が映っていた。
「雨宮君、顔全然笑ってないよ?」
「うっ……ごめん……」
し張してたのだ。仕方ないだろう。
「次はもっと笑顔でね」
「……はい」
それから、三枚ほどなんとか笑顔を作って撮った。
はぁ……ようやく次がラストか……意外とプリクラって神を使うものだな。いや、雪村さんとだからか……
そんなことを考えているとそれは起こった。
最後はもっとくっついて撮ろう、とプリクラの臺がアナウンスしてきた。
これには、雪村さんも驚きと恥ずかしさが顔を埋めつくしていた。俺も同じような顔だろう。
なぜ最後
なったて、今までは一定の距離を開けて撮っていたのだ。
それをいきなりくっつけとか無理な話である。
だが、最後は、くっつかないと撮ってくれないらしい。何かいか、離れた狀態でポーズをとっても臺に注意されるだけだった。
はぁ……あきらめよう。この臺はどうしても俺たちをくっつけたいらしい。もしかして、これってカップル向けの臺だったのかもな。はぁ……考えなしに選んばなければよかったなぁ……まぁ、もうなるようになるだろう。
そう考えて俺は、雪村さんに聞いてみた。
「えっと……もっと近づいてもいい?」
「……うん」
「それじゃ……」
それからゆっくりと俺たちは近づいていく。だが、システム的にはまだ許容範囲ではないらしく、撮影のカウントダウンは始まらない。
俺たちの肩がれ合ったところでようやくカウントダウンが始まった。
鼓が聞こえてしまうのではというくらいに、心臓がうるさかった。
恥ずかしくて雪村さんのほうを見ることができない。たぶん俺の顔は真っ赤だろう。
どんな表をしようかなんて考えることはできなかったので、とりあえずピースだけはしておいた。
そして、撮影が終わると同時にお互いに距離をとる。しかし、その距離はこの臺にった時よりは近い距離だった。
「お、終わったね」
「そ、そうだね」
落ち著け、落ち著くんだ俺。たしか、この後は文字とか書けるはずだよな?
「と、とりあえず出よっか。たしか、文字とか書けるはずだし」
「う、うん。そうだね」
俺たちは何とかその場からいて臺から出た。
外に出てからはお互いに落ち著けていた。あの空間が俺たちをおかしくしていたのかもしれない。
「えっと……どんなこと書けばいいのかな?」
「そうだなぁ……こういう時は、初プリとか、今日の日付とかじゃない?」
「そうだね。久々のことで忘れてたよ」
ペンを持った雪村さんが畫面に字を書いたり、のを変えたりといろいろやっていく。もちろん、センスがないだろう俺は、このことに関しても全部雪村さんに任せている。
最初はぎこちなかったが、だんだんと慣れてきたのかそれとも楽しくなってきたのか、ペンをかす手が軽やかだ。
そして、最後の寫真ってところで時間切れとなり、撮った寫真がプリクラの臺から出てきた。
それを二人で分けた後に、なにやらスマホにも取り込めるらしく二人して取り込んでみた。
その後に、改めてプリクラを見てみると、うまい合に加工してあった。だが、最後のやつだけは無加工で、二人して顔は真っ赤で、ぎこちなくピースをしているものだ。
それを見ると、いろいろと思い出してきて恥ずかしくなってくる。雪村さんも同じなのか顔は赤かった。
これは、誰にも見せられないな。何言われるかわからんし。そもそも、恥ずかしすぎる。
俺はとりあえず財布の中にそれをれて、時間を確認してみた。すると、夕食にはちょうどいい時間だった。
「じゃ、じゃあ夕食に行くか。時間もいい時間だし」
「う、うんそうだね。どこに行こうか」
「えっと……パスタとか大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「そっか。それなら、一応おいしい店知ってるけど……どうする?」
「行ってみたい!」
なんとか普通なじに戻れた俺たちは、ゲームセンターを出て一階に向かった。
俺たちが向かった店はパスタ専門店だ。テレビで特集を組まれるくらいには有名である。外裝も裝もおしゃれで、デートの最後にはもってこいだろう。
夕食時だったが、何とか順番を待たずに店することができた。
「ここって、おすすめとかあるの?」
「カルボナーラだよ」
「そうなの?」
「うん。テレビでやってたからね」
「じゃあ、私それにする。雨宮君は?」
「俺ももちろん同じのにするよ。一回はここの食べてみたかったしね」
俺たちは同じのを頼んだ。ここは注文から提供までの時間が早いことでも有名であるが、さすがにまだ來ないだろう。
し世間話でもするかな。
「そういえば、春休みは部活ないの?」
「あるよ。ただ今日は休みをもらったの。明日からは部活に行くつもりだよ」
そうだよなぁ……春休みだからって運部が休むわけがないよな。
「ねえ、雨宮君はやっぱりテニスはもうやらないの?」
「う~ん……たぶん部活としてはやらないんじゃないかな」
「遊びとしてはやるってこと?」
「まぁ……われたら考えるかな?」
「ならさ……今度時間あるときに一緒にやらない?」
「雪村さんと!?いやいや、俺テニスやめて二年くらいたってるし、もうまともに打ないだろうから無理だよ」
「それでもいいよ。今度一緒にやろ?」
「……考えておくよ」
「うん。お願い」
俺は中學の時に式テニス部にっていたが、公式戦には出たことがない。周りの連中のほうが強くて出場枠を手にれることができなかったからだ。まぁ、中學から始めたから仕方ないけどね。
そういった実績を無視しても俺はもうテニスをやっていない。そんな俺が雪村さんとまともに打ち合えるわけがないだろう。
あまり、自分の醜態をさらしたくはないんだけどなぁ……
でも、雪村さんのあの嬉しそうな顔をされたら、斷れずに言葉を濁すのでいっぱいだった。
他に違う話をしようとしたところで、待っていたカルボナーラが來た。やっぱり出てくるのが早いな。
「いただきます」
「いただきます」
俺たちは同時に食べ始めた。
「すごくおいしいね、これ」
「たしかに、めちゃくちゃうまい」
食事中はほとんど會話はなかったが、別に不快な時間ではなかった。
それから食べ終えた俺たちは、今は小休止といったところだ。
そんな時に、父さんからメールが屆いた。
えっと……なるほど。
とりあえず父さんに返信しておいた。余計なおせっかいとかも書かれてたのでそれへの返信も忘れなかった。
「えっと……雪村さん、帰りは家まで送るよ」
「えっ……いいの?」
「もちろん」
「あっ、でも……お母さんまだ帰ってないかも……」
「それは大丈夫。もう家に帰ってるって、父さんからのメールにそう書いてあった」
「そうなんだ。じゃあ、お願いします」
「うん。任せて」
こうして俺たちの、ショッピングモールでの初デートは終わった。
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