同級生が新たな家族に!!》デートのエピローグ

夕食を終わらせた俺たちは、ショッピングモールの出口にいた。まだ外には出ていない。

それには一つだけ理由があった。それは……

「あの……雪村さんの家ってどこ?」

これである。

頭の中でどの道順で帰ろうか考えようとしたら、そういえば雪村さんの家ってどこ?ってなったのだ。送るといいながら、これはかなりけなかった。

でも仕方ないじゃないか。雪村さんと接點なんて今までなかったんだから。それなのに住所を知っていたら、ストーカーを疑われるだろう。

「えっと…知らないのに送ってくれようとしたの?」

「うっ……ごめんなさい」

返す言葉もなかった。

「謝らないで。送ってくれようとしたのは、その…嬉しかったから」

雪村さんは笑顔でそう言ってくれた。

俺はその言葉と笑顔でいくらか気持ちが楽になった。

「じゃあさ…一緒に帰ろう?私、まだ雨宮君と話たいから」

そして、雪村さんの今の言葉は嬉しかった。

俺は、ここで別れるのは悲しいと思っていたから。

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「うん。わかった」

だから、俺も雪村さんと帰ることを選択する。

「じゃあ、行こう雨宮君」

來た時とは違い、帰りは雪村さんが先導していく。

こうして、俺たちはショッピングモールから外に出た。

外はすっかり暗くなっていた。空にはし雲があり、月を隠している。

その中を俺たちは、會話もせずに無言で歩いていた。

人が多いところで話すこともない、と二人して思ったのかもしれない。

ショッピングモールから數分歩き、住宅街にった。

ここには俺たち以外に人はいなく、足音は二人分だけだ。そして、それ以外の音もなく、今この瞬間は、この世に二人しかいないのではとさえ思えてくる。

そんな中で、俺は雪村さんに話しかけていた。

「今日はどうだった?」

「楽しかったよ」

「そう。ならよかった」

「雨宮くんは?」

「もちろん、楽しかった」

本當に楽しかった。いつもの友達と行くのとは、全然違った楽しさだ。

それに、學園では見ることができない、雪村さんを見ることができた。

それは、褒めたりすると顔を赤くする、恥ずかしがり屋な雪村さんだったり、単なるゲームソフトに興味を持つような、好奇心旺盛な雪村さんだったり、勝負事で負けたら悔しがる、負けず嫌いな雪村さんだ。

どれもこれも、學園のアイドルとは思えないものだった。

俺は雪村さんを普通のの子として接すると決めたが、その選択は間違っていなかったと今確信した。

なぜならそのおかげで、アイドルという裝を著せられた雪村朱音ではなく、本の雪村朱音をしは見ることができたのだから。

そう考えていると俺の中から、學園のアイドルと呼ばれていた雪村朱音は消えていった。

「また、行きたいなぁ……」

雪村さんの今の言葉は、つぶやく程度の聲量だったが、しっかりと俺の耳にってきた。

それは単なる獨り言だったのかもしれない。

しかし、俺はその獨り言に応えた。

「そうだね。また機會があれば行っこか」

「うん!」

雪村さんからは嬉しそうな聲で返事がきた。

それから俺たちは、また無言で歩いていた。

行きとは違い、息苦しさとかはじない。

ある程度は雪村さんと、良い関係になれたということだろう。

これはきっと今日のデートのおかげだ。父さんたちには謝しないとな。

そんなことを考えてると、雪村さんが話しかけてきた。

「そういえば、お母さんたちは何してたのかな?」

「う~ん…何してたんだろう?」

そういえばそうだな。

俺たちをデートに行かせておいて、父さんたちは何をしてたんだろう。

雪村さんに言われるまでは、まったく気にしてなかったな。いや、そんな余裕がなかっただけか……

今はそのくらいの余裕はあるので、し考えてみることにした。

「う~ん…引っ越しの話、とか?」

「ああ、そっか!再婚するんだから、これから同じ家に住むことに、なる、もん、ね……」

雪村さんは、言ってて恥ずかしくなってきたのか、どんどん聲が小さくなっていった。

雪村さんが恥ずかしがってるせいで、俺も恥ずかしくなってきた。

「そ、それなら、いつでもゲームできるね」

「そ、そうだね。楽しみだよ」

俺は話を変えるように、関係のないことを言いった。雪村さんもそれに便乗する。

二人して、無理やり話を切り上げたじだった。

それから俺たちは、また無言で歩く。

今度はさっきの會話のせいで、しだけ居心地が悪かった。

それからしばらく歩いたところで、雪村さんは一つの家の前で立ち止まった。

「著いたよ。ここが私の家」

いつの間にか、雪村さんの家に著いていたようだ。

「ここが雪村さんの家かぁ……」

「うん。そうだよ」

初めて見たが一階建ての立派な家だった。

そして、ここに著いたということは、今日の楽しかった時間も終わりということだ。

そう思うと、殘念な気もするが仕方ないだろう。なんでも終わりはつきものだ。

「今日はありがとう。楽しかったよ」

「こちらこそありがとう。それじゃあ、またね。雪村さん」

「うん…またね……」

別れのあいさつはすぐに終わった。

それから、俺は雪村さんに背を向ける。

そして、俺は、一歩、二歩と歩いていった。

「待って、優君!」

すると、後ろから突然、俺を呼ぶ聲がしたので立ち止まり振り返った。……って、優君!?

「……」

俺は何が起きたのわからずに呆然としていた。

その間に、雪村さんは俺の近くまでやって來る。

俺と雪村さんの距離は、約一メートルといったところだろう。

雪村さんは俺の顔を見ている。

今俺たちが立っている場所には街燈がなかったが、ちょうど雲に隠れていた月が徐々に姿を現し、雪村さんをしく幻想的に映し出していった。

「えっと……一つだけ提案があるんだけど…いいかな?」

「う、うん。いいけど…何?」

「その……あのね……」

雪村さんは、なかなか話し始めなかった。

俺は催促せずに、雪村さんが話し始めるのを待った。

そして、數秒経ったのか、それとも數分経ったのかはわからないが、雪村さんはもう一度話し始めた。

「あの……私たちこれから家族になるんだし、その…苗字で呼び合ってるのは、変じゃないかなと思って……だからさ…これからは名前で呼び合うほうがいいかなって思ったんだけど……ダメ、かな?」

たしかに、これから家族になるのに苗字で呼び合ってるのは変だろう。それに、たぶん雪村さんは、苗字が雨宮に変わるだろうし、名前で呼び合うのは自然なことだと思う。

だけど、そんな理由とは関係なく、俺にはただ名前で呼びたいという思いもあった。

だから、俺はその提案に乗っかることにする。

「そ、そうだね…これからは、名前で呼び合うことにしよっか……」

そうやって言葉にしてみると、やけに恥ずかしいことのように思えてきた。

雪村さんは、嬉しそうにそして何かを期待してるように俺の顔を見つめている。

雪村さんは先に俺のことを名前で呼んでいたので、次は俺の番ということなのだろう。

「え、えっと……」

俺は、雪村さんの視線から逃げるように、目線を下げて考えた。

だけど、考えるまでまもなく、俺の中で雪村さんの新しい呼び方は決まっていた。

それを言えばいいだけなのだが、かなり照れくさい。

だけど、俺は覚悟を決めて、彼の顔を見つめ返した。

「あ、朱音……」

「う、うん。優君……」

二人して名前で呼び合い、二人して顔を赤くして、同時に顔をそらした。

やっぱり、名前で呼ぶのは恥ずかしいものだった。

けれど、もう一度俺はゆきむ……朱音の顔見ると、彼も俺の顔を見てきた。

「えっと…改めてよろしく……」

俺は改めてもう一度あいさつをした。

なんとなく、もう一度言うべきだと思ったから。

すると、朱音も俺の顔を見てきた。

「こちらこそ…よろしくお願いします……」

そして、朱音も同じようにようあいさつをする。

それが終えると、しおかしかったのか、二人して小さく笑っていた。

「それじゃあ…もう帰るよ」

朱音が落ち著いてきたところで、俺はそう言った。

「う、うん。じゃあね……優君」

し殘念そうに聞こえたのは、俺の気のせいだろう。

「じゃあね……朱音」

俺たちは今日二回目の別れのあいさつをしてから、俺は朱音に背を向けて歩き出した。

今度は俺を呼び止める聲はしなかった。

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