同級生が新たな家族に!!》それぞれの思い 雪村朱音

優君が私に背を向けて、帰っていく。私はその背中を見続けている。

私は優君の姿が見えなくなるまで、その場に殘っていた。

優君の姿が見えなくなると、今いる場所がひどく寂しい場所に思えてきた。

「私も帰ろ……」

私は來た道を戻り、玄関を開けて家にった。

外からリビングに明かりがついてるのが見えたので、たぶんお母さんはそこにいると思う。

私は靴をいで、玄関の鍵を閉めてからリビングに向かった。

「ただいま、お母さん」

「おかえり、朱音。待ってたわよ」

予想通りお母さんはいた。

私を待ってたてことは、何か用事でもあるのかな?

「どうしたの?」

「朱音に、これからのことを話しておこうと思ってね」

そのことなら私も聞いておきたかった。

優君との會話で話題になったので、し気になっていたから。

「うん、聞きたい」

私はお母さんと向かい合うように椅子に座った。

「その前に、これ教えておくね」

「なに?」

そう言ってお母さんは、スマホを作して、しばらくすると、一つのグループ招待が屆いた。

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そのグループ名は、雨宮家、だった。

「お母さんこれは?」

「これはね、私たち家族のグループよ」

「家族の?」

「そう。家族の連絡事項とかは、ここで共有しようって話になってね」

「ふ~ん」

私たちがデートをしている間に、そんなことまで話し合っていたらしい。

てっきり、優君の言ていた、引っ越しについてだけかと思ってた。

たしかに、あんなに時間があったらたくさん話はできるよねぇ……

そんなことを考えながらも、私はスマホを作してそのグループにった。

優君はまだいないようで、優君のお父さんを友達登録して短いあいさつ文を送っておいた。

「それで、これからのことなんだけど……」

そして、これからのことについてお母さんは話した。

要約すると、明日婚姻屆けをだし、明後日には引っ越している、ということだ。

結構忙しくなりそうだなぁ……

「それでこれは、単に私の興味からなんだけど……」

「何?」

私は、お母さんが何を聞きたがってるのか予想はついていた。

「優君とのデートはどうっだたの?」

予想通りだったため、私は驚きも揺もしない。

「楽しかったよ」

本當に楽しかった。

あの楽しかった時間は今でも思い出せるし、何にも代えがたい。

それだけ、優君とのデートは私の中で特別なものになっていた。

「そう…よかったわね」

お母さんは、安心したような表だった。

私、何か心配させるようなことしちゃったのかな?

「私何かした?」

「どういう意味?」

「お母さん、今すごく安心した顔したから…私、何か心配させるようなことしちゃったのかなって思って……」

「そんな顔してた?」

「うん。してたよ?」

「そう……」

お母さんはし考えてから話し始めた。

「それはね……朱音のそんな幸せそうな顔、學園にってから初めて見たからだよ」

「えっ……」

「もうそんな顔、見れないんじゃないかって思ってたけど、今日その顔が見れたから安心しちゃってね……」

「……」

たしかに、今日は學園に來てから一番楽しかったと言ってもいいくらいだ。だから、幸せそうな顔を無意識のうちにしてしまったのだろうか?

っ~~~。恥ずかしい。

けれども、やっぱり私はお母さんを心配させたようで、申し訳なさがこみ上げてきた。

「心配かけてごめんなさい」

「朱音が謝ることじゃないのよ。私が力になってあげられなかったのが悪いんだから」

「だけど……」

「でも、そのことはもう心配してないわ」

「えっ……」

「だってこれからは、朱音を楽しませてくれた人と一緒に住むことになるんだからね」

楽しませてくれた人って……優君のことかな?

「ふふふ」

「どうしたの?いきなり笑いだして?」

「朱音、また幸せそうな顔してる」

「えっ……」

「優君のことを考えてたのかな?」

「っ~~~」

「あらあら、當たっちゃったみたい」

お母さんは嬉しそうに笑っている。

私は、恥ずかしさで顔が真っ赤だろう。

「優君と出會えてよかったわね」

「……うん」

もっとも、私と優君が出會えたのは、お母さんたちが再婚するおかげだと思う。

だって、それがなければ優君と出會うことも、話すことも、たぶんなかったと思うから。

そんな未來もあったんだと思うと、悲しくなってきた。

「優君ともっと仲良くなりたい?」

「うん。もちろん」

それはもちろんだった。

だって、一緒にいて楽しいって思える人だから。

「優君のこと好き?」

「えっ……」

でもこの質問にはすぐに答えられなかった。

だって、そんなこと言われるなんて、全く考えてなかったから。

「……どうしてそんなこと聞くの?」

「だって、朱音が幸せそうな顔する時って優君が関わってるんだもん。だから、そうなのかなって思ったのよ」

「……」

私が優君のことを……

考えたこともなかった。

「まだ、わかんないよ……」

今はこう答えるしかない。

でも、否定することもできなかった。というより、その可能を否定したくなかった。

「出會って一日だから、まだわからないよね」

「……うん」

お母さんのその言葉は、私の思いとはし違ったけど、そういえばそうだったと思い、うなずいておいた。

そして私は、一つの事実を思い出した。

そういえば、私と優君ってこれから家族になるんだよね…だったらはいけないんじゃないのかな?

「でもさ…家族でってのはダメじゃないの?」

「うん?そのことなら大丈夫よ。知ってる?法律的にも問題ないんだって」

「そう……」

私が優君を好きになっても問題はないのかぁ……

でも、今すぐにはわからないなぁ……

「だからもし好きになっても、家族だからって、あきらめちゃだめよ?」

「……わかったよ」

いったん自分の部屋でこのことについてゆっくりと考えたいなぁ……

そうすれば、何か答えが見えてきそうだし。

「ねえ、お母さん。話はもう終わり?」

「うん、今ので話は終わりだよ」

「そう。じゃあ私は、お風呂にって來るから」

「うん。わかったわ。あっ、そうそう、そこにあるダンボールを使って小とか分けておいてね」

「うん」

私は椅子から立ち上がり、部屋の隅に置いてあったダンボールを持っていったん部屋にパジャマを取りに行った。

それから、お風呂にり、歯を磨いたりと寢る準備を済ませた。

そして、今は自分の部屋のベットの中にいる。

そこで、いろいろと考えることにした。特に優君に対する私の気持ちについて。

私、優君のことが好きなのかなぁ……

優君は、私のことを普通のの子として接っすると言ってくれた、學園で唯一の男の子だ。

そう言われて、私は嬉しかった。ようやく、私を普通に見てくれる人に會えたと思えたから。

そう言ってくれたから、今日のデートを楽しむことができたし、素の自分を出すことができた。

本當に、あんなに楽しかったのは生まれて初めてかもしれない。

そして、今日の別れ際に優君が私のことを苗字で呼んだ時に、とても悲しく思った。このまま、他人行儀な関係は嫌だって思った。

あの時、家族になることを理由に名前を呼び合うことにしたけど、本當は、ただ私のことを名前で呼んでほしかったし、優君のことを名前で呼びたかっただけだ。

やっぱり私、優君のことが好きなんだなぁ……

他の人が聞いたら、ただのひとめぼれだって言うかもしれない。

だけど優君が今日してくれたことは、私にとって本當に嬉しいことで、とても特別なことだった。

だから、自分が納得していればそれでいいと思う。

それにひとめぼれだとしても、お母さんの言った通り、私と優君は出會ってまだ一日で、まだまだ時間はある。

だから、あせらずゆっくりと優君を好きな気持ちを大きくしていけばいいと思う。

う~~~。考えてるだけで恥ずかしくなってきたよ……

だけど、私と優君はこれから家族になる。

お母さんは、家族でも大丈夫って言ってたけど、私が好きになることで、優君に迷はかけたくない。

だからって、優君のことが好き、という気持ちに噓はつけない。

そもそも、優君はわたしのことをどのように思ってるのだろうか。

好き?嫌い?普通?

う~ん…これは考えてもわからないなぁ……

ただ、今わかることは……

私、優君のことが本當に好きなんだなぁ……

そう思うとすっきりした気持ちになって、そのまま寢てしまった。

翌朝、スマホに優君からの友達登録とメッセージが來ているのに気付いた。確認すると、昨日の日付だ。

私は、急いで返信したが、まだ寢ているのか、優君から返事は來なかった。

私は、なんであのまま寢ちゃったんだろう、と後悔した。

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