同級生が新たな家族に!!》三人の時間

式テニスの地區大會が終わった。

朱音は當然と言うべきか、地區大會は優勝ではないけどベスト四にり見事都大會への出場を決めている。その時の優勝はこれも當然と言うべきか奈緒だった。男子はもちろんのことで悠馬だ。

そのため朱音は大會に向けた過日程からは解き放たれ、し穏やかな生活を送れている。朝練などは無くなり、放課後の部活だけ。休日も一日中ではなく午前か午後のどちらかといった合だ。ただこれも次の大會が近くなればまた忙しい日々になるからつかの間の休息と言ったところだろう。

そしてそんなこととは無縁の俺は逆に忙しくなってきている。

帰宅部の俺がどうしてと思うかもしれないが、別にどこかの部活ったという訳では無い。いや、ある意味そうかもしれないけどそうじゃない。これは極個人的なことだ。

最近の俺の一週間はこうだ。

學校のある平日は軽く走り筋トレをしてたりし基礎的な能力向上をしている。毎週土日の午後からは式テニスの地區予選をしていた総合運公園まで出かけ、そこでは俺のテニスのスキルアップが行われている。

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それは五月にあった大會で俺が悠馬に頼んだこと。

朱音とテニスを育祭でやるだけのために行う大げさすぎる行いで最大級の自己保

だけど俺にとってはこれが心の支えになる。

「じゃあ今日も帰ってくるのは遅いから」

「おう」

「頑張ってね」

父さんたちは俺が何をしているのかを知っている。基本的に家にいる唯さんには隠せないし、父さんだって土日は家にいることがあるので無理だ。

ただ朱音には言わないでくれと頼んでいる。そして二人は実際に俺がしていることを朱音に言わないでいてくれている。それは父さんが俺のことをよく知っているからだろう。そして、唯さんも俺のことを理解してくれているみたいだ。二人には謝は盡きない。

もちろん朱音には悪いことをしていると思っているけど、それでも俺は隠し通すつもりだ。バレたら……それはその時に考えればいいか。

「行ってきます」

育祭まであと一月を切った六月。そこまではとりあえず突っ走るだけだ。

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※※※

目的地に著いた。

この総合運公園のテニスコートは申請を出せば誰でも使える。そのため、休日はカップルだったり家族だったりで賑わっており、その格好もどこかラフなものだ。

ただ、その中にガチな服裝をした明らかにテニスプレイヤーである人が立っていた。いつもは一人だったけど今日は珍しいことに二人のようだ。やっぱりあの二人で付き合ってるんじゃないか?

そんな俺公認のカップルもどきのところへ向かっていく。

「よ、いつも早いな」

「な、こっから桜燐って近いからな。それに優とのテニスは楽しい」

「いや、練習始めてからまだ全然経ってないからしょぼいままなんだけど」

「それでも楽しいものは楽しいんだよ。まぁ、確かにしごくのが楽しいというのもあるけどな。あの死にそうな表して球を追いかけさせるのなんて楽しいし」

「……おい、本音をらすんな。毆りたくなるだろ」

あの時の悠馬の楽しそうな顔と言ったらもう……ダメと分かっててもラケットのエッジで顔面を毆りたくなる。

「で、今日はどうして奈緒がいるんだ?」

「なに? 私が來ちゃいけなかった? それなら帰りますけど」

「いや、そういう訳じゃないから。だから帰り支度すんなって。俺だってお前が來てくれたことは普通に嬉しいからな」

「そう、それならここにいるわ」

理由は聞けずじまいだが、多分気まぐれか都合がよかったんだろう。

「お? の告白か? それなら俺はどこかに……」

「違うから!! ただ、なんかこうやって昔の奴らと一緒って言うのがなんとなく郷愁をじるというかなんというか……」

「……優ってそんなロマンチストだっけ?」

「違うわ!」

「ま、それは冗談として、確かに懐かしいな。この三人が集まるのは」

「そうね……」

奈緒がそう言うと、皆が沈黙する。

そして俺は周りの音が聞こえなくなりここには俺と悠馬と奈緒だけの世界が出來たような気がした。実際今俺の中には過去のこいつらとの思い出が駆け巡っている。楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと……その中學時代の記憶のほとんどに悠馬と奈緒が存在する。それほどまでに俺たちは親友だった。

それが終わったのは卒業して進學してからだ。それはよくある別れで俺と悠馬たちは別々の高校に、そして俺たちをつなぎ合わせたテニスから俺は退いた。

そうなれば接點は無いと言ってもいい。確かにスマホという手もあるけれど、何故かお互い連絡は取りあっていなかった。理由は特にないだろう。ただしなかったというだけだ。

俺たちが思い思い考えていると、一筋の風が吹いた。

それによって俺は現実の戻され、周りの喧騒が聞こえてくる。

それは悠馬と奈緒も同じだったのか、しはっとしたような表をしている。

そして俺たち三人は目が合いそれぞれ笑いあった。

そんな郷愁も過ぎ去ればやることは決まっている。

「ほら、もっとは知らんと追いつかないぞ~」

「このっ!」

「優、今度はこっちよ」

「はいはいっと!」

それは練習以外にないだろう。

今俺は左右のコーナーに打たれた球を向こうのコーナーに打ち返すという練習をしている。

これがまたキツイ。二人ともテニスのレベルがもう高校生離れしてるせいか、打ってくる球はロブなのに早いはそれでコーナーのちゃんとに角に打ってくるわで滅茶苦茶走るから一気に足が疲れる。

これも最初はすぐにばてて全然続かなかったのだけど、今では平日のランニングが聞いているのかある程度は対応できている。

だけど限界はすぐそこまで來ている。はっきり言ってもう休みたい。

「もう――終わり!」

なので俺はこれを最後にしようと、悠馬に向かって今打てる最大級のストロークを打った。

だけどそれが來ると、相変わらずすましたような顔で打ちかえしてきた。

俺はそれを打ち返す。

そしてまた打ち返される。

そんなラリーがしばらく続く。

もちろん悠馬は全力で打ち返してこない。俺が打ち返せるギリギリの範囲で打ってくる。その為ラリーは続く。確かに俺から止めてそれで終了なんだけどそれだとなんだか悠馬に無條件降伏しているようで癪に障るから嫌だ。

そのためこれは俺が失敗するまで続く。一度休みたいけど、それでもお互いに楽しいから続いてしまう。

この景を始めてみた奈緒は懐かしそうな呆れたような顔をしている。

これは俺が中學時代に悠馬に教えてもらった時の練習景だ。

コーナーへ打つ返すのが本當の練習。その後の打ち合いはただのおまけ。

吹っ掛けるのはいつも俺。時々悠馬。そしてお互いにこの勝負は無視をしない。それを今みたいな表で見つめているのはやっぱり奈緒だ。

結局こう言ったところで郷愁が漂ってしまう。俺たちはそこまで深く結びついていた。

そうして五分くらいで俺はミスをして後ろに球をこぼした。それもいつものことだけど、昔はもうし続いていたんだけどなぁ~。今はこれが限界だ。

「はい。俺の勝ち」

そう言いながら悠馬は優越に浸ってる。

そんな現役の人とは思えないほどの大人げない対応もいつものことだ。

「相変わらずえげつない球打つよな。あんなの返せるわけねぇよ」

「當たり前だろ? 今のは完全に決めにいったからな。あれを引退した優に返されたら現役の俺には立場が無い」

「悠馬……お前なんちゅう球打ってるんだよ」

そんなガチの球を俺が返せる訳が無い。それを返せるのは悠馬と同じ域に達した奴かそれ以上の奴、つまり大學生かプロくらいだ。

「だけどその前に打ってたのはなんだかんだここ三週間くらいで打ちかえせるようになってるじゃん」

「ま、まぁ……が慣れてきたからかな?」

「あれは俺が中學三年の時くらいの威力のヤツだ」

「……えっ!?」

「だよな、奈緒。見てたから分かるだろ?」

「だよなって言われてもそれは悠馬、あんたの覚の問題でしょ? ……でも確かにそんな気がするわ。だけどそれを今の優がそれを打ち返せるなんて……」

奈緒の疑問は聞こえなかったのか悠馬は先を進める。

「ほらな? つまりお前は今、過去の自分に追いついたってことだ。後はそれを追い越すだけだな。よかったじゃないか」

「はっ? ……えっ?」

奈緒が不思議に思っているようだが一番不思議に思っているのはラリーをしていた俺だ。

最近の授業ではまともに返せていなかったんだけど……ということは悠馬が噓をついてるってことか?

「よし、次はサーブの――」

「ちょっと待ってよ」

俺は慌てて悠馬を靜止させた。

これは聞いておかないとあとあと困ってくるかもしれない。思い込みだけで突き進むのは危険だしその被害をけるのは俺とペアの朱音だ。そして何より俺は悠馬のその発言を信じることが出來ていない。

「悠馬、噓はついてないよな?」

「噓? そんなことついてないけど、と言うか何のこと?」

「俺が過去の自分い追いついたってこと。俺授業でもテニスは練習でってるけど、そこでは過去の自分に追いついたとは思えないじなんだけど」

「それは……アレじゃないか? お前さ、自分じゃ気付いてないかもしれないけど人前だと力セーブする癖ついてるんだよ。きっとそのせいだって」

「そうなのか……? ならどうして今は打ててるんだ?」

そんな癖のことなんて全然知らなかったけど、だとしたらなおさら今打てる理由が分からない。

「そんなの俺たちのことを信頼してるからじゃないのか? 俺と奈緒は裏切らないみたいな」

「信頼……」

「あ、今悠馬が恥ずかしいこと言った。録音するからもう一回お願い」

「……おい、奈緒、何スマホを用意してるんだよ。今ものすごく後悔してるんだから……ってそれ録畫じゃねぇか! 俺の顔を撮ろうとするな!」

そんな俺からしたら単なる癡話げんかが聞こえてくるけど、その容は右から左に流れていく。

今の話から考えると俺は朱音を信頼してないってことになるのか? …………いや、そんなことはない。今信頼できる人の名前を聞かれたら朱音の名前が出てくる。

だとしたら『信頼』が直接の原因じゃない。

となると…………『期待』の差か。

悠馬たちは俺に期待をしていないというかする必要が無いからストッパーが働かない。朱音の場合は逆に働くというか、學校でやると期待される可能があるからか必然的にそうなるのだろう。ただ、朱音と二人でやってもそうなる可能はある。これは育祭が終わるまで続くだろう。

つまり『狀況』の差でもあるということか。……難しい格になっちまったな。

とは言っても今それを嘆いたところでどうしようもない。それにここでやっているのは贅沢なメンツを使った単なる自己保。しかも俺から頼んでのことだし今はそれを果たすべきだ。

「悪い、変なこと聞いたわ」

「お、おう、そうか」

「ああ、だからもう一回恥ずかしそうな顔してさっきの言葉言ってよ。寫真撮るから」

「お前もか!! 絶対撮らせないというかやらないから。ほらサーブやるぞ」

「はいはい」

俺がそう言うとようやくサーブ練習にった。

それが終わると俺たちは軽くゲームをして二時間そこそこでテニスを切り上げた。

悠馬たちは午前中部活だったし、そんなに長くやるべきではないだろう。あいつらも楽勝だろうが都大會があるんだしこんな所でケガなどされてもこっちも責任の取りようがない。

そして俺たちは解散した。あいつらは二人そろって學園の寮へ俺は家族の待っている自分の家へと。

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