《あえて鈍のふりをしてみた》第5話

〈春視點〉

兄さんは実は私がお腹空いてたことに気づいてたんですね。

カラオケを選んだのは単に私と久しぶりに歌いたかったからだけでなく、さりげなく私にご飯を食べさせるためなんでしょうね。

普段鈍な兄さんですが、こういう所は敏で、しかも気配りもしてくれます。そんな所に私は惚れたのでしょうね。

「兄さん、ありがとうございました。」

「ん?あぁ、奢ったこと?別に気にしなくていいよ。春休みにバイトしてたし、これからもバイト続けるし。」

兄さん、私の今の謝の本當の意味、気づいているんでしょうね。その上で敢えてそのことにれないでいようとしてくれています。

あくまで今回のカラオケは晝食のためではなく、楽しむためとでも言うかのように。

「でも春前よりすごい歌うまくなったね。普通に俺と同じくらいの點數でびっくりしたよ。」

「まあ、友達とけっこう行っていたので。」

だいたい私たちの點數は90前後くらいです。

テレビに出てるカラオケのあの歌上手い人並みには歌えませんが、それでもけっこう取れてる方だと思います。いえ、兄さんはその人たちと張り合えるかもしれませんね。

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「そっか。じゃあ今度また2人で一緒に行こっか。今回あまり歌えなかったし今度はフリータイムで。」

「そうですね。今回は2時間でしたしね。もっと歌いたいですし。」

また2人きりで行けるんですか!すごい楽しみです!

あぁ、でももう私は験生だからそんなに遊んでいる暇はないんですよね…

たわいもない會話をしながら帰っている途中、し兄さんとの思い出が浮かんできました。

こうして話せるのも兄さんが私のことを嫌がらずに何よりも優先してくれるからなんですよね。

初めて會ったあの日から私は恥ずかしくて逃げたり、逃げてばかりでいざ會うと怖くなって隠れたりしてたのにそんなのも関係なく兄さんにずっと良くしてもらって、私が兄さんにすごい理不盡なことを言って怒ったことはあっても、本當に私が悪いことをした時以外、兄さんから私に怒ることはまずありませんでした。

何も不自由なくこんなに楽しく毎日暮らしていけたのも兄さんが私にずっと気を遣ってくれたからなんですよね。

「ん?春?どうしたの?」

「…いえ、なんでもありません。」

「そう?ならいいけど。」

「……本當に、ありがとうございます。」ボソッ

本當に謝です。この人が私の兄さんでよかったです。最初はあの初めて會った時のことが恥ずかしくて逃げてましたが、ずっと兄さんは私を見てくれてましたし、助けてくれました。

常日頃から思っていましたが、やはり水野裕太以外の人が私の兄さんになるのは考えられません。

そして、ここまでよくしてもらえなかったと斷言します。

「ねぇ春、大丈夫?さっきから俺の顔めっちゃ見てるけど。」

「別に、兄さんの顔なんか見てませんよ!あれです!奧のビルとかお店とかを見ていたんです!」

「お、おう。それならいいけど…」

兄さんが鈍なのもあれですが、私も素直になりたいです。もっと素直になって「兄さん大好き、ありがとう。」と言えたらどれだけ楽なんでしょうか。

今はそんなこと無理でも、し前に進んでみましょう。

「…手。」

「え?」

「手…握っても…いいですか?」

言えました!やりましたよ!

「え、俺と?いいの?」

むぅ、なんでんなこと察してくれるのにこういうことは察してくれないんでしょうか…

「いいんです!ほら!さっさと繋いでください!」

「え…う、うん。」ギュ

「ふわぁ…」

幸せです…えへへ。

「春ー、変な聲出てるけど。」

「ふぇ…え?聲出てました?」

「うん。ばっちり。」

最悪です。絶対変な目で見られます。

私は顔を真っ赤にしながら、でも手はしっかりと握ったまま家に帰りました。

その後、母さんに私の顔が真っ赤なのと手を握ってることを見られてニヤニヤされながらいじられたのは別の話です。

なんで兄さんは母さんからそんなにいじられないんですか!?差別ですか!?

〈裕太視點〉

まず始めに…今回のカラオケ、春が可すぎてもう死にそうでした。

「兄さん、ありがとうございました。」

「ん?あぁ、奢ったこと?別に気にしなくていいよ。春休みにバイトしてたし、これからもバイト続けるし。」

いや、もうむしろ俺にお金を払わせて下さいってじ。天國だわここ。

あと多分春気づいているんだよな。さすがに々頼みすぎたか?まあいいや。

「でも春前よりすごい歌うまくなったね。普通に俺と同じくらいの點數でびっくりしたよ。」

「まあ、友達とけっこう行っていたので。」

あぁ、その友達が羨ましい。春の歌聲を聞けるなんて…なんか俺やばいやつみたい。あぁ、今更か。

「そっか。じゃあ今度また2人で一緒に行こっか。今回あまり歌えなかったし今度はフリータイムで。」

「そうですね。今回は2時間でしたしね。もっと歌いたいですし。」

よっしゃあ!!俺勝ち組!

閑話休題それはおいといて

なんか春の様子がおかしいんだけど。なんかあったのかな?

「ん?春?どうしたの?」

「…いえ、なんでもありません。」

「そう?ならいいけど。」

「……本當に、ありがとうございます。」ボソッ

ん?なんか言っていたみたいだけど聞こえなかった。どうしたんだろうかな。

…なーんて難聴系主人公じゃないので。俺は今の聞こえちゃったので!ほんと可すぎるしょ!!

はぁ、落ち著こう。calm down …OK。よし。

うん、春の視線すごい気になる。もうすごいうっとりとした目で俺のこと見てるもん。自意識過剰?んなわけ。

「ねぇ春、大丈夫?さっきから俺の顔めっちゃ見てるけど。」

「別に、兄さんの顔なんか見てませんよ!あれです!奧のビルとかお店とかを見ていたんです!」

「お、おう。それならいいけど…」

いや、その言い訳はちょっと無理があると思う。まあ俺得だからいいけど。

「…手。」

「え?」

「手…握っても…いいですか?」

え!なにそのラッキーイベント!ふぅ、即答いいねするとこだった。鈍のフリ鈍のフリ。

「え、俺と?いいの?」

「いいんです!ほら!さっさと繋いでください!」

いいよね!?いっちゃっていいよね!?

「え…う、うん。」ギュ

「ふわぁ…」

なにその聲可すぎるんだけど。

「春ー、変な聲出てるけど。」

「ふぇ…え?聲出てました?」

「うん。ばっちり。」

春はめっちゃ顔を赤くしてそのままなにも喋らずに帰った。

でも、こういう風に帰るのもいいな。

春に無理させてるかな?素直になってほしいっていうのはあるけど、あまり無理させて暴走するのもあれだし、しは俺からもってみようかな?

この後母さんと一緒に春をめちゃくちゃからかった。

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