《王子様は悪徳令嬢を溺する!》1

アルテア通りを1人で歩いていたとき、私は男の人にぶつかってしまった。

「すまないお嬢さん」

顔をあげれば、この國にはいないエキゾチックな男子が立っていた。気分が良かった私は、その男子に聲をかけた。

「気にしないで、あなた見ない顔ね」

男子は頬を掻きながら、照れ臭そうに言った。

「よく言われる、留學生なんだ」

「そうなのね。勉強なしなのは良いことよ」

「俺は、マリク」

彼は手を出して握手を求める。私は珍しく男の握手に応じた。

「私はアリエノール」

「よければさ、ここの広場で明日も待ち合わせないかい?

文化を教えてしいんだ」 

明日はお茶會のお約束がなかった私は、そのいに乗った。

「いいわよ。明日おやつの時間にね」

その日はマリクと知り合えた幸運の日だったけれど、人生最大の厄日でもあった。

生ぬるい。生ぬるいわ。

婚約者である王太子殿下とその取り巻きの令嬢達を、眺めながら思う。

あいつらが無いわね。

私にとっては嫌がらせですら無い、もはや出會い頭にイタズラしただけじゃ無い。挨拶よ。友好的関係を気づくためのスキンシップの一つじゃ無い。

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人をおちょくるのが好きな私は、令嬢に嫌われるらしい。 

今ではすっかり悪役で、花嫁修行にやって來ている令嬢方はみんなで寄ってたかって私をいじめる。

呪いだの、蟲りの食事だの、社界でワインをかけるなど日常作。

呪いの人形を、中庭に突き刺し返したり、蟲りの食事を出した本人にぶっかけたり、ワインをかけた人間にはその場にあった食事を全てぶちまけていたのがダメだったのかしら?

全員表からかかって來いよと、勇ましいのは私のみ。

そんな令嬢を毎日夜呼び寄せ、パーティーに勤しむ我が未來の夫には辟易とする。

両手に花とはまさにこのこと、良かったわね。楽しいでしょう?

従順な達を侍らせるのはさ。

「國王陛下、これを見てどう思われますか」

ドアの影から見つめるのは、私と彼の父親。

「息子が、オンナ遊びをしているなあ」

「でしょう、私あんな奴とはもう婚約を解消したいのよ。お義父さま」

國王陛下はうぅーんと唸る。

「けどなぁ。これ政略結婚だし」

「別に婚約を解消したからうちとの、関係が悪くなるってわけでもないですよ。まあ私の親には王太子に無禮を果たしたとでも」

「それでも、君みたいながいたら心強いんだよ」

あんな馬鹿息子の手綱を握ってくれるような、がさと笑う國王陛下を私は毆りたい。

「國王陛下、私は例えこれから良家からの縁談が來なくなったとしても、あんな馬鹿王子とは結婚したくないんです!」

國王陛下の前で馬鹿息子とべるのは、私くらいなものだろう。それだけ國王とは仲がいいのだ。

「お前は言い出したら聞かないからなあ。仕方ないなぁ婚約を解消しよう。」

「王様大好き!」

國王陛下はコソコソと耳元で囁く。

「これからどうするんだ」

なぜコソコソするのかは、分からないが國王陛下に合わせて私もコソコソと話しかけた。

「とりあえず、家でのんびりしてから留學でもしようかと。なんなら初の公爵にでも」

「勇ましいな。兄を差し置いて政治に介するか」

「まあ、生きようと思えばどうにでもなるので」

王様は自慢のヒゲをでて、ふふんと笑う。

「お前が政治參を希した時は大いに、この國王様がお手伝いをしてやろう」

「お義父さま!大好き!」

國王陛下の応援をけ、私はドアを盛大に開けた。令嬢達は私を笑う、「何故來たの?あのいじめられっ子」とね。けれど私の後ろの國王陛下に気づいたのか令嬢達は王太子の後ろに下がる。

「よかったわね!只今私と貴方の婚約が解消されたわ。」

「は!?何だよそれ!」

高笑いする私と、青ざめる王子。何故青ざめるのかしら、だって大嫌いな私と婚約が解消出來るのよ。

「まあ、とにかく私は1週間で城を出るからよろしくね。」

じゃあねとご令嬢に手を振る。國王陛下とこの場に殘るのはとても酷な事をしただろうか。だって夜な夜なオンナ遊びに勤しんで、婚約を解消されただなんてなくとも褒められるべきことではない。まあせいぜいお父様に怒られなよ馬鹿な王子様。

私は妙にスッキリした気分で寢た。

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