《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》學校案

「今日からこの學校に通いことになりました、虹咲 八恵と申します。皆様、仲良くしてくださいね」

お辭儀をして、顔を上げると同時にニッコリと笑顔を浮かべると教室は一気に騒がしくなった。

「うぉぉ、すげぇ人だ!」

「お人形さんみた〜い」

自己紹介が終わるとクラスのみんな(主に男)が喜びの聲をあげるが、二人だけは唖然としていた。

「まさか俺らのクラスに転校してくるとは……」

理沙と一緒のクラスのが続くのといい、どうやら本當に何かの呪いにかかっているのかもしれない。

「え〜と、じゃあ虹咲さんは空いてる席に座って」

空いてる席、つまりは俺の後ろだ。

昨日、始業式が終わった後にクジ引きで席が決められ窓側の後ろから二番目というなかぬか高件の場所を獲得し前には友和、右隣には理沙というこれまた奇跡的な形になったのだが後ろは何故か空いていた。

「興様、學校でもよろしくですわ」

「あれ? 何々、興と虹咲さんってお知り合いなの?」

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それを聞いた友和が態とらしく挙手して質問すると、八恵はこれまた笑顔でこう答えた。

「はい。私、興様の許嫁です♡」

直後、男子生徒からの殺気がこもった視線が興に集まったのは言うまでもない。

***

晝休み。

先生から知り合いならちょうどいい、ということで八恵にこの學校の案を任された。

教室にいても男子からの怒りと嫉妬が充満しているのでとても居づらいので快く引きけてこうしている訳だが……。

「どうしてお前らまでついてくるんだよ」

ついて來いだなんて一言も言ってないのに、あたかもそれも當たり前のように理沙と友和は一緒に案の手伝いをすると言って聞かない。

「イイじゃん、イイじゃん。俺はお前の親友として虹咲ちゃんとお近づきになりたいんだからさ〜。それとも、俺らがいたらはまずかった?」

「いや、そうじゃないけど……」

別に友和は問題ない。

八恵が許嫁だと知ってもそれを面白がるだけで、他の男子生徒のように嫉妬をしたりはしない。

問題は理沙の方だ。

このクラスに八恵が転校してきてから口數が減ってきて何処か不気味なのだ。

「なら問題ねえよな! よ〜し、となれば案だ案。俺らは一年もこの學校にお世話になってる、いわゆるプロだからな。ドーンと任せてくれてちょ!」

なら俺も理沙もプロってことになるが……とツッコミ気力も今はない。

「あら、頼もしいですわ友和さん」

「そう? なら早速行くぞ興。飯食う時間がなくなっちまう」

「お、おお」

俺たちは早足で廊下を歩き、校の探索を始めた。

***

「ここが特別館。理科室とか室とかがあるけど部とかの奴らが良く來るだけで俺らみたいな帰宅部とは縁遠い場所だな」

実際、この特別館にったのなんて片手で數えられる程度だ。

「未開の地という訳ですわね」

「いや、部の奴らが使ってるんだから未開ではないだろ」

それに部の奴らに失禮だ、と言いたいが実は昔俺もそんなことを思ったことがあるのでそれ以上何も言わなかった。

「そんでもってここが中央館。コンピューター室とか視聴覚室とかがあるのがここ。本館とかよりちょっと小さいけど結構來ることが多い所なんだ」

「コンピューター……私、機械音癡なのですけど大丈夫かしら?」

「基本的なことしかしないから大丈夫だろ」

それに使う機會なんて滅多にない。いくら機械音癡でも平気なはずだ。

「で、ここが本館……という教室がある所で全ての科の奴らが集まってる所。ぶっちゃけ、ここが一番使うとこだから自分の教室が何処か覚えてれば問題ないんだけどね」

「なるほど、では今までの案のことは全て無駄だったのですね」

なんだよその終わり方。まるで最後の問題が解けた人は百萬點です、みないな乗りじゃないか。

「よし、じゃあそろそろ飯にしよう。今日は中庭で食べようぜ」

「中庭……、行ってみたいです!」

目を輝かせて八恵は興しているがそこまで大層な所ではないので過剰な期待はやめてほしいが興にとって他に選択肢はない。

「俺はその方が助かる」

あの教室では箸が進まなさそうだし、八恵を連れて戻ったら更に誤解は深まってしまうだろうから。

「じゃあ、俺が皆の弁當持ってくるから興は場所取りしといてくれ」

「おう。一応鞄ごと持って來てくれ」

クラスの皆を疑っている訳ではないが念には念をだ。

「學校案ありがとうございました。とっても面白かったです」

「禮なら友和に言ってくれよ。俺なんて何もしてなかったし」

そこから友和が帰ってくるまで會話はなかったが何故か八恵はニコニコとしており、理沙は神妙な顔つきで興を見つめ続けていた。

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