《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》ダークマター

「ふぁ〜。あ、織原先輩おはようございます」

あれから結局、理沙も同居を許してくれて生徒會長である織原魅雨は三人目の同居人となった。

そして、今日は土曜日。

學校は休みでいつもより遅めにリビングに行くとそこにはエプロン姿の魅雨がいた。

「敬語はよしてくれ。一緒に住むのに他人行儀みたいで嫌いだな」

「す、すいません」

「それも、敬語。これからは私相手には敬語止にするからそのつもりで。それより、お腹減ってないか?」

「起きたばっかで減ってま……る」

途中で変えたせいでおかしな日本語となってしまったが敬語止には違反していないはずだ。

しかし先輩には敬語を使っていたのが慣れてしまった今、急に変えるのは難しい。

「なら、私が作った目玉焼きを食べるか? ついさっき出來たばかりなんだ」

「あ〜、だからエプロン姿なのか」

織原先輩は咄嗟に家出して來たと言っていたから自分のではないだろうがまず八恵ということはない。

何故か織原先輩を嫌いしているし、彼が持っているのは一つだけ。

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消去方で理沙に借りただろう。

がベースで赤のチェックがったそれは俺の記憶が正しければ我が家のではない。

「や、やはり私にはこういうは似合わないだろうか?」

生徒たちには堅と言われる彼だが今は私服姿の上に著ていて、普通の人と何ら変わらない。

を知っている分、そこに違和は一切ない。

「いいや、そんなことない。とっても似合ってると思いますよ織原先輩」

「だから敬語止だと言っただろ。でも……そうか似合っているか。ほ、ほら! たくさん作ったからたくさん食べてくれ」

「え? これ何」

目の前に置かれたのは皿に乗っけられた黒い塊。鼻を刺激する匂いがこの距離でも伝わってくるし、見た目は真っ黒だ。とてもじゃないが人の胃袋にれてもいいものには見えない。

「目玉焼きだ。さっき言っただろ」

卵をどう調理したらこうなるんだ? 逆にこれはそういった才能なのかもしれない。

「え、え〜と他の二人は?」

「ああ、用事があるとかで出かけている。當分帰ってこないんじゃないか?」

逃げたなあいつら。確信犯だ。奴ら、料理ができるのだからこれがダークマターなのは匂いだけで分かるだろう。それにたくさん作ったということは全員に振舞おうとしていた証拠。それが殘っているということは奴らはこれを一口も食べていないということだ。

危険を察知して何らかの理由をつけてこの家から出したのだろうが俺の場合はそうもいきそうもない。

「さ、遠慮はするな」

腹が減ったと言ってしまったのもあるが、何より作ってくれたを無下にするというのは気が引ける。それに男として逃げる訳にはいかない。

「い、いただきます」

意を決してその黒い塊をフォークで刺すが予想以上にくて結構力をれなければならず、しだけ分けてから食べようとしたが全てくっ付てきてしまった。

仕方ないので息を止めながらそれを丸ごと口に放り込む。

「ど、どう?」

辛い、痛い、苦い、痛い。

舌が麻痺してが風邪をひいた時みたいにイガイガする。

「う、うん……獨特な味がするな〜」

自分で聲を出してみて驚いたが、かなり震えていてほんのちょっとだけ涙目になっていた。

「ふ〜む。しかし、私的にはし味付けが足りなかった気がするが……」

「いやいやいや、これ以上味付けはいらない! というか俺は薄い方が好きだからなぁ〜」

あれ以上何か足された味覚が無くなってしまう可能がある。

「そうか、次はそうしよう。では殘りを食べてしまってくれ。虹咲と三雲にあげようと思っていたが戻って來そうにない…が、捨てるのは勿ないだろう?」

そして二つのダークマターが目の前に置かれて、今俺の顔が真っ青になったと自覚できた。

「お、おぅ……」

三十分間の格闘の末、暗黒質を腹の中へ封印することに功すると真っ正面には魅雨が険しい顔で見つめてきていた。

「天坂くん、し大事な話があるんだがいいか?」

「別にいい……けど」

“です”と言いそうになったのを飲み込んで頷く。

「君には話さなくてはいけないと思ってね。私の父さんの話を」

「離婚したっていうあの? でも、俺に何か関係が?」

「関係大有りだよ。私お父さんの名前は天坂 晉也。つまり君の親父さんだ」

「え? じゃあ、織原先輩って……」

「そうだ。母親が違うが私は君の姉なんだ」

驚きの事実にさっき食べた目玉焼きの味など吹き飛んで何処かへ消えてしまっていた。

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