《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》説得
思い出のあの公園、そこを待ち合わせ場所として電話をかけてきた人を呼び出していた。
「大きくなったわね。貴方は覚えてないだろうけど私は覚えているわ。父に似てきたんじゃない?」
「それはどーも。え〜と、織原 千彌ちやさんですね?」
織原 魅雨の母であり、親父の前妻のこの人はやはり魅雨に似ていて、大人の魅力を足してメガネをかけたら一瞬見分けがつかないだろう。
ヒールとかがよく似合う人の母だが、魅雨と初めて會った時のような迫力がある。
「ええ、それにしても他人行儀ね。それより魅雨は何処かしら? 私はあの子を連れ帰る為に來たのよ」
「だからその件は電話で話しましたよね? 本人が帰りたがってないって」
「帰りたくなくともどちらでも構わないわ。あの子はあの人の息子である貴方と一緒にいさせたくないの」
「どうして……どうしてそこまで親父を憎んでいるだ? 離婚したならもう吹っ切れてるだろ」
親父は吹っ切れてるというより、既に終わったていてもう何もしないと決めているようだが。
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「子供には話しても分からないわよ。特にあの人に良く似た貴方にはね」
「だから魅雨姉にも何も話さないのか? 自分の娘なのに父親のことを話さないなんておかしいだろ」
俺はちゃんと死んだ母親のことは聞いた。
大が自慢話にしか思えなかったが、それでもどれだけ良い人だったかは伝わってきた。
「自分の娘だからこそよ。あんな害蟲の話をしたらあの子が気になって會いに行くかもしれないじゃなあ。あの子、意外と好奇心があるから……。でも結局は意味がなかったようね」
逆に頑なに話さないことから興味を抱き、興と接してしまったのだから本末転倒だ。
「それに、今はあの人がいなくて高校生だけで住んでいるらしいじゃない? そんな如何わしい場所に娘を任せるわけにはいきません」
そこをつかれると痛い。
紛れもない事実だし、どんなに言い訳をしようとも大人は認めてはくれない。
しかし、これだけのことをどうやって知ったのだろう?
そう疑問に思ってしまったが今はそれほど大した問題ではない。
「でもあそこ以外に魅雨姉の居場所はないんだ! そんなに連れ戻したいならちゃんと向き合え! 親父と何があったのか、どうして離婚したかを全部話せ!」
でないと納得なんて出來るはずがない。
だからこそ向き合ってしい。
「分からない……分からないわ。どうして貴方はあの子を姉と認められているの。私はまだ貴方を……あのを認められてないのに」
「あの? もしかして俺の母さんのことか?」
「ええ、そうよ。あの人が私を捨てる原因となったあの。最初から病気だと分かっていたのに何故結婚なんてしたのかしらね。貴方が苦しむことなんて目に見えていたのに」
「え? 母さんって結婚する前から病気だったのか?」
「ええ、結婚する前というか産まれたから病弱だったらしいわよ。どうして結婚なんてしようと思ってのかしら? 子供がそんな質になるかもしれないのに」
結果的には俺も妹も親父に似たのか大した病気になったことはない。
「そんなの親父が母さんのことを好きになったからだろ。好きは相手がどんな病気だろうが好きになったら関係ないんだよ。どんな問題抱えても一緒に背負う。それが親父なりのなんだよ」
親父が昔酔っ払った時に言っていた。
何故母さんと結婚をしたのかを。
だからこそ俺はハッキリと言い切れる。
「ふうん、好きになったら今の妻は捨てて結婚してもいいわけ? 隨分と勝手なのね」
「親父は離婚する前に何か言ってなかったのか?」
「すまないお前の為だと、言っていたけどそれが何? ただの言い訳じゃないそんなの」
「違う! 親父は貴方にも幸せになってしかったんだ」
一度はし合った仲だ。
大切に思っているに決まっている。
「……、やっぱり貴方はあの人に似ているわね。昔のことを思い出したわ。でも、あの人とは違うのね」
「あ、當たり前だろ」
あんな親父と一緒にされたら困る。
「そんは貴方だからこそ言っておくけど、結婚するなら魅雨みたいな子にしなさい。口うるさいかもしれないけど話す回數がないよりよ喧嘩をする方がいいから」
と、それだけ言うと出口へと足を向けた。
「ちょっ⁉︎ か、帰るのかよ?」
「ええ、魅雨に帰る意志がないのなら仕方ないじゃない。私も無理やり連れ帰るほど鬼じゃないわ。それに、貴方ならあの子を任せられるわ」
よくわからないが、どうやら説得に功したようで魅雨の母親はそそくさとこの公園から去って行った。
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