《悪魔の証明 R2》第143話 085 アカギ・エフ・セイレイ(2)

「テロリストは、通路で俺たちに目撃されたから、部屋にろうとはせずこの車両から逃げ出したんだと思う。理由はよくわからないが、おかげで戦闘にならずに済んだ。そういった意味では、幸運だったともいえるがな」

アルフレッドは、エリシナの見解を裏付けるかのような臺詞を述べた。

「……でも、そこから推察すると、この部屋の慘狀はそのテロリストにより引き起こされたとしか考えられない」

頷きながら、エリシナがそう斷定した。

「ふたりとも顔は確認できなかったのか?」

クレアスはそう尋ねると、し首を捻った。

おそらくテロリストの正を探る上で、もっとも重要な顔の特徴がエリシナとアルフレッドの証言から聞こえてこないことを不思議に思ったのだろう。

「ええ、クレアス。殘念だけれど、そういうことになるわ。あまりにも突然のことだったから、よくわからなかった」

エリシナが、當時の狀況を鑑みたのであろう言葉で答える。

ふたりの言い分だとテロリストの顔くらいは見れたような気がするが、急に現れその後立ち去っていったのであればやむを得ない。

「ああ、それは仕方がないだろう。だが――それより君の推理だ。これが君の言う通り室殺人だとしたら、々とおかしくないか?」

すぐにクレアスは、別の疑問を口にした。

「クレアスさん、僕もそう思います。エリシナさんとアルフレッドさんは、テロリストが出て行くのを見たんですよね。となると、 ふたりがテロリストに殺された後、ドアの鍵を閉めたことになる」

エリシナが答える前に、僕は自分の見解を述べた。

の述べた室という言葉には、クレアスと同様に疑問があった。

「エリシナ、まさかふたりのどちらかが幽霊だとでも言うつもりじゃないだろうな」

僕に同調するかのように冗談ともつかない言葉をまじえながら、クレアスが彼に釈明を求める。

「誰もテロリストがふたりを殺したとは言っていないわ。テロリストと協力してふたりのどちらかがもう一方を殺したのよ。つまり、フリッツさんとシャノンさんのいずれかがテロリストの協力者ということね」

「……けど、二人とも死んでいるじゃないか。なぜ、せっかく希通り殺したいやつを殺したのに、その協力した者も死ななければならないんだ」

「大事なのは、なぜ死ななければならなかったかではないわ。人の死の前では、機を考えることなど概ね無意味。クレアス。もっとも大事であるのは、その人間がどうやって死んだかということよ」

首を振りながら、エリシナは言った。

「なるほど、ハウダニットとかいうやつか」

次の瞬間、アルフレッドが合いの手のようなものをれる。

「ええ、アルフレッドさん。そんなところね。まずは協力者がいたという証拠なのだけれど、サイレンサー38式が室狀態でこの部屋にあったことで、それはり立つと思う。列車にサイレンサー38式は三つしかないはずだから。ふたつはクレアスと……」

「エリシナが持っている。だったら、殘りのあれはセネタルのということか?」

「ええ、おそらく。テロリストがどこかで拾ってきたのよ」

「テロリストが拾ってきた?」

會話に割ってるつもりはなかったが、それを聞いて思わず聲をあげてしまった。

エリシナはそれを気に留める素振りもなく再び口を開く。

「……どちらかがテロリストの協力者だった。その協力者は、侵者――テロリストからサイレンサー38式をけ取った。そう考えれば、すべての辻褄は合うわ」

と、推論を述べた。

「どちらかって、どっちが?」

クレアスが、薄い聲で確認する。

「無論これだけだと、どちらが協力者かはわからない。けれど、今目の前に広がっている事実を考えればすぐにわかるわ。あれを見てみて」

エリシナはそう告げると、フリッツたちのいるベッドの方角へと顔を移した。

「フリッツさんは心臓を撃たれている。そして、フリッツさんのの上には、こめかみを撃ち抜かれたシャノンさん。この事実から推察すると、シャノンさんがフリッツさんを殺してから、自らを撃ち殺したと思うべきだわ」

と、続けて説明する。

「……でも、それだと自殺ってことには変わりないような気がします」

の推理を頭の中で反芻しながら、僕は疑問の聲をあげた。

「確かにここまでだと、アカギ君の言った通りシャノンさんがフリッツさんを巻き込んで単に自殺したかのように思えるわね。けれど、これにセネタルが目撃したと私たちが目撃した侵者。その関係をかけ合わせれば、途端に真相が浮かびあがってくるわ」

「真相が……?」

何のことだか判別がつかず、思わず戸いの聲をらしてしまった。

「そうね、アカギ君。その真相よ。そして、私が思う真相のの一つ目はこう。セネタルが目撃したテロリストのはシャノンさんということ」

「シャノンさんが?」

僕とクレアスは、ふたり揃ってそう聲をあげた。

「そうよ。けれど、フリッツさんが何も知らないような素振りをしていたことから考えると、シャノンさんはスカイブリッジライナーに乗り込んでからテロリストにそそのかされたのだと思う。彼はたまたま居合わせたテロリストに強制されてテロに加擔したのではないかしら」

そんな僕たちを目に、エリシナは憶測まじりの推察を述べた。

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