《先輩はわがまま》2

數分後、ようやく落ち著きを取り戻した先輩と向かい合っていた。

部屋の中には気まずい空気が流れ、先輩は未だに涙目。

俺は急に好きだなんて言われたのだから、先輩になんと言って良いか、わからなくなっていた。

「えっと……その……気持ちは嬉しいんですけど……なんでそうなったんですか? そんなそぶりなんて、一度も……」

俺が言い掛けると、先輩はぴくりと肩をかし、俺の方を見る。

「そんなそぶりって……気がつくとこいっぱい合ったでしょ! 毎日家に押しかけてたし……してるって毎日言ってたし……」

「いや、嫌がらせかと思って……」

「嫌がらせで、好きでも無い男の家に毎日來ないわよ! なんで気づいてくれなかったの!」

「いや気がつきませんよ! 毎日毎日、彼氏しいだのアンタはモテそうも無いだの言われてれば気がつきませんって!」

この人は事あるごとに、イケメンの彼氏がしいだの、誰かいい男はいないかなど、俺に聞いてくる。

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その度に、一応男を紹介しようとするのだが、毎回先輩は「いまいち」だの「もっと他にいないの?」など、文句を言ってくる。

そんな先輩の本命が自分だなんて、思うわけも無い。

時刻は夜の十時、明日は晝からバイトがある以外は何も無いが、いい加減風呂にって寢る準備をしたい。

「あたしがこうして、毎日來てあげてるのに……君はいろんなの子と仲良くなり始めるし……」

「そりゃあ、俺だった男ですし……彼しいって思いますもん……」

「私が近くに居るのに……」

「いや、先輩は正直告っても無駄だと思ってましたし……遊んでるだけなんだろうな~って思ってました……」

「な……なんでよ! こうやって毎日遊んでたのに! しは意識しなかったの!」

「いや、ただの遊び相手にされてるんだと……」

「………」

先輩は無言で俯いてしまった。

まずいことを言ってしまっただろうか?

しかし、急に好きだと言われても正直困ってしまう。

今まで、先輩に抱いてきたは、學校で會うと面倒くさい、飲みの席で一緒だと面倒くさい、部屋に來ると更に面倒くさい。

本當に面倒くさい印象しかない……。

「……次郎君なら……本當の私を好きになってくれると思ったから……」

「えっと……それはなんでですか?」

「私がどれでけ我が儘を言っても、次郎君は私を遠ざけようとしなかったから……」

すいません先輩……実は前から遠ざけようとしてました。

だって、先輩と居ると面倒な事が多いんだもん!

仲良くなるための橋渡しに使われたり、仲が良いと思われて、嫌がらせされたり!

あいつらはしらないんだ!

先輩がどれだけ我が儘で、どんだけ自分勝手で、どんだけ面倒くさいか!

「……でも、もう疲れちゃったんでしょ……そりゃあそうだよね……ごめんね、いろいろ」

「あ、いや……自分も言い過ぎたって言うか……先輩がここまで俺を信頼してくれてると思わなくて……」

お、この流れは「今までありがとう、さようなら」のパターンか?

しかし、こんなことで疎遠になってしまうのは申し訳ない。

ただの迷行為でしか無かったが、先輩は俺にアプローチしていたつもりだった訳で……。

なんだか気がつかなかった事が申し訳なくなってくる。

まぁ、気がつく方が難しいと思うんだが……。

「……と言うわけで、付き合いましょうか」

「なんでそうなる……」

「私の気持ちはわかったわよね?」

「はい、二つの意味で痛いほど、でもなんでこの話しの流れでそうなるんですか!!」

「私の事は嫌い? 次郎君……」

「やめろ! 急に貓を被るな! そして、しづつ寄ってくるな!」

「もう隠す意味も無いし……やっちゃいましょうか?」

「何もしませんよ! 元気になったんなら帰って下さい!」

「もう夜中の十時を過ぎてるのよ? こんな時間に出歩いたら、襲われちゃうわ」

「アンタがそれを言うか! 今まさに俺を襲おうとしているアンタが!」

「大丈夫よ! 私も初めてだから、それにアレもあるから、子供は出來ないわ」

「俺はまだ先輩と付き合うなんて言ってません! 言ったとしても、その日に合はおかしい!!」

「大學生なんてそんなもんよ?」

「やめろ! それは一部だ!」

俺は迫ってくる先輩から逃げながら、先輩に説得を心見る。

しかし、一度行ったら聞かないのがこの人だ。

俺はついに先輩に捕まり、腕にしがみつかれてしまう。

「はい、捕まえた!」

「あ! は、離してくださいよ! 悪ふざけにしても、これはいきすぎてます!」

「次郎君は……私の事……嫌い?」

急に涙目でそんな事をきいてくる先輩。

好きか嫌いかで言ったら、別に嫌いではない、確かに々面倒な事を押しつけて來たりするが、基本的にはいい人だし、ルックスも良い。

「いや……嫌いではないですが……」

「じゃあ、好きなんじゃない。なら付き合お! はい、服いで~」

ぐか! そこだけ聞くと、先輩はただのビッチじゃないですか!!」

「安心しなさい、次郎君にしかこんなこと言わないから……」

「可く言ってもダメです! 本気で怒りますよ!」

俺がそう強く言うと、先輩は急に俺の腕を強く抱きしめて言う。

「怒っても良いから……嫌いには……ならないで……」

「え……あ、あの……先輩?」

先ほどまでの態度から一変し、先輩は不安そうな表で俺を見つめ、腕から離れまいと強く腕を握ってくる。

そんな先輩を見て、俺は深くにも可いと思ってしまった。

正直考えると、別にこの人と一緒にいて面倒な事はあっても、嫌な事はなかった。

一緒にゲームするのも楽しかったし、新作が発売した日は二人で買いに行って、徹夜でやり込んだ思い出もある。

アレは楽しかった。

そんな思い出なんかを思いしていると「あれ? 俺って先輩が居なくなったら、寂しいって思うんじゃね?」なんて事を考え始めてしまう。

先輩との関係を絶つという事は、この生活が無くなると言うこと。

先輩の為に料理を作ることも、飲み會で酔った先輩を送っていくことも、一緒にゲームをすることも、一緒にこうやって毎日どうでも良い話しをして過ごすのも無くなってしまう。

そう考えると、なんだか寂しい気がした。

「……先輩」

「なに?」

「このままの関係ってのはダメなんですか?」

「いや、友達だと何も出來ないじゃない……」

「う……そ、そういう事をが言うのはどうかと……はぁ……俺なんかの何処が良いですか……全く……」

「私をエロい目で見ないとことか、一緒にゲームしてくれることとか、々あるかな? 全部話そうとすると、一時間掛かるけど、話す?」

「いえ、良いです………貴方には負けましたよ……」

「え……じゃあ……」

「付き合います。貴方が俺に飽きるまで……」

そう言った瞬間、先輩は俺を押し倒し、再び俺のを奪った。

これからどうなるかなんて正直わからない。

でも、なんとなくだが、この我が儘な先輩との日常が無くなってしまったら、俺はきっと後悔する気がした。

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