《先輩はわがまま》5

「先輩」

「何?」

大學もバイトも休みの晝下がり、俺はアパートの自分の部屋で、ベッドに寢転びながらスマホを見る先輩に向かって言う。

「いつになったら帰るんですか?」

先輩が、俺の部屋に住みついてから約一週間が経過していた。

先輩はキャリーバック一杯に洋服や化粧道などをれて、俺の部屋にやってきた。

今ではすっかり我が家のようにくつろぎ、俺はお気にりのベッドを取られ、ロフトで布団を敷いて寢る日々を続けていた。

「そんなに帰ってしいの?」

「はい、そろそろ俺はベッドがしくなってきたので」

「だから、毎晩言ってるじゃない。一緒に寢ようって」

「そうすると、先輩が俺を的に食べようとしてくるので、絶対嫌です」

「むー、付き合って一週間だよ? そろそろ良いんじゃ無い?」

「嫌です! そう言うのはもっと順序を守ってですね……」

「あ、SR出た」

「人の話を聞いて下さい……」

俺の話を片手間で聞きながら、スマホのアプリゲームをする先輩。

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この一週間、俺は本當に大変だった。

大學のレポートに、先輩の食事の支度。

洗濯をしている時に出てくる、先輩の下著。

寢ている時も、いつ先輩が布団に潛り混んでくるかわからないので、警戒しながら眠っていた。

しかも、この人はあの日を境に事あるごとに「人」と言う言葉を強調し、々なスキンシップを図ろうとする。

風呂にって來た時は、本當にどうしようか悩んだ。

まぁ、なんとか追い出せたけど……。

挙げ句に大家さんからは、先輩と一緒に住んでいることを知られ、上の階のファミリー向けの部屋を進められる始末だ。

「はぁ……」

「どうしたの? 溜息なんて吐いて」

「うわ! 急に隣に座らないでください!」

「そんなに、私と一緒なのがドキドキするの~?」

先輩は小悪魔のような笑みを浮かべながら、俺にそう言ってくる。

あぁ、そうだよ、アンタと一緒に住んでるなんて大學の連中なんかにバレたら、俺はドキドキどころしすぎて、心臓が止まるわ!

やはりここは、健全なお付き合いをする為にも、この人には々言っておいた方が良いのかもしれない。

「先輩、し話しを聞いて下さい」

「何よ~?」

「正面に座って下さい」

「はいはい、座ったわよ。で、どうしたの?」

「単刀直に言います。もうし俺と距離を持って付き合ってもらえませんか」

「? 十分良い距離じゃない?」

「いえ、近すぎます。もっと適度な距離でですね……」

「十分適度だと思うけど?」

「付き合って、その日のうちに半同棲を始めるカップルはいません」

「でも、まだキスしかしてないじゃん」

「キスも普通はもっと段階を踏んでからの行為だと思うんですが……」

「別に今のままで良いじゃない?」

そうも行かない、このままこんな生活を続けていれば………あれ? 何か問題あるか?

お互いに既に二十歳を超えている訳だし。

こんな事をしている友人カップルもなからず居る。

世間的には何も問題無いのでは?

ならなんで俺は、こんなにこの人と距離を置こうとしていたんだ?

「えっと……じゃあ、大學で俺と付き合ってることだけ隠して貰っていいですか? 逆恨みとかされそうなんで」

「えぇ~友達にも? 別に恨まれないよ」

「先輩は知らないでしょうけど……俺って既に恨まれてるんですよ……」

食堂で食事をしていた時に、通りすがりに手紙をテーブルに置かれた事があった。

なんだろうなと思って、その中を見て俺は一瞬にして固まった。

手紙には「調子のるなよ?」と書かれており、手紙を置いていった人は、テーブル一つ開けて俺の正面に座り、ジッと俺を見ながらうどん食ってたっけ……。

「もう、次郎君は心配癥だなぁ~」

「あぁもう! だからくっつかないで下さいよ!」

「寒いんだも~ん、えへへ暖かいなぁ……」

先輩は俺の膝の上に座ると、うっとりした表でそんな事を言う。

こういう表の時だけは可いのだが、わがままなんだよなぁ……。

「はぁ……もう良いです。貴方に何を言っても無駄みたいですし……」

「そうだね~。今日はバイト無いんでしょ? だったらご飯食べに行こうよ~」

「まぁ、良いですけど……先輩お金あるんですか?」

「………彼氏なら奢ってくれるよね?」

「………そういうとこですよ…」

結局晩飯は俺が奢らせられた。

お禮にで払う。

などと馬鹿な事を言ってきた先輩を俺は華麗に無視して、ロフトに登り睡眠を取ろうとしていた。

そんな時だった。

「ねぇ……次郎君」

「なんですか? 一緒には寢ませんよ」

ロフトの階段から、先輩はヒョコッと顔を出してきた。

何やら心配そうな顔で俺を見てくる。

「でも、大丈夫? 寒くない? 流石に、いくら暖房が効いてても、その布団薄いし、布も無いし……」

「そうは言っても、先輩をこの布団で寢かせる訳にはいきませんし……」

俺の部屋のお客様用の布団は夏用だ。

なんで夏用しか無いかと言うと、単純に間違って購してしまったからだ。

布団を買ったのは、先輩が家に通い出す前の話で、そもそもあまり家に人を泊める事も無いだろうと思い、安かったからこの夏用の布団を買ったのだが、今はそのせいでし不便だったりする。

「風邪でも引いたら大変よ? 何もしないから、一緒に寢ようよ」

「いや……でも」

何もしないと言われても、俺が何か先輩にしてしまいそうで、落ち著いて眠れる訳が無い。 しかし、十二月が近づくに連れ、寒くなっているのも事実。

正直、毎晩先輩を警戒して、既に毎晩寢不足みたいな生活なのだから、ここは先輩の言うとおりにした方が、は暖かいので良いかもしれない。

「……本當に何もしません?」

「……ぎゅうくらいは許して」

まぁ、それくらいなら、最近はいつもやられて慣れてるし、大丈夫であろう。

「わかりました、なら一緒に寢ます。その代わり変な事は無しでお願いします、明日は朝からバイトなので」

「うん、わかってるわかってる!」

俺はそう言って、久しぶりに自分のベッドに寢転がる。

一人暮らしを始める時に、何を思ったかし大きいベッドを親に買って貰った為。

二人で寢ても、あまり狹くはじなかった。

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