《先輩はわがまま》15

「う……気持ち悪い……」

「飲み過ぎです」

喧嘩をした日の翌日、先輩は二日酔いになり、ベッドで眠っていた。

顔を真っ青にし、合悪そうに眠る先輩からは、ミスコンの優勝者の風格を一切じない。 こんな姿を學校の奴らが見たら、どう思うだろう?

そんな事を考えながら、俺は先輩の世話をしていた。

「う~……あんまり見ないでよ……」

「今更何を恥ずかしがってるんですか、二日酔いの先輩の介抱なんて、やり慣れました」

「化粧してないもん……」

「だから、今更そんな事言われても……」

「う……気持ち悪い……」

「はぁ……良いから寢て下さい」

俺はそう言って先輩の側を離れ、水分補給用に買ってきたスポーツドリンクを持ってきて、先輩の枕元に置く。

「次郎君……そう言えば今日はバイトは?」

「あぁ、休みを貰いました。先輩二日酔いの時は、ダメ人間になるんで」

「むぅ……嬉しいけど……後半が腹立つ」

「良いから寢てて下さい、午前中寢てれば、午後にはきっと良くなりますよ」

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俺はそう言って先輩に布団を掛ける。

前からそうだ、この人が二日酔いや風邪でダウンしたとき、俺は先輩から助けを求められる。

それはきっと、先輩の本を知っている數ない人間の一人だったからだろう。

弱いところを見せても良いと思っている人間だからこそ、俺に助けを求めてきたのだろう。 最初は頼られた事が嬉しかった。

だが、次第に俺は思った。

この人は、いつも自分を綺麗にそして完璧に見せすぎている。

だから、頼ろうと思っても、頼れる人があまりいないのだ。

それを知ったとき、俺は思った。

この人が頼れる人間の一人くらいにはなっておこうと……。

「次郎君……」

「なんですか?」

「気持ち悪い~」

「はいはい、寢れば治りますから」

俺はそう言って先輩の前髪をでる。

見られたくないと言っていたが、この人はすっぴんでも綺麗なままだ。

そんな綺麗な顔をこんな間近で見れる男が俺しか居ないと思うと、なんだか嬉しくなる。

「先輩……」

「なにぃ……」

「昨日はすいませんでした」

「………今言う?」

「はい、先輩の二日酔いの責任は俺にもなからずありますから」

「……許さない」

「どうしたら、許してくれます?」

「……してくれたら」

「良いですよ」

「え?!」

先輩は驚きのあまり、ベッドから上を一気に起こした。

「先輩! また吐き気が來ますよ!」

「う……た、たしかに……っていうか……今なんて?」

「だから、良いですって言ったんです。ほら、橫になってないと」

「そ、それは……あの……その……そう言う事よね?」

「まぁ……その……俺も男ですし……我慢するのもソロソロ限界なんで……」

それも正直な理由だが、本當は違う。

昨日、伊島先輩に言われた事を俺は昨晩考えていた。

その結果がこの回答だった。

「あ! でも、二日酔い治ってからですよ?」

「……う、うん……」

先輩は顔を真っ赤にしながら、俺の反対方向を向き、布団を被って眠ってしまった。

「……ストレート過ぎたかな?」

俺はそんな事を考えながら、先輩が昨日ぎ散らかした服を回収し洗濯を始める。

「ふっかーつ!!」

「はいはい」

あの後、先輩は晝過ぎまで眠り回復した。

今ではいつもの先輩に戻り、シャワーを浴びてさっぱりした様子だ。

「あ、あのさ……」

「はい?」

「ありがと……ね」

「いつもの事なんで、気にしないですよ。冷蔵庫に抹茶プリンもあるので、食べて下さい」

「……うん……あのさ!」

「はい?」

「さ、さっき言った事って……本當?」

先輩は頬を赤く染めながら、そっぽを向いて俺に尋ねてくる。

さっきの事とは先輩が寢る前に俺が言った、あの言葉の事であろう。

「……ほ、本當ですけど……な、なにか?」

「べ、べべべつに……まぁ、毎日私のを見てたら! そう思うのは自然だけど!」

「顔真っ赤にして言われても……」

「う、うるさいわね! 貞!!」

「う……本當の事だけに、心に來る……」

俺は先輩の神攻撃をモロにけ、若干心を痛める。

先輩はその後、出かけてくると言い、どこかに行ってしまった。

俺はその間、ゲームをして時間を潰す。

一時間が過ぎ、ゲームにも開き始めた頃、家のインターホンが鳴った。

「ん? お客さんか」

先輩は家の合い鍵を持っているので、インターホンを鳴らすハズが無い。

「はーい」

俺は返事をしながら、玄関に向かい家のドアを開ける。

「どちら様で……って、実ちゃん!?」

「先輩! 風邪引いたって本當ですか!?」

ドアを開けた先に待っていたのは、私服姿の実ちゃんだった。

そういえば、今日バイトを休むのに、風邪引いたって事にしたんだった……。

「あぁ、あの……ちょっと用事があって、風邪って噓をついて休んだんだ。だから大丈夫だよ」

「あ、そうなんですか…良かったぁ……じゃあ、お邪魔します」

「え!? なんでそうなるの!? 今すっごい自然な流れだったけど!」

「折角だから、買ってきた食べませんか? お見舞いのつもりで々買ってきたんです」

「そ、それは嬉しいけど……って、あ! 実ちゃんまって!」

「お邪魔しまーす」

実ちゃんはそう言って、部屋の中に半ば強引にって來た。

俺はそんな実ちゃんを追って、部屋の中に戻っていくが、時既に遅かった。

「………先輩……彼と同棲とかしてるんですか?」

「核心つくの早くない?!」

何の前れもなく、俺が隠していた核心をついてくる実ちゃん。

俺はなぜか背中に嫌な汗をかきながら、実ちゃんのニコニコした顔を見ていた。

ニコニコしているハズなのに、目は全く笑っていない。

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