《先輩はわがまま》17

「で、でも……先輩はそう言う人じゃないし……」

「誰が、あのメス……失禮、あのが浮気するって言いました?」

「そんな事より、今メスって言ったよね……」

いつも以上に口の悪い実ちゃんに、俺はし引いていた。

こんな狀態の実ちゃんと先輩を合わせても大丈夫だろうか?

「じゃ、じゃあ俺が浮気をするとでも? ざ、殘念ながら俺はそんな度無いし……相手も…」

「相手なら居るじゃ無いですか?」

「い、いや……居たとしても浮気なんて、先輩を裏切るような真似は……」

「ウフフ……大丈夫ですよ……バレなきゃ良いんです。バ・レ・な・きゃ」

「ひっ!」

実ちゃんは俺を壁際に追いやると、顔を俺の顔に近づけてきた。

もうし顔をかせば、実ちゃんの口にれてしまいそうという距離で、俺は実ちゃんから香ってくる良い匂いや、らかいなんかに、頭がぼーっとしてしまった。

そんな時、部屋の鍵を開ける音が聞こえてきた。

「ただいまぁー」

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先輩が帰って來たのだ。

俺は咄嗟に実ちゃんの元から離れ、先輩を迎えに玄関に向かう。

「せ、先輩!」

「ん、ただいま……誰か來てるの?」

「あ、いや、その……バイト先の後輩が……」

「え? それって……」

「ご無沙汰してます、先輩の彼さん」

そう言って俺の後ろから、実ちゃんは先輩の目の前に出て行く。

先輩はあからさまに嫌そうな顔で実ちゃんの顔を見る。

そんな先輩とは対象的に、実ちゃんは終始笑顔だった。

「次郎君、誰? この子供」

覚えが悪いんですね、この前お店でお會いしたのに」

「あぁ、ごめんなさい、彼しか目にって無かったから」

互いに怒りのこもった言葉をぶつけ合う二人。

俺はそんな二人の間に挾まれて、一人でアタフタとしていた。

玄関先で早くもバトルを繰り広げる二人を俺はとりあえず、部屋の中にれて座らせる。

「えっと……実ちゃん、本當に申し訳ないんだけど、この通り今は俺先輩と付き合ってるから……さっきも言ったけど、実ちゃんには早く新しいに生きてしいというか……」

「………わかりました。今は諦めます」

「ちょっと、今はってなによ?」

実ちゃんは「今は」の部分を強調して言う。

その言葉に、先輩は反応し、強い口調で実ちゃんに尋ねる。

「先輩がフリーになったら、また改めて彼にしてもらいます。多分、一年位だと思いますし」

笑顔でブラックな事をさらりと言う実ちゃん。

あれ? こんな子だったけ?

言われた先輩は、當然いい気はしない。

「負け犬の遠吠えとはよく言ったものね」

「本當の事を言っただけです」

「殘念だけど、私達結構仲良いのよ?」

よく言うよ、昨日くだらない事で喧嘩して出てった癖に……。

「へー、でも先輩はどう思ってるかわかりませんよ? 貴方みたいなおばさんより、私みたいな子高生の方が良いかも」

「殘念ね、次郎君は年上好きのド変態だから、貴方なんか眼中に無いわよ」

「先輩、平気で噓をつかないで下さい。そして俺はド変態ではありません」

「貴方こそ何を言ってるんですか? 先輩は年下好きのド変態です」

実ちゃん、そこ張り合わない、そして俺はド変態ではありません」

「「ごちゃごちゃうるさい!!」」

「えぇ……」

理不盡に怒られてしまい、俺はそれ以上言葉が出なくなる。

二人の気迫に負けたと言う事もあるだろう、二人は當事者である俺を放って話しを進め始める。

「今日のところは帰ります………先輩」

「は、はい」

「また、バイトで…」

実ちゃんは意味深な笑みを浮かべ、そう言って俺の部屋を後にした。

殘った俺と先輩の間には、気まずい空気が流れ始める。

「え、えっと……もう二日酔いは?」

「大丈夫よ……」

「そ、そうですか……あはは、それは…よかった」

「ねぇ、次郎君……」

「は、はい?」

俺は玄関の戸を閉め、部屋に戻ると先輩が不安そうに尋ねて來た。

「ず、ずっと……一緒に居てくれる?」

「え……」

「私……わがままだし、自分勝手だし……口ではあの子にあんな事言ったけど……正直不安で……」

「………」

先輩は暗い表で、不安そうに俺にそう言う。

先輩のこんな顔を見たのは、久しぶりだった。

いつもは強気な先輩が、ここまで弱々しくなるのは相當珍しい。

そんな先輩に俺は近づき、先輩の方を向いて答える。

「先輩、大丈夫ですよ。先輩が俺に飽きない限り、側に居ますから」

「次郎君……」

我ながら恥ずかしい事を言っているなと思っていた。

でも、俺のこの言葉に噓は無い。

今現在、先輩が本心を言える相手が俺で、その俺に好意を向けているのであれば、俺は先輩の好意に答える。

そして、先輩がもし、俺以外に誰かを好きになり、その人に本心も言えるようになったのであれば、俺は先輩からを引くつもりだ。

だが、そんな人間が現れないのであれば、俺はこの人が俺に飽きるまで、この人の隣にいるつもりだ。

「今度から……私も家事を手伝うから……」

「ありがとうございます。そう言えば何を買ってきたんですか?」

「コレ」

「……先輩……あの……」

先輩が俺に見せてきたのは、避妊だった。

しかもパッケージには「世界最薄!」と書かれていた。

「今夜!」

「えっと……それは……」

「今夜!!」

その一言だけだったが、先輩が今夜何を求めているのかがわかった。

実ちゃんの事もあってだろう、先輩は引きそうに無い。

顔を赤く染めながら、先輩は頬を膨らませて言う。

そんな先輩の表に、俺は負けた。

「……明日は晝から大學で授業なんで……その……ほどほどでお願いします」

「……うん」

その後、何やら気まずい空気の中、俺と先輩は食事を取り、テレビを見て夜が深まるのを待った。

いつもは食事の後で、必ず二人でゲームをするのだが、今夜はそれが無い。

そして、夜の九時を過ぎた辺りで先輩は、俺に言った。

「お風呂……先にって良い?」

「は、はい……どうぞ」

とうとう來た。

俺はそう思った。

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