《先輩はわがまま》21

「あの、聞いても良いですか?」

「何かしら?」

「なんでいきなり、結婚なんです?」

俺はそこがし気になり、先輩のお母さんに尋ねる。

いくら何でも、そう言う話しを持ってくるのは、母親だとしても早すぎると思う。

まして、先輩は21歳で、俺は一個下の20歳。

結婚を考えるには早すぎると言っても良い年齢だ。

「早く孫の顔が見たいからかしらね」

「あぁ……はい」

なんでだろう、何となくだが、この人が先輩のお母さんだと言うことに納得してしまっている自分が居る。

當人達の事を完全に無視して、自分勝手に事を進めようとするこのじ……。

この人は間違いなく先輩のお母さんだ……。

「まぁ、確かに私も急ぎすぎたかもしれないわ……急にお邪魔してごめんなさいね」

「いえ、いつかはちゃんと挨拶をと思ってましたから」

「なら、お正月に家にいらっしゃい、お父さんも會いたがっているから。それに、それならそこの馬鹿娘も家に帰ってくるし」

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「嫌よ! 正月は次郎君の家に行くから!」

「先輩、かってにそんな予定を組まないで下さい。それに、たまには実家に帰ったらどうです?」

「嫌よ! 次郎君は私を家族に紹介とかしたくないの!?」

「その言葉、そっくりそのまま先輩にお返しします」

「う……と、兎に角! 私は実家には帰りません!」

「じゃあ、せめて自分のマンションに帰って下さい……」

「いや!」

「はぁ……」

母親の前だと言うのに、この人はいつも通りだな……。

なんて事を思っていると、先輩のお母さんが立ち上がった。

「そろそろ失禮しますね、岬さん」

「あ、はい?」

「うちの馬鹿娘をよろしくお願いします」

「えっと……同棲に関しては何も言わないんですか?」

「えぇ、年齢的には珍しくもないでしょう。それに……早く孫が出來るかもしれません」

「在學中は作りません!」

本當にこの人は……。

先輩のお母さんはその後すぐに帰って行った。

突然の來訪者に驚いたが、とりあえず先輩のお母さんからの印象は悪くないようで良かった。

「先輩」

「なによ」

「年に一回くらいは実家に帰ったらどうですか? 流石に心配になって、お母さんも來たんじゃないですか?」

「………だって、帰ったらお見合いとか々うるさいんだもん」

「今は俺が居るんだから、大丈夫じゃないですか……一緒に正月帰りましょうよ」

「うぅ~……じゃあ條件!」

「條件?」

「その後二人っきりでどっか旅行に行く! それが條件」

「え、それは良いですけど……一何所に?」

「溫泉! 泊まりが良い!」

「はぁ……約束したら、正月帰るんですね?」

「うん、次郎君と一緒に」

「はぁ……わかりました」

俺は溜息を吐きながら、先輩の條件を承諾した。

年末と年始はかなり出費が激しくなりそうだとじながら、俺はこっそり財布と通帳を確認する。

先輩のお母さんがやってきた日から、數日が過ぎたある日のこと。

「先輩、大丈夫ですか?」

「うぅ~気持ち悪い……」

先輩がインフルエンザに掛かってしまった。

人の多い街中や大學に行けば、染してもおかしくは無い。

朝から気分が悪いと言うので、熱を計ってみたら案の定、熱があった。

しかも結構な高熱だったので、俺は先輩を連れて醫者に向かった。

その結果、インフルエンザであることが発覚し、現在は俺が看病をしている。

「先輩、大丈夫ですか?」

「うぅ~関節痛い……気持ち悪い~」

「ま、それだけ言えれば大丈夫ですね。プリンとかならたべれますか?」

「うん……」

俺は先輩を起こし、コンビニで買ってきたプリンを差し出す。

「食べれそうですか?」

「だるくて無理かも……」

「わかりました。じゃあ、はいあーんして下さい」

「あーん」

俺は先輩にプリンを食べさせ、薬を飲ませる。

買ってきたスポーツドリンクを先輩の枕元に置き、水分を良く取るように言う。

先輩は本當に合が悪いようで、いつもよりも元気が無い。

「他に何かしてしいこととかありますか?」

そう聞くと、先輩は首を橫に振り、小さな聲で言う。

「……次郎君にも……うつっちゃうから……どっか行ってて…」

先輩は先輩なりに、俺の事を心配しているようだ。

俺はそんな先輩に笑顔で言う。

「病人置いて行けませんよ」

俺はそう言って先輩の手を握る。

すると、先輩は真っ赤だった顔を更に真っ赤にして反対方向を向いてしまった。

「……ばか」

「もしうつったら、今度は先輩が俺を看病して下さい」

「………うん………ナース服でする」

「普通で結構です」

この分なら大丈夫だろうと思い、俺は先輩の手を握ったまま座ってスマホを弄り始める。

先輩が寢るまでこうしていよう。

そう思い、俺は先輩の顔を橫で見ながら手を握って先輩が眠るのを待った。

「ん……」

「お、寢たか……」

數分ほどで、先輩は眠った。

本當にいつ見ても綺麗な寢顔だ。

化粧をしていないからと、俺に顔を見られる事を拒んでいた先輩だったが、俺はすっぴんの先輩も綺麗で可いと思っている。

「ほんと……綺麗だよなぁ……」

俺が一人毎を呟きながら、先輩の髪をでていると、先輩が突然聲を出し始めた。

どうやら寢言のようだ。

「ん……次郎君……だいす……き……」

「………ず、ずりぃ~」

寢言でこんな事を言われたら誰だって嬉しい。

しかも先輩みたいな、いつも本気で言っているのかどうかわからない人が、寢言でそういうことを言うのは、本當にずるい。

すぎる。

俺は顔が熱くなるのをじながら、手で顔を隠す。

「……次郎君……」

「今度はなんですか?」

またしても寢言を言い始める先輩。

俺はそんな先輩を見ながら、笑みを浮かべる。

「………豚野郎って……言えば良いの?」

「一どんな夢を見てるんだ……」

先輩の夢の中で、俺は一何をしているのだろうか?

凄く夢の容が気になった。

「ん……次郎君のばか……この豚野郎!」

「………あんまり考え無いようにしよう」

俺はそう思い、先輩の元を離れて洗いを始める。

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