《先輩はわがまま》22

先輩のインフルエンザが治ってから數日後の事。

「うつった……」

「もう、だから言ったのに……」

先輩は俺にスポーツドリンクを差し出しながら、文句を言う。

「次郎君、インフルエンザを舐めすぎ」

「予防注してたのに……」

「馬鹿ねぇ……そんなの気休めよ……でも、約束だから…」

「……そうですね、お世話になります……」

「良いから寢てなさい……」

先輩は優しくそう言って、俺の額に氷袋を乗せる。

そして、先輩は俺の手を取り優しく握って、そのまま雑誌を読み始める。

先輩は約束通り、俺の看病をしてくれた。

いつもはわがままばかりの先輩が、俺の為に洗濯をし、俺のために買いに行ってくれた。 それだけで涙が出そうなほど嬉しいのだが……。

「きゃっ! なんで泡が溢れてくるのよ!!」

「………」

洗濯をしようとして、先輩は作と洗剤の量を間違え、洗濯機から泡が噴き出し。

「おかゆって……こんなに黒かった……かしら?」

「………」

Advertisement

おかゆを作れば、どうやったらそんなになるの? と問いたくなるようなが出來上がりと、正直に言ってしまうと、気持ちだけで十分ですとびたくなってしまう。

しかし、先輩が自分から頑張ろうとしているのだし、何よりここでそう言ってしまうのは、先輩に余計な仕事を増やさないでくれと言っているようなものだ。

なので、俺は何も言わず、眠ったふりをする。

あぁ……治ったらまとめて全部片付けるか……。

「きゃ! 発した!!」

何が!?

俺のインフルエンザも完治し、大學も冬休みを迎え、いよいよ明日はクリスマス。

……と言った今日の晝下がり、俺は先輩へのプレゼントをけ取りに、店に行き、今は帰り道だった。

「まさか、クリスマスに彼と過ごす日が來るなんてなぁ……」

俺は街の様子を見ながら、上機嫌で家に帰って行く。

問題はこのプレゼントを何所に隠しておくかだ。

前に隠していたエロ本は先輩にあっさり発見されてしまった。

しかも、それが子高生だった事が先輩を怒らせ、処分されてしまった。

「う~ん……見つかる訳にもいかないし……どうすっかな?」

帰る途中、俺は隠し場所の候補を考えながら、帰宅していた。

そんな帰り道の途中、俺は思いがけない人と遭遇した。

「あれ? あの人って……」

視線の先に居たのは、俺の行きつけの喫茶店のマスターだった。

何やらキョロキョロと挙不審な様子だった。

聲を掛けようかと考えたが、そこでの仲でも無いと考え、俺は気づかない振りをして通り過ぎようとする。

「あ、君は確か………」

聲を掛けられてしまった……。

まぁ、何かあったのかもしれないし、いつも味しいコーヒーをれてくれるお禮に、話しだけでも聞いてみよう。

「あ、えっと……喫茶店の…」

「こうしてちゃんと話しをするのは初めてだね」

「えぇ、どうかしたんですか? キョロキョロして」

「あぁ……実は……」

あ、ヤバイ……コレ絶対厄介な奴だ……。

だって、なんか建に、マスターを見つめる子高生が居るもん……。

確かあの子って、あの喫茶店で働いてる子……だよな?

なんであの子が、マスターの後を?

「信じられないかもしれないんだけど……私は今ストーカー被害にあっていてね……」

「えっと……もしかして子高生とかだったりします?」

「な、なんでわかるんだい!?」

だって、後ろに居るもん……。

目をぎらぎらさせて、電柱のからこっちを見てるもん……。

「そ、それで、キョロキョロしながら歩いていたと?」

「そ、そうなんだよ……彼、雇ってもう二年になるんだけど、つい二ヶ月くらい前に急に僕に求婚してきて……」

「告白じゃ無くて求婚ですか? それはまた……」

「しかも、婚姻屆けまで……」

「ホラーですね……」

そのストーカー、今もこっちを見ながら、息をはぁはぁさせてるんだが……。

正直この件に関しては、俺はあまり関わり合いになりたくない。

「最近だと、著替え中に更室の中にって來たり……」

「変態ですね……」

「盜撮されたり……」

「マスターも大変何ですね…」

俺も最近、子高生には困らされる事が多いからな……。

どうしてもマスターには同しちまうな……。

「そんな時だったよ、君が珍しく子高生と店に來たのは」

「あぁ……あの時ですか…」

あの時とは、俺が実ちゃんからの告白を斷った日だ。

妙にマスターがこちらをチラチラ見ていると思ったら、そういうことだったのか……。

「君があの子高生を説得しているのを見て、僕も彼に諦めるよう説得をしたんだけど……」

「ダメだった……と?」

「うん……それどこらか家まで上がり込まれてしまった……」

「相當ですね……」

その危ないストーカー子高生は、今もマスターを見て息を荒げているわけなのだが、マスターはそれに気がついていない。

今日はお店は定休日だったはず。

休みの日までマスターをつけ回しているのであれば、流石に笑い事ではすまない。

「今から帰るんだけど……今日は幸いにも彼に會ってないから、無事に一日を終えられそうだよ」

マスター、それは勘違いです!

見られてます、メチャクチャ見られてます!

しかもあの子は絶対にヤバイ子です!

すぐにバイトも解雇して下さい!!

「あ、あの……解雇とかって考えないんですか?」

「うーん……結構バイトの子もなくてね……あの子もかなり仕事出來るから、抜けられるとこまるんだよ……そう言う事もあって、最近悩んでて……」

「そ、そうなんですか……えっと、ちなみにご結婚とかは?」

「あぁ、店が忙しくて、そう言う暇がなくてね……もう30だって言うのにねぇ……あはは」

「そ、そうでうか……子高生に手を出すわけにもいきませんもんね……」

結婚とか言うワードを出したからだろうか、マスターの背後に居る子高生の目が濁っている気がする。

ヤバいなぁー……このままじゃ、そのうちマスター刺されるんじゃ……。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください