《先輩はわがまま》27
俺は先輩に呼び止められ、まだ何かあるのだろうかと思いながら、先輩の方を振り向く。
「今度はなんですか?」
「大した事じゃないのよ……また何かあったら、助けてね」
そう言って先輩はニコッと笑って來た。
言われた俺は、とりあえず返事をして帰ろうとする、
「あぁ…はい」
なんとも締まらない返事だと自分でも思ったが、俺は早く帰って休みたかった。
そんなけない返事をした後、俺はそのまま家に帰った。
そして俺は、このときの先輩の言葉の意味を今はまだ、何も知らなかった。
そんな事があった翌朝。
俺はいつもの通り大學に向かい、授業をけていた。
そんな時だった……。
「あ、岬君!」
「え……あぁ、間宮先輩」
廊下を歩いていたところを先輩が俺の方に駆け寄ってきた。
「昨日はありがと、これから授業?」
「いえ、今日はもう帰るところです」
「あ、それならちょっとお願いあるんだけど……良いかな?」
「お願いですか?」
先輩は両手を合わせて、上目遣いで俺に頼み事をしてきた。
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こんな先輩の頼み事を普通の男なら、嫌とは言わないだろう。
もちろん俺もそれは同じだ。
「俺に出來る事なら、良いっすよ」
「本當?! よかったぁ~じゃあちょっと來て!」
「え! 先輩ちょっと!」
俺は先輩に手を引かれ、どこかにつれて行かれる。
俺は先輩に連れられ、大學の中庭に連れて行かれた。
「あ、あの……先輩一なんですか?」
「ちょっとまってね…多分今來るから……」
「?」
不思議そうな顔で先輩を見ていると、何人かの男の人が中庭にやってきた。
全員、なりが整っており、中々にカッコイイ人ばかりだった。
俺はそんな人たちを見て、なんだか嫌な予がし始めた。
先輩はそんな俺の気持ちを察してか、がっちりと腕をホールドしてくる。
そんな先輩の行から、俺はますます嫌な予がしてきた。
「間宮さん! この前の返事聞かせてよ!」
「俺もだ! 君の事が好きなんだ!」
「どうか俺と付き合って!」
男達は一斉に先輩に告白してきた。
あぁ、やっぱりか……俺はそうじながら、どんな顔でこの場に居れば良いのか悩む。
気まずい狀況の中、先輩は笑顔で俺の腕にくっつき、とんでも無い事を言い出す。
「ごめんなさい、私にはこの人が居るから」
「え………」
「「「えぇぇぇぇ!!!」」」
俺の腕にしがみつきながら、意味深な事を言う先輩。
俺は開いた口が塞がらず、目の前の男達も驚きのあまり、大聲をだして絶していた。
「じゃあ、そう言うことで~」
「あ! 先輩!!」
先輩は意味深な事を言うと、直ぐにその場を後にして、どこかに行ってしまった。
殘された俺と、先輩に告白していた男達は、非常に気まずい狀況だった。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「お、お前みたいな奴が……間宮さんと……だと…」
「許せん!」
「フフフフフ……」
「あ、あの……皆さん?」
男達は行き場の無い不満をあろう事か俺の方にい向けて來た。
俺は、冷や汗をかきながら、先輩に囮として使われた事に気がつく。
そして……。
「まてぇぇ!」
「逃げるなぁ!」
「殺すぅぅぅ!!」
「ご、誤解ですってぇぇぇ!!」
俺はその後、この三人から一時間も大學を逃げ回っていた。
なんとか無事に帰れた俺は、部屋のベッドに倒れ込み、間宮先輩に対する見方を改めていた。
「な、何が優しく綺麗な先輩だ……人を囮に使いやがって……」
先輩への不満を口にしながら、俺は眠りに落ちていく。
そしてこのときの俺はまだ知らない。
この後も先輩に、多くの面倒毎を押しつけられる事になるなんて……。
「岬君、お願いがあるんだけど……」
ある時は、告白の返事の手紙を持って行かされ……。
「岬く~ん……コレもお願い」
またある時は、贈りの返卻に行かされ……。
「次はコレね~」
またまたある時は、彼氏役を頼まれと、災難な日々が続いた。
そんな事があってか、大學では俺が先輩の犬だと呼ばれるようになっていた。
先輩の言うことを忠実に聞く犬……なんて不名譽だと、俺はコレを知った時、激しいショックをけた。
そんな日々が続いたある日、俺は大學の空き教室を通り掛かっていた。
「ん? なんだ……この聲……」
空き教室から、何やら聲が聞こえてきた。
時刻はすっかり遅い時間で、大學に人はない。
俺は何だろうと、興味本位で空き教室の中を覗いた。
すると、中には先輩が居た。
何となく見つかってはいけないと思い、俺はドアの隙間から様子を見ていた。
「あぁ! もう! なんなのよ毎日毎日! 私とあんな男が釣り合う訳ないでしょっての!!」
先輩は機嫌が悪そうだった。
いつも學校ではニコニコしている先輩が、空き教室の中では眉間にシワを寄せ、怒りをあらわにしていた。
「大なにが、元から顔が良い人間は苦労を知らなくて良いよ! こっちはこっちで苦労してるのよ!!」
次々と不満を口にしていく先輩を見て、コレが素の先輩なんだろうと俺は思った。
あぁ、この人も々大変なんだなぁ……とか思いながら、先輩の様子を見ていると、俺は先輩に気を取られ過ぎてしまい、思わず音を出してしまった。
「だれ!」
ヤバイ!
そう思った俺だったが、既に遅かった。
先輩と目が合ってしまった。
「あ、あの……々大変っすね……」
「な……き、聞いてたの?」
「ま、まぁ……はい」
そう言うと、先輩は見る見るに顔を真っ青をにし、膝をつく。
「お、終わった……」
「いや……その……えっと……覗き見したのはすいませんでした……」
々と衝撃的だったが、まぁ先輩も人間なのだ、裏表があったとしても不思議ではない。
むしろ、いつもニコニコして、悩みなんてなさそうな先輩にも、人並みに悩みがあるんだと思うと、なんだか親近が沸いてくる。
「どうせ……皆に言う気でしょ! 間宮子は、とんでもなく格の悪いだって!」
「自分で自覚はあるんですね……」
「それとも何? 私を脅して、いやらしい事を要求するつもり!?」
「えっと……とりあえず落ち著いて貰って良いっすか?」
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