《甘え上手な彼》♯1
とある放課後、誰も居なくなった教室に、二人の生徒が殘っていた。 一人は男子生徒で、特別イケメンと言う訳でもなく、不細工という訳でもない、普通の男子生徒。 もう一人は子生徒だが、男子生徒とは対照的に整った顔立ちとウェーブがかったクリームの頭髪が特徴的な子生徒だ。 男子生徒は、不思議そうに子生徒を見つめながら尋ねる。
「えっと……俺に何かよう?」
男子生徒の名前は八重高志やえたかし、高志は目の前に居る子生徒に向かってそう尋ねる。
「うん、ごめんね呼び出して」
「いや、それは別に……どうせ暇だし」
新學期になりまだ數日しか経っておらず、新しいクラスにも段々馴染み始めていた今、高志はこの目の前にいる、宮岡紗彌みやおかさやに呼び出しをけていた。 高志は呼び出された時、心何を言われるのかドキドキした。 しかし、そのドキドキとは、告白されるかも、と言った甘いドキドキでは無い。 新學期にって、同じクラスになっただけのに、告白されるなんて、そんな甘い事を考えられほど高志は馬鹿ではない。 考えられるのは、最近目の保養にちょいちょい紗彌を見ていた事がバレてしまい、何か言われるのかもしれないと言う不安だけだった。 何回か目が合ってしまった上に、目が合うと紗彌は直ぐに目を反らし、その場を離れていった。
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(キモイとか言われんのかなぁ~、結構きっついなぁ……)
高志がそんな不安な事ばかり考えていると、紗彌が口を開いた。
「単刀直に言うけど、私と付き合って」
「は?」
思いがけない言葉に、高志は思わず間の抜けた聲を出してしまう。 しかし、直ぐに意味を考え始める。
(付き合って? あぁ、はいはい。買いとかそう言うのでしょ? わかってますとも、俺にそんな甘い展開なんて無いってこと)
「えっと、どこに付き合えば良いの?」
「? なに言ってるの? そうじゃなくて、彼氏になってって言ってるの」
「あぁ、枯れ木までですか、そんなところに何の用で?」
「そうじゃなくて、あぁもう! アンタが好きなのよ! これでわかった?」
「あぁ、そう言う意味か……って、え?」
ようやく意味を理解した高志は、改めて紗彌の顔を見る。 赤く染まった頬、視線を合わせようとせず恥ずかしそうに目を伏せている。 そんな紗彌の様子から高志は、紗彌の気持ちが本であることを悟る。
「えっと……俺らって話したことないし、ぶっちゃけ初対面に近いよね?」
「そうだけど、何か問題?」
「いや、問題だらけだろ? お互い良く知らないのに告白って……」
「私は貴方の事を良く知ってる」
「え……それはどういう……」
「八重高志、部活は帰宅部で績は丁度真ん中位、好きな食べは魚料理全般、中學は陸上部、好きな教科はこれと言ってなし、好みのタイプはロングヘアーで優しいの子……」
「わ、わかったもう良い!」
「まだ々知ってるわよ?」
「いや、これ以上はなんか怖い」
本當に々知っていて高志はびっくりした。 しかし、高志は紗彌がどんな人間なのか全く知らない。 唯一知っているのは、二年生の中で一番可いくて有名と言うことだけだった。
「で、付き合ってくれるの?」
「い、いや……そもそも俺は宮岡の事知らないし……それに……なんで俺なの?」
高志はなんで自分に告白して來たのかが、一番疑問だった。 自分よりも顔が良い奴や面白い奴は學校に山ほど居る。 紗彌ならちょっと頑張れば、選び放題であろうに、なぜ自分を選んだのか、高志は不思議でならなかった。
「……覚えてないんだ……」
「え?」
「……逆に聞くけど、好き意外に理由っているの?」
「い、いや…それは……」
「私は貴方が好き、大好き、一番好き!」
高志に詰め寄りながら、紗彌は高志に自分の思いを告げる。 そんな直球で言われると、高志も照れてしまい、顔を赤くしながら逃げるように後ろに下がって行く。
「わ、わかったから……じゃ、じゃあその……友達からってのは?」
「いや」
「即答かよ…」
「私の事、毎日見てたくせに……」
「うぐっ! ば、ばれてたの?」
「バレバレ、うれしかったけど」
更に顔を赤く染める高志に紗彌は更に続ける。
「おんなじクラスになれて嬉しくて、聲かけたかったけどダメで……でも、八重からの視線じて、うれしくて……もしかしたら今告ったら行けるかも、とか思って……」
「えっと……その……でも、付き合ってみたら々と予想と違った事とかあるかもしれないし、友達からお互いを良くしってからでも……」
「いや」
「だから即答はやめて、しくらい考えて!」
「付き合いながらでも互いの事は知れるでしょ……」
またしても頬を赤らめ、髪のを弄りながら恥ずかしそうに言う紗彌。 そんなさ紗彌に高志は普通にときめいていたし、何よりこんな子が彼だったら、幸せだろうなんて事も考えていたのだが、それ以上に自分が紗彌とは釣り合わない事を自覚していた為、素直に付き合うと言えずにいた。 きっと付き合ったら付き合ったで、周りからは釣り合ってないだのの丈に合ってないだの言われるだろうし、紗彌は男を見る目が無い殘念な子と言われてしまうかもしれない。 そう考えると、高志は紗彌と付き合うのが怖くなってしまった。
「えっと、宮岡ならもっと他に良い人だっているんじゃ無いか? それに俺みたいなのが彼氏じゃ釣り合わないよ……」
折角告白してくれた相手に、こんなことはあまり言いたくはない高志だったが、こうでも言わないとわかってくれないと思いそう言った。 付き合ってからがっかりされるなら、付き合わなければ良い。 それが高志に考えだった。 しかし、紗彌は__。
「周りなんてどうでも良いわよ、それに私は貴方の嫌なところも、悪いところも知りたいの」
真っ直ぐな視線を高志に向け、頬を赤くしながら紗彌は高志に言う。 真意はわからないが、紗彌が噓を言っているじはしなかった。
「いや……でも……」
「付き合うの?」
「だから……」
「付き合わないの……」
「う……」
紗彌は言いながら高志に近づき、高志の制服の袖を摑んで離さない。 そして紗彌の次の行に、高志は負けてしまった。
「付き合わないって言ったら……泣く…」
   紗彌はゆっくりそう言いながら、高志に抱きついた。
「………はぁ~……負けました。よろしくお願いします……」
こうして二人は付き合う事になった。
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