《甘え上手な彼》♯3
「あのさ、そろそろ俺の家なんだけど?」
「うん、知ってる」
學校を出て駅に向かい、高志と紗彌は電車に乗り、四駅ほど離れた駅で電車を下りて、再び歩き始めた。
高志はいつも通りの帰宅コースを帰っているが、一向に紗彌は高志から離れようとしない。
「あのさ、本當に宮岡の家ってどこなの?」
「八重の家の裏手。あ、ここだよ」
「あぁ、最近新しく建った家の……宮岡の家だったのか……」
まさかのご近所さんとは想像も出來なかった高志。
建ったばかりの真新しい大きな一軒家を見ながら、高志は新しいご近所さんで、初めての彼である紗彌の顔を見る。
「じゃあ、俺はここで」
そう言って手を離そうとした高志だったが、紗彌が高志の手を離さなかった。
「上がって行かない? お母さんに紹介したいし?」
「え? いや、いきなりそれはハードルが高いと言うか……そういうのはもうし互いを知ってからのほうが……」
いきなりの提案に高志は焦った。
つい一時間ほど前に告白されただけでも高志にとっては、慌ただしい一日だと言うのに、その上、母親に挨拶して、子の部屋に上がるなど、高志は想像していなかった。
Advertisement
「どうせ家は裏手だし、それにまだそんなに遅くないから大丈夫だよ」
「いや、そう言う意味じゃなくて……あ、すまん! ちょっと俺これから用事が……」
「暇だって言ってたのに?」
「うぐっ!」
ここ一時間で紗彌と話しをして、高志はすこしづつ紗彌の格を理解しはじめていた。
一つは結構強引な格だと言うこと、そしてもう一つは……。
「ねぇ…寄って行ってよ…」
わざとか素なのか、教室でのクールな態度からは考えられないほど、甘え癖があると言う事に。
*
「ただいまぁ」
「お、お邪魔します…」
結局彼の勢いと、甘えた聲に負け、高志は宮岡家に足を踏みれた。
高志にとって、人生初めての彼の家はなんだか新鮮で落ち著かなかった。
「紗彌、おかえり…あら? どちら様?」
「あ、ど…どうもこんにちは、自分は娘さんと……」
「彼氏、ちなみに今日告った」
「あらあら、まぁまぁ…紗彌ちゃんに彼氏? ママびっくりだわ~、いままで家に彼氏なんて連れてきた事なかったから〜」
紗彌の母親は一言で言って人だった。
どことなく顔の郭や口元などが、紗彌と似ているなと高志は思いながら、彼の母親にし見とれてしまった。
紗彌の母親は娘が初めて彼氏を家に連れて來たのが嬉しいのか、ニコニコと笑いながら、高志の手を取った。
「こんなところで立ち話も何ですから、どうぞ上がってください。ようやく引っ越しの荷ほどきも終わってきたところで、綺麗ですから」
「え? あ、はい…お邪魔します」
高志は言われるがまま、家の中に連れて行かれ、そのままリビングに通された。
紗彌は著替えをしてくると行って、自室に戻ってしまい、今は高志と紗彌のお母さんと二人きりだった。
「飲みはアイスティーで良いかしら?」
「あ、なんでも大丈夫です」
「ウフフ、そんなに張しないで、くつろいでもらって大丈夫だからね」
「は、はい。ありがとうございます」
そうは言われても、一切くつろぐ事が出來ない高志。
紗彌の母親は顔立ちが整っているせいか、隨分若く見えた。
スタイルも良く、二十代後半と言われても信じてしまいそうなほどに若々しかった。
「あの子は學校ではどう?」
「え? あぁ、紗彌さんの事ですか? えっと…友達も多いし、勉強も出來て學校でも人気ですよ。自分なんか釣り合ってませんよ」
「そんな事無いわよ、貴方も十分素敵な男の子よ」
「あ、ありがとうございます」
あまりそう言った事を言われた事が無い高志は、すこし照れてしまった。
「ねぇ、告白は一どっちからしたの?」
「えっと……娘さん…さ、紗彌さんから今日の放課後に……」
「あら、もしかしてあの子が強引に?」
「えっと……若干……」
「ごめんなさいね、悪い子では無いのよ、でも好きな事とかになると、多強引というか、無理をする子で……」
頭に手を當てながら、紗彌の母親はそんな話しをしてくる。
高志は苦笑いをしながら、その話しを聞いていた。
「でも……きっと嬉しかったと思うわ…」
「え?」
「あの子、親の私から見ても普通に可い子だと思うの、でも昔から、好きな男の子が居るとか、そう言うの全くないし、気配もないしで心配だったのよね……でも、今日君を連れて來たあの子の顔を見てほっとしたわ」
「そうなんですか?」
「えぇ、あの子があんなに楽しそうに誰かを連れて來たのなんて初めてよ」
それを聞くと、誠実はし嬉しくなり顔が熱くなるのをじた。
そんな事を話していると、リビングのドアが開き、私服に著替えた紗彌がリビングにってきた。
「ママ、変な事とか聞いてない?」
「聞いてないわよ~、ママはお買いに行って來るから、後は若い二人でごゆっくり~」
「え…マジで……」
紗彌の母親はそう言うと、立ち上がりバックを持ってリビングを出て行ってしまった。
「何話してたの?」
「え、あぁいや、特にはなにも」
「ふーん……まぁいいや、私の部屋行こ」
「え! み、宮岡の部屋?!」
「何? 嫌?」
高志は紗彌に連れて行かれるままに、紗彌の部屋に來てしまった。
中は青を基調とした合いの部屋になっており、ベッドの上にはぬいぐるみが置いて會ったり、本棚には寫真が飾られていたりとしていた。
「あんまりジロジロ見られると、恥ずかしいんだけど」
「じゃあ、部屋につれて來なければ良いのでは?」
紗彌はベッドの上に座り、隣をぽんぽんと叩き、高志に座るように指示する。
高志は、言われるがまま、紗彌からし覚を開けて隣に座る。
すると、紗彌は高志の方にをぴったりくっつけ、腕を絡めてきた。
「あ、あのぉ……これは…」
「嫌?」
「嫌じゃ無いけど……」
「なら良いじゃん」
何かにつけてくっついてくる紗彌に、高志は先ほどからドキドキしっぱなしだった。
紗彌が一何を考えているのか、高志は全くわからなかった。
冥府
山中で夜間演習中だった陸上自衛隊の1個小隊が消息を絶った。 助け出そうと奔走する仲間たち、小隊を付け狙う地獄の使者、山中一帯に伝わる古い伝承。 刻々と死が迫る彼らを救い出すため、仲間たちは伝承に縋る。 しかしそれは、何の確証も一切ない賭けだった。 危機的狀況で生きあがく男たちの戦いを描きます。 カクヨムにも掲載しています。
8 140お久しぶりです。俺と偽裝婚約してもらいます。~年下ワケあり生真面目弁護士と湯けむり婚前旅行~
☆甘辛こじらせ両片思い×偽裝婚約×溫泉旅行☆ 初戀の思い出を支えに生きる司書の葉月の前に、その相手・朔也が十四年ぶりに現れる。 美しく成長し弁護士となった彼は突然プロポーズ! だが、それは遺産を得るための偽裝婚約に葉月を加擔させるためだった。 葉月は朔也の家族旅行に同行し、婚約者を演じることになってしまう。 朔也は悲しむ葉月の唇を強引に奪ったかと思えば、優しくエスコートしてくれたり、他人の悪意から守ってくれたり。 戸惑う葉月だが、彼が何か秘密を隠していることに気づき、放っておけなくなって…。 クールなようで內面は熱くて真面目、そして若干ヘタレな年下弁護士 × 気弱なようで相手を想う気持ちは誰より強い司書 波亂ありですがわりと甘々な再會愛&初戀成就ストーリー。 隠しててもヒーローは最初からヒロイン大好き! 8/30に完結しました!
8 186引きこもり姫の戀愛事情~戀愛?そんなことより読書させてください!~
この世に生を受けて17年。戀愛、友情、挫折からの希望…そんなものは二次元の世界で結構。 私の読書の邪魔をしないでください。とか言ってたのに… 何故私に見合いが來るんだ。家事などしません。 ただ本に埋もれていたいのです。OK?……っておい!人の話聞けや! 私は読書がしたいんです。読書の邪魔をするならこの婚約すぐに取り消しますからね!! 本の引きこもり蟲・根尾凜音の壯絶なる戦いの火蓋が切られた。
8 186脇役転生の筈だった
乙女ゲーム『エデンの花園』に出てくる主人公……の、友人海野咲夜。 前世の記憶というものを取り戻した咲夜はある未來のために奮闘する。 だって、だってですよ? この友人役、必ず死ぬんですよ? 主人公を庇って死んじゃうんですよ? ……折角の2度目の人生、そうそうに死んでたまるかぁぁぁ!! という思いから行動した結果、何故か私を嫌っている筈だった兄が重度のシスコンと化したり…。 何故か面倒事に巻き込まれていたり? (特にシスコン兄の暴走のせいですが) 攻略対象者とは近付かないと決めていたのに何故か友人になって…。 しかもシナリオとは違って同じクラスになってるし…!
8 119辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節穴らしい〜
田舎の領地で育ったリリー・アレナはアズトール伯爵家の次女。木があれば登るような元気すぎる令嬢で、領民には「猿百合令嬢」と呼ばれている。幼く見える外見ながら十六歳になっていて、初めて王都を訪れて最愛の姉との再會に喜んでいた。 しかし王都で出會う男性たちは美しい姉には目もくれず、なぜかリリーの周りに集まってくる。姉の婚約者までおかしな目で見始めてしまい、一人で頭を抱える。とはいえ、リリーはそんなことでへこたれない。こっそりストレスを発散させていると、氷のように冷たい目をした男と出會った。さらに、ちょっと変わった動物たちと觸れ合って癒され、姉の美しさと優しさに元気に感動する。 ……しかし。一度は解決したと思っていたのに、事態はリリーが予想していたより深刻だった。 (アルファポリス様、カクヨム様で連載していたものを一部修正して連載しています)
8 135【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔女』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。
短編版の連載開始です。序盤の方から短編にない新キャラ等も登場予定です。 魔法王國で唯一魔法が使えない『無能令嬢』リンジー・ハリンソン。ある日、公衆の面前で婚約者アンドルー王子から婚約破棄を言い渡される。學院ではいじめられ、侯爵家である家族には冷遇され、使用人からもいびられる毎日。居場所のない日々だったが、ある日謎の旅人に出會い、『伝説の大魔女』だった前世の記憶がよみがえる。そして、伝説の虛(ゼロ)級魔法使いとして覚醒。とりあえず、學院でいじめてきた生徒たちを圧倒。掌返しをするアンドルーも拒否。家族や使用人にもざまぁします。さて、次はなにをしよう……と悩んでいたら、國王陛下から呼び出し?國を救って欲しい?辺境の魔物討伐?とりあえず、褒美を頂けるなら無雙しちゃいましょう。 チート級魔法での無雙あり。ざまぁあり。
8 65