《甘え上手な彼》♯5
翌日、高志は眠い目をこすりながら、一階のリビングに下りてきた。
昨日の晩、あの後もメッセージのやりとりが続き、なかなか眠ることができず、気がつけば深夜の二時を回っていた。
「はぁ~眠い」
欠をしながら、朝食を済ませ高志は家に向かう準備を整える。
「そろそろ行ってくるよ」
「あら? 今日は早いのね」
「まぁちょっと……」
昨日のやりとりの末、紗彌が高志を迎えにくることになったのだが、インターホンを鳴らされ、紗彌が迎えに來たことが家族にバレるのを避ける為に、高志は家の外で紗彌を待つ。
自分の家の親が、一どんな格をしているかは、子供である高志が良くわかっていた。
バレたら絶対に々聞かれ、質問攻めにされる。
高志はそれが嫌だった。
「はぁ……でも、メインのあのマークに気がついたら、きっと々言われるんだろうなぁ……」
家の前で壁に寄りかかりながら、高志は自分のメインを確認する。
しっかりと橫に付いたハートマークを見て、高志はもう一度ため息を吐く。
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「おまたせ、中で待っててくれて良かったのに」
「うちにも々事があるもんで…」
しして、紗彌がやってきた。
二人は合流し、一緒に學校に向かう。
自然な流れで、紗彌は昨日と同様に高志の手を握る。
「あのさ……手を握るのは、學校近くではやめないか?」
「なんで?」
「なんでって……恥ずかしいし……々と視線だってあるし……」
紗彌と歩いているだけでも、目立ってしまうのに、そのうえ手なんか繋いでいたら、うちの學校の愉快な男子生徒達が、笑顔でどんな殺戮ショーを始めるかわからない。
それが心配なので、高志は紗彌に想定案したが、余計強く手を握られたしまった。
「そう言われると、意地でも離したくなくなるよね」
「話し聞いてました?!」
小悪魔のような笑みを浮かべながら、紗彌はしっかりと高志の手を握って離さない。
「聞いてたよ? さ、行きましょう」
「え! だからちょっと!」
高志は紗彌に手を引かれながら、駅までの道を歩き始める。
駅の改札を抜け、電車に乗る高志と紗彌。
「この辺りから、うちの高校來てるのって、もしかして私らだけ?」
「そうかもしれないな、あんまり駅で同じ制服の人見ないしな……」
雑談をしながら、電車に揺られること十數分、目的の駅に到著し二人は電車を下りて、學校に向かう。
流石に學校周辺の駅前ともなると通學中の他の生徒もいた。
相変わらず手を繋いで通學する、高志と紗彌を見て、驚く生徒もいれば、リアクションの無い生徒ももちろんいる。
しかし、かなり多くの人間に見られていることは確かで、高志はやっぱり恥ずかしかった。
「あのさ、そろそろ手離さない?」
「教室までこのままよ。別に良いでしょ?」
「きょ、教室まで?!」
勘弁してくれと言ってしまいそうになったが、紗彌の顔を見たら、そんな事を言えなくなってしまった。
(今日は、厄日だな……)
學校の愉快なお友達から、一どんな拷問をけるのだろうかと考えながら、高志は諦め半分で學校に向かって行く。
學校に著くと、更に視線は多くなった。
珍しいものでも見るかのように、高志と紗彌を見る人、なぜか狂気の視線を送り続ける一部の男子生徒。
いつもと変わらない學校のはずなのに、高志は居心地の悪さをじていた。
そして、ようやく教室に著き、教室のドアを開けると、教室にいた全生徒が高志と紗彌を見た。
握った手は、教室のドアを開けたところで離され、互いに自分の席に向かって行った。
(見られてる……主に男子から……)
教室でも多くの視線を集め、高志は気が全く休まらなかった。
とりあえず席に座って、大きく息を吐くと、突然背中をドンと思いっきり叩かれた。
「いってぇ!! 誰だよ……」
「俺だ、高志」
「あぁ、何だ優一か……」
背中を叩いてきたのは、高志の友人の那須優一なすゆういちだった。
普通の生徒の高志とは違って、ある意味學校では有名人な優一。
別に容姿が良いわけでもなく、運が特別出來る訳でも、勉強が得意な訳でもない。
優一が有名な理由はもっと別にあった。
「お前に彼が出來たと言う噂が流れているのだが? 本當か? 本當だったら、今すぐ屋上から紐有りバンジーしてもらう!」
「そこは紐無しじゃね? てか、その噂って、どうせお前が流したんだろ?」
「まぁな……で、どうなんだ!」
優一は噂好きで有名なのだ。
噂有るところに優一有りと言われるほど、この男は噂好きなのだ。
「昨日、家に帰ってメインを見て驚いたぞ、お前のアイコンの隣に、高校男子がしくてたまらないマークがついているのだからな!」
「あぁ、昨日々あったんだよ……」
「々って何だ! 詳しく教えろ!!」
高志に詰め寄る優一。
そんな二人の會話を周りの他の男子生徒も聞き耳を立てて聞いており、高志はため息を吐いて椅子から立ち上がる。
「場所を変えようぜ」
「屋上か? バンジーか?」
「バンジーはしない!」
高志と優一は、二人揃って屋上に向かって歩いて行く。
殘ったクラスの視線は、一気に紗彌に集まった。
紗彌はそんな視線などお構い無しで、スマホを弄り始める。
「お、おはよう紗彌」
「おはよう、由華ゆみかどうしたの? なにか言いたげね」
門由華(みかどゆみか)は紗彌の一番の友人だった。
中學時代からの付き合いで、お互いに気を許せる間柄だった。
そんな彼も、昨日の一件はメッセージを紗彌から貰い知っていた。
「まさか、手を繋いで登校して來るなんて思わなかったわ……」
「本當は腕に抱きついてやろうかと考えたけど、それは流石に嫌われるかと思ってやめたわ」
「そんな事しようとしてたの? もう、告白功して嬉しいのはわかるけど……八重君の事もしは……」
「「「こ、こくはくぅぅ!!」」」
由華の言葉に反応したのは、教室に殘っていた生徒のほとんどだった。
その瞬間、教室中の生徒が紗彌の元に集まり、紗彌を質問攻めにする。
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