《甘え上手な彼》♯6
「え? 何! 宮岡さんってあいつの事好きだったの?!」
「えぇ、何か問題?」
「い、いや…問題って事はないけど……」
紗彌に尋ねて來た、一人の男子生徒に、紗彌は落ち著いた様子で答える。
言われた男子生徒は、返答に詰まってしまった。
「なんでこの時期に?! まさか二人とも前から知り合い?」
「昨日まで、ろくに話しもしたこと無かったけど?」
「ほ、本當に宮岡さんの方から告白したの!?」
「えぇ、私から昨日彼に言ったのよ」
次々と來る質問に、紗彌は淡々と答えて行く。
教室の他の生徒は、紗彌の話しを聞き、高志と紗彌の話題で持ちきりになった。
「ちょっと! 良いの? そんなあっさりバラして!」
「別に良いじゃない? その方が悪い蟲も寄って來ないし」
「相変わらず、紗彌は八重君に夢中なのね……」
心配そうに言う由華に、紗彌は何食わぬ顔でそう言い放つ。
教室の中では、一部の男子生徒が夢も希も無くしてしまったように、真っ白になり。
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子は、今までバナの一つも無かった紗彌が彼氏を作った事に、興味津々の様子だった。 そんな中、紗彌はスマホを弄りながら、ホームルームが始まるのを待った。
*
教室が軽いお祭り狀態になっているころ、高志は優一と共に學校の屋上にやって來ていた。
屋上のフェンスに背中を預けながら、高志は昨日の出來事を優一に説明していた。
「なるほど……それで、付き合う事になったと……」
「あぁ、俺も昨日は々ありすぎて……」
「そうか……お前も疲れただろう、今楽にしてやるからな」
「その荒縄はどこから出した?」
心配そうな表を浮かべながらも、優一はどこからか取り出した荒縄を高志の足に結び始める。
「大丈夫! この縄頑丈だから!」
「おい、バンジーか、バンジーをやらせようとしているよな?」
高志は、優一の持っていた荒縄を沒収し話しを再開する。
「俺も正直驚いたよ……お前のアイコンの隣にあのマークが出てたの見つけて、すぐさまお前と俺の共通の友人に、一斉にメッセージを送って……その後返信の対応して……」
「やっぱり見てたのか……しかも既に広めてるのかよ」
どこか遠くを見つめながら、やりきったようなじの表を見せる優一に高志はため息を吐く。
「嫌な予はしたけどさ……」
「そうは言っても、お前も迂闊(うかつ)だぞ? あのマークが付くって事は「彼ができました」って自分から公表するようなものだ。俺が何もしなくても、誰かがしてたと思うぞ?」
「違うんだよ……あれは……」
高志は、昨日の紗彌との連絡先換時の一連の出來事を説明する。
自分がんだのでは無く、紗彌がんだ事だと告げると、優一は驚き高志に尋ねる。
「え? あの宮岡が? あの男を全く相手しない宮岡がか?」
「あぁ、半ば無理矢理に……」
「……お前……金銭を要求されてるとかじゃないよな?」
「まぁ……普通はそう考えるよな……あの宮岡だし……」
宮岡紗彌と言う子生徒は、この學校では一切男になびかない、クールビューティーなとして有名だった。
そんなイメージしか無い宮岡が、そんな事をするとは、誰も考えられなかった。
しかし、高志は昨日あれだけの事をされたうえに、今日は手を繋いで登校までしてきた。
流石にもう夢では無いと気がついていたが、なにか裏があるのでは無いかと、思わずにはいられなかった。
「ま、なんにせよ気をつけろよ、お前はあの宮岡と手を繋いで登校したんだ、どれだけの男子生徒を敵に回したかわかってるのか?」
「まぁ……大……」
朝、昇降口から教室に向かうまでで、既に多くの殺気をじている高志は、自分のの危険をじていた。
「かく言う俺も……リア充を憎む男子生徒の一部なので、一発くらい毆りたいと考えている」
「先生! ここに今まさに非行に走ろうとしている生徒がぁぁ!!」
高志は、友人の迷いの無い目を見て恐怖を覚えてぶ。
「馬鹿野郎! 百発のところをまけにまけて、一発で済ましてやろうってんだ!」
「一発も毆らない方向にはならないのかよ!」
高志は、拳をワナワナと振るわせて近づいて來る優一から距離を取る。
優一は拳を握りしめ、ゆっくりゆっくりと高志に近づく。
「お前……あれだけの人に迫られたうえに……部屋で二人っきりだとぉ……羨ましいんじゃボケェェェェ!!」
「落ち著け馬鹿! それはただの嫉妬だ!」
「やかましい! 紐有りバンジーか、俺の拳百発か……選ばせてやろう」
「だからなんで紐有りなんだよ! しかも結局百発毆るのか!」
「安心しろ、紐の長さは校舎の高さより長い」
「安心出來るか! バンジーになんねーだろ! 即死だ!」
そんな會話をしながら、高志と優一が屋上で鬼ごっこをしていると、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。
「ちっ! 運の良い奴め……」
「それが友人に対して言う臺詞か! どっかのラスボスみたいな臺詞だったぞ!」
などと話しをしながらも、高志と優一は教室へと戻って行く。
*
「あの……今なんと?」
「だから、一緒にお晝食べようって」
時間は過ぎて現在はお晝。高志も晝飯を食べようと優一と學食に向かおうとしていた。
あの後、授業と授業の間の休み時間の度に、高志はクラスメイトからの質問攻めにあった。 昨日の出來事についてや、どうやって紗彌を落としたかなど、逆に高志が聞きたいような質問ばかりだった。
そんなこんなで、ようやく晝休みとなり、高志は一刻も早く教室を出て、學食でゆっくり食事をしたかったのだが、その行く手を紗彌が塞ぐ。
「えっと……俺は飯は學食か購買派なんですよ……宮岡みたいに弁當じゃないし、今日は別々でも……」
「そうだと思って、八重の分も作って來たから一緒に食べよ」
「な……」
「「「「なんだってぇぇぇ!!」」」」
高志が答える前に、教室の男子生徒が聲を上げてぶ。
男子生徒のび聲に、高志は思わず教室を見渡す。そこには、膝を抱えてうずくまる者や、地面に両手をついて絶の表を浮かべる男子生徒の姿があった。
(個的なクラスだなぁ……)
咄嗟にそんな事を考えてしまう高志は、このクラスで上手くやっていけるか、心配になってきていた。
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