《甘え上手な彼》♯12
「……」
「……」
高志は母親と目が合い、恥ずかしさを通り越して、もういっそ死んでしまいたいと考えるほどになっていた。
そんな高志の様子に気がついた紗彌は、不思議そうな表で、高志に尋ねる。
「どうしたの? さっきからどこ見て……あ」
扉の方を振り返り、紗彌も高志の母親の存在に気がつく。
紗彌は、顔を真っ赤にし、俯いてしまった。
最悪のタイミングで來てしまったなと、高志の母は後悔した。
「ご、ごめんなさいね……お邪魔しましたぁ~」
そう言って、高志の母親はドアを閉め、急ぎ足でリビングに戻って行った。
殘された、高志と紗彌の間にも気まずい空気が流れる。
二人きりだからこそ、あんな事を言えたのに、それが第三者、しかも母親に聞かれていたというのは、思春期の高志にとって、大きな神的ダメージだった。
「わ、悪い……母親が……」
「だ、大丈夫……でも、恥ずかしかった……」
顔を赤く染めながら、紗彌は俯き気味に高志に答える。
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良いじの空気だったのに、母親のせいで臺無しになってしまったと、高志は自分の母親に怒りを覚えた。
そんな事を考えてるいると、突然紗彌が高志のに抱きついてきた。
「え……な、なに?」
急な紗彌の行に、高志が戸っていると、紗彌は顔を高志のを埋めたまま高志に答えた。
「……時間差で恥ずかしくなってきた……しで良いから、このままで居させて……」
「あ、あぁ……はい」
無理も無いだろう、紗彌からしたら、彼氏に甘えているところを彼氏の母親に見られたのだ、恥ずかしくない訳がない。
正直、見室で二人っきりの狀態で、しかも先ほどまで凄く良い雰囲気だった事もあり、高志的には、こういう激しいスキンシップは遠慮したかったのだが、こちらに非があるので、高志は紗彌にしばらくを貸す。
「お、落ち著いた?」
「う、うん……ありがと……」
數分ほどで、紗彌は高志から離れた。
高志は、いつも余裕そうな笑みを浮かべ、半分自分をからかっているような紗彌が、赤面して恥ずかしがっている姿に新鮮さをじていた。
「そ、そろそろ帰るね……時間も時間だし……」
「あ、じゃあ送って行くよ」
高志は紗彌と共に、部屋を後にし玄関に向かう。
気を使ったのか、高志の母親はリビングで大人しくしているらしく、出會すことは無かった。
「ほ、ほんとに悪かったな……家の母親が……」
「もう大丈夫だよ……それに……今日は嬉しかったから……」
「え……何が?」
「高志がちゃんと私の事を考えてくれるって、知れたから……」
いつも通りのらかい笑みを浮かべながら、紗彌は高志に言う。
さりげなく、手を握られ、高志は紗彌の手を握り返し、紗彌の家まで手を離す事無く歩いて行く。
「ありがと、じゃあまた明日ね」
數分で紗彌の自宅に到著し、高志と紗彌手を離した。
し名殘惜しさもじながら、高志も紗彌別れを告げる。
「あぁ、また明日な……さ、紗彌……」
高志はそのとき、始めて紗彌を名前で呼んだ。
部屋で名前で呼ばれた時から、自分も名前で呼ぼうと考えていた。
しかし、いざ呼んで見ると、以外と恥ずかしい。
高志は、頬を赤く染め紗彌の表を伺う。
「ウフフ、明日楽しみにしてるからね……大好きだよ」
「え……!?」
紗彌はそう言って、高志の顔に自分の顔を近づけ、高志の頬にキスをした。
高志は突然の紗彌のそんな行に、更に顔を赤くし固まってしまった。
紗彌はキスをした後、すぐに家の中にってしまい、高志は紗彌の家の前で數秒固まった後にぼーっとしながら、自宅に帰って行く。
「俺……意外と簡単に落とされるんじゃね?」
そんな事を考えながら、高志は自宅に戻る。
そして、自宅に帰った高志を待って居たのは、母親からの激しい質問攻めだった。
「た、高志! 今日のあの綺麗な子は誰! っていうか彼よね!? あれで彼じゃ無いとか言ったら、アンタの今日の晩飯は抜きよ!」
「覗いた癖に何言ってんだよ! 俺だってもう高二何だから、彼くらい居てもおかしくねーだろ!」
「ちゃんと母さんに紹介なさい! びっくりしたわよ、あんなに可いなんて……あんた騙されてるんじゃ……」
「失禮だろ! まぁ、俺もしそう思ったけど……」
家に帰った高志が、リビングで母と言い爭っていると、玄関の鍵が開く音が聞こえてきた どうやら、高志の父親が帰ってきたようだった。
「ただいま、何をしているんだい?」
「あ! お父さん聞いてよ! 実わね……」
「必要以上に話しを広めるな!」
「お父さんには言わなきゃでしょ?」
「あぁぁぁ! だから、隠しておきたかったのにぃぃ!!」
その日の夕飯は、高志にとって地獄だった。
両親からの質問攻めに始まり、なぜか両親の付き合っていた頃の話しを聞かされ、高志はへとへとだった。
「で、いつから付き合っているんだい?」
「父さん、今日は隨分良い笑顔だね……」
「いやー、お前には悪いが、父さんはお前に彼なんて後數年は出來ないと思ってたよ」
「それは俺がモテそうも無いって事でしょうか?」
「正直な」
「そんな息子の父親は貴方なんですが?」
さっさと食事を済ませて部屋に行こう。
そう思って高志は、急いで食事を済ませる。
「そう言えば、あの子の名前はなんて言うの?」
「宮岡だよ、宮岡沙耶……」
「宮岡……宮岡? それってもしかして……」
(いらん事に気がつきやがったな…母さん)
「もしかして、裏手の宮岡さん?」
「……そうだよ」
隠して居ても、いつかはバレるだろうと思い、高志は正直に答える。
すると、高志の母親は再び興したようすで話し始める。
「やっぱり?! あの奧さんの娘さんなら納得だわ……」
「なんだ、そんなに裏手の奧さんは人なのか?」
「高校生の娘さんが居るなんて思わなかったけど……まさか、その娘さんと家の息子が……」
「そのうち、家も何かお返しを持って行った方が良いな……よし! 私が持って行こう」
「あなた……それは奧さん目當てでは無いわよね?」
「そ、そんな分けないだろ? いい年をして……」
「じゃあ、なんで目が泳いでるのかしら?」
両親の話しがしそれているうちに、高志はソーッと二階の自分の部屋に戻って行く。
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