《甘え上手な彼♯20

その日の帰り道、高志は隣を歩く紗彌に違和じていた。

「あのさ……」

「な、なに?」

「手、繋がなくて良いの?」

そう、いつもなら自然な流れで、紗彌は高志の手を握ってくるのだが、今日に限ってそれが無い。

しかし、紗彌はなんだか必死に何かを我慢するように、下を噛みしめながら、高志の隣を歩いていた。

そんな紗彌に、流石の高志も気がつき、何かあったのでは無いかと尋ねる。

「つ……繋ぎたいの? そ、そんなに……私と手を繋ぎたいの?」

「えっと……嫌なら別に……」

「い、嫌とは言ってない……」

「じゃあ……」

高志は煮え切らない紗彌の手を自分から握る。

こんなことは初めてだった。

初めて高志から、手を握られ紗彌は凄く嬉しかった。

しかし、今日の由華との會話を思い出す。

「しょ、しょうが…ないなぁ~……い、家に著くまでだよ? それ以上は離しちゃうから……」

「えっと……それはいつも通りなのでは?」

高志は、今日の優一との會話を思い出し、こうして自分から手を握ったのだった。

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しかし、紗彌はやはりどこかおかしい、やっぱりチャコに構い過ぎて怒っているのだろうか?

なんて事を高志は考えながら、それとなく探りをれてみる事にした。

「あ、あのさ……今週末、どこか行かないか?」

それは、高志からのデートのおいだった。

紗彌は更に嬉しくなった。

いつも以上に積極的で、なんだかいつもの高志では無いかのようだった。

しかし、そこで紗彌は由華の言葉を思いだす。

「ご、ごめん……こ、今週末は……忙しいの……」

もちろん忙しくなど無い、忙しかったとしても、高志とのデートなら、なんとか都合をつけて駆けつける思いの紗彌だが、今日は違う。

「そ、そっか……殘念だな…」

高志は苦い笑みを浮かべながら、がっかりそうにそう言った。

そんな高志の姿を見て、紗彌はが張り裂けそうな思いだった。

しかし、これも高志に嫌われない為、あんまり甘え過ぎるのは良くないと言う、由華からの助言を聞き、紗彌は必死で高志に甘えるのを堪えていた。

(やっぱり、怒ってるのかな? 昨日確かに紗彌を放って、チャコばっかりに夢中だったし……)

高志はそんな事を考えながら、再び優一の言葉を思い出す。

『………って生きは、好きな人の一番でいたいんだから』

優一の言った事なので、あまり気にするつもりは無かったが、なんだかそんな気がしてきてしまった。

「さ、紗彌……今日は家寄っていくか?」

「ご、ごめん……今日は真っ直ぐ帰るわ……」

「そ、そっか…」

本當は行きたかった。

高志の部屋には、チャコがいる。

紗彌が現狀のライバルだと思っている子貓がいる。

本當なら、昨日のリベンジでチャコから高志を取り返したい。

しかし、紗彌は決めたのだ、今日はグッ我慢しようと。

「じゃ、じゃあ……」

「う、うん……また明日…」

紗彌と高志はお互い気まずい狀況のまま分かれた。

高志は、チャコの事で紗彌を怒らせてしまったと思い。

紗彌は、甘えすぎている自分を変えようと思い。

それぞれ自宅に帰宅する。

「ただいま~」

「にゃー」

「チャコ、ただいま」

玄関を開けた高志を迎えたのは、チャコだった。

チャコは二階から、一回の玄関に向かって駆け下りてきて、高志の足にりつける。

「チャコ、俺さー紗彌を怒らせたかも……」

「にゃーにゃー」

「え? 喧嘩したの?」

「母さん、音も無く背後に立つのやめてくれよ……」

チャコを抱きかかえながら、チャコに話し掛けていると、後ろから高志の母親が高志に尋ねて來る。

「あんた、紗彌ちゃんと喧嘩したの!? さっさと土下座して謝って來なさい!」

「余計なお世話だよ! 全く……」

高志は母親にそう言い、チャコを抱いて自室に戻って行く。

「ゴロゴロ……」

「チャコ……紗彌、お前ににヤキモチ焼いたのかなぁ……」

膝の上でを鳴らすチャコに、高志はそう尋ねる。

返事が帰ってくる訳でも無いが、なんとなくチャコに語りかけてしまう高志。

紗彌の格上、にヤキモチを焼くなんて思えない高志だったが、それ以外に、今日の紗彌の態度を説明出來ない。

「連絡……してみるか……」

「にゃ!」

「お前もそれが良いと思うか?」

「シャー!!」

「なんで怒ってんだ?」

何故かスマホに威嚇を開始するチャコ、そんなチャコの頭をでてなだめながら、高志は紗彌にメインでメッセージを送る。

一方の紗彌は、家に帰った瞬間、すぐに自室に向かい、ベッドに倒れ込んでいた。

「あぁ……辛い……」

高志に甘える事が出來ず、紗彌は寂しさをじていた。

かろうじて手を握れたが、紗彌はそれだけでは足りない。

「今週末も行きたかったなぁ……」

デートにもってくれたのに、斷ってしまった紗彌。

これでいいのか、ずっと考えていた。

今までは押しまくってばかりだったから、引くという事をしてみた紗彌。

しかし、それは必要だったのだろうか?

「なんか……今日は積極的だったなぁ……高志」

自分から手を握ろうと言ったり、デートにって來たりと、今日の高志は紗彌に対して積極的だった。

心配する必要など無かったのでは無いかと思うほどに。

「……電話くらいなら……」

紗彌がそう思っていた時だった、紗彌のスマホが震え、ディスプレイにメッセージの信を伝える通知が表示される。

「高志!!」

相手が高志と気がつき、紗彌はベッドから勢いよく起き上がり、スマホを見る。

高志からのメッセージにはこう書かれていた。

『もしかして、怒ってる?』

そのメッセージに、紗彌はすぐさま返事を打つ。

『怒ってないよ、どうして?』

返事はすぐに帰ってきた。

高志にしては珍しいほどに。

『今日、手も紗彌から繋いで來なかったし、なんか表もいつもと違ったから、怒ってるのかと思って…』

紗彌は逆に高志が怒っていないか心配だった。

今日の自分の態度や、今まで甘えすぎで、想を盡かしているのでは無いかと心配になった。

紗彌は思わず、高志にこう返していた。

『今から會える?』

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