《甘え上手な彼》♯24
そんな高志達の會話を子生徒は、おどおどしながら見ていた。
こういう場面に、自分は居ない方が良いと思い、そーっと高志はその場から離れようとする。
「ちょっ! お前、何処行くんだよ!」
「いや、俺完全に邪魔だし、帰ろうかと……」
「え! 俺この狀況で置いて行かれるの!?」
「この子も困ってるし、俺は居ないほうが……」
「いえ! ここまで來たら居て下さい! 流石にここで二人はキツいので!!」
「えぇ……」
まさかの子生徒からもこの場に殘るように言われてしまった。
高志は非常に不本意だったが、その場に殘り、名前も知らない子生徒と優一の告白劇を見せられる事になった。
「えっと……手紙……読んでもらえましたか?」
「えっと……読んだけど……名前も無かったし……悪戯かと…」
「す、すすいません! な、何を書けば良いか……わからなくなってしまって……」
敬語のところを見ると、恐らく一年生なのだろう。
顔を真っ赤にしながら、優一をチラチラ見ている。
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(俺…居る意味ある?)
そんな事を考えながら、高志は二人を見ていた。
こんな事なら、普通に紗彌と帰れば良かったと考えていると、高志のスマホが鳴った。
どうやら紗彌からのメッセージのようだった。
『チャコちゃん、天使になっちゃった』
メッセージにはそう書かれており、一緒に畫像が添付されていた。
その畫像を見て高志は、より一層帰りたくなった。
寫真には、天使の羽を付けた貓用の服を著ているチャコと、紗彌がツーショットで寫っていた。
(やべー。超可い……)
高志はそっと、添付された寫真を保存し、壁紙に設定する。
その間も、優一と子生徒の會話はは進まず、二人でチラチラ互いを見ているだけだった。
「……あのさ……帰っていい?」
「な、何言ってんだよ! まだいろって!」
「そ、そうですよ! このままだったら気まずくて、何も話さないまま終わっちゃいます!」
じゃあ、君はどうやって告白する気だったの?
と逆に問いたくなった高志だったが、グッと堪えて、子生徒に尋ねる。
「えっと……じゃあ、君はこいつの事が好きって事で良いの?」
「そ、そんな……は、恥ずかしくて言えません!」
(面倒くさいな……)
「えっと……優一、お前はこの子をどう思ってんだ?」
「そ、そんなん、お前がいる前で言える訳ないだろ!!」
(じゃあ俺にどうしろと?)
面倒くさい二人に、高志は溜息を吐き、肩を落とす。
すると、騒ぎに気がついたのか、育館裏に居た、高志の偽ラブレターの差出人の男子生徒達が、こちらの方にやってきた。
「あ! 八重!! お前、なんでいつまで経っても來ないんだよ!!」
「いや、罠だとわかったら、誰も來ないと思うけど……」
「お前のせいで俺たちの青春は終わっちまったんだよ! 一発毆らせろ!!」
「理不盡すぎるだろ……なんでも良いが、ちょっと今はやめてくれ、取り込み中だ」
「あん? お前、優一じゃねーか!! お前の噂のせいでこっちは迷してんだぞ!」
「うるせー馬鹿共!! 俺は今人生の絶頂に居るんだ! さっさと帰れ!」
後ろから來た男子生徒三人に難癖をつけられる高志と優一。
特に優一は、告白の邪魔をされ、現在ものすごく機嫌が悪い。
「お、おい…お前ら帰って方がいいぞ? 優一は……」
「うるせー!! こっちはお前にむかついてんだよ!! 宮岡と付き合えたからって、いい気になりやがって!!」
男子三人組のうちの一人が、ついにしびれを切らして毆りかかって來た。
しかし、その拳が屆く前に、男子生徒の拳は優一によって止められた。
「さっさと帰れって……言ったよな?」
「んだこの野郎! まずは優一、お前から!!」
そう言って男子生徒が、優一を毆ろうとした瞬間、男子生徒は地面にたたき落とされていた。
「あぁ……忠告したのに……」
高志はその様子を見ながら、頭を押さえて言う。
「な、なんだ……優一がやったのか?」
「ば、ばか! あいつが転んだだけだろ!」
そうではない事を高志は知っていた。
そして、高志は優一に向かってぶ。
「優一! やめとけ!」
「うせっせぇぇ!! 散々振り回しやがって……ぶっ飛ばす!」
「あぁ……スイッチっちゃったか……君」
「は、はい?!」
「優一が好きなら見ない方が良いよ、あいつこれから鬼になるから」
「?」
高志はアタフタしながら、狀況をみる子生徒に言う。
そう言っている間に、優一は男子生徒三人に向かって行く。
「おらぁ行くぞこらぁ!!」
「ぐぁ!」
「あうふ!!」
優一は元不良であり、中學時代は喧嘩に明け暮れる一匹狼だった。
しかし、中學時代のある日、優一は不良をやめた。
今でもたまに、頭にが上ると手をだしてしまうが、昔ほどでは無い。
高志はそのことを知っているため、男生徒三人に忠告したのだ。
「たく……俺を怒らせんな、また喧嘩しちまった……」
「ホントだっての全く……告白の最中で三人ボコるなんて、あり得ないって」
「大、三対一で高志を殺ろうとした事が気にくわねぇ!」
「優一……」
なんだかんだで、自分の事を心配してくれていた優一に、高志はを覚えた。
「やるんだったら、あと十人は連れて來て、徹底的にやれって話しだ!」
「優一、俺、お前と友達やめたくなった」
この二人が何故今のような仲になったのかは、また別の話。
しかし、狀況は悪化していた。
告白の途中で、暴力的な姿を見せてしまった優一。
當然、子生徒からは嫌われたと思った。
「えっと……悪い……その……俺はこういう奴なんだわ…」
俯き、フルフルと肩を振るわせる子生徒に優一は謝罪する。
折角念願の彼が出來るチャンスを自分で潰してしまった。
優一は、溜息を吐き、子生徒の橫を通りすぎようとする。
しかし__。
「ま、まって下さい!!」
「え?」
子生徒は過ぎ去ろうとする優一の手を摑んだ。
優一も子生徒の咄嗟の行に驚く。
「や、やっぱり貴方だったんですね!!」
「な、何が?」
優一は戸いながら、子生徒に尋ねる。
「學する前……駅前で絡まれていた私を貴方が助けてくれて……」
「學する前? いつの話しだ?」
「今年の三月です!」
「三月……あ……」
優一はし考えて、何かを思い出した様子だった。
そして、話しを聞いていた高志も思い出し、子生徒に尋ねる。
「もしかして、駅前で柄の悪いのに絡まれてた子?」
「はい! その節はありがとうございました!」
「あぁ……あの子か」
なんとなく高志は、彼が優一に惚れた理由がわかって來た。
そして、彼は優一に決定的な一言を言う。
「その……せ、せんぴゃい!」
(噛んだ……)
(噛んだ……でも可い!)
子生徒の様子をぼーっと見つめる高志と、頬を赤く染めながら見つめる優一。
すこし間があった後、彼は優一に言った。
「す、好きです! 付き合って下さい!」
優一にとっての人生初の告白、高志と子生徒は優一の答えに注目した。
そんな中、優一は子生徒に答える。
「か、考えさせて下さい……」
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