《草食系男子が食系子に食べられるまで TRUE END》後編 草食系とお嬢様8

雄介が屋敷を出て自宅に帰宅したのは、お晝をし過ぎたあたりだった。

「ただいま…」

獨り言のように玄関でぽつりとつぶやく雄介。そこである違和に気が付いた。

「紗子さん?」

家に人の気配が無いのだ、確かに數時間前に紗子はこの家で珍しく家事をしていたはずだった、しかし帰ってみると誰もいない。里奈は生徒會の仕事があるらしく、今日もまだ學校なので、家には紗子しかいないはずだった。

「カギは開いてたよな……」

いくら紗子でも、誰もいない家にカギを掛けないで出かけるなんて事をするほど抜けてはいない。 雄介は急に嫌な予がした。

「紗子さーん!」

雄介は聲を出して家中を調べ始めた。どんどん嫌なじがしてくる。つい先日も雄介の両親の敵である、「滝沢絵里」らしき人をショッピングモールで見かけたばかりだった。雄介はその事もあり、最近は常に周りに気を配っていたはずだった。

「本當に居ない……」

まさかあのに、なんて考えも雄介の頭の中に湧いてきたが、その予想はうれしい事に外れた。

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「雄介? どうかした?」

紗子は二階から一階へ降りてくる途中で、雄介に聲を掛けた。その耳にはイヤホンがついていて、そのせいで雄介の聲が聞こえなかったのであろう。

「紗子さん、一どこに?」

「あぁ、洗濯を干すのに二階に上がってたのよ。イヤホンして音楽聞いてたから気づかなかったわ。早かったのね?」

優しい笑顔をで話をする紗子の様子に、雄介は安心を覚えて、肩の力を抜いた。 雄介はその時、強く思った。またあのに大切なものが壊されないようにと、なんとしてもこの平穏を守りたいと……。そして雄介は言おうか言うまいか悩んでいたことを紗子に打ち明ける事にした。

「紗子さん」

「ん~? どうかしたの?」

それは……

「この前、滝沢絵里を見かけました……」

雄介の家族の敵であり、雄介からすべてを奪った殺人鬼がこの町に居るかもしれないという事を……。

「……そう」

紗子は短くそういったが、揺している事が、雄介にはわかっていた。そして雄介はリビングで詳しく紗子に話をした。

「で、どこで見かけたの?」

「この前、遊びに行ったショッピングモールで……」

雄介は事の経緯を簡単に紗子に説明した。説明を聞く間も紗子の表は変わらず、無表のままだった。

「本人だったの?」

「はい、あの顔は忘れません。いえ、忘れたくても脳に焼き付いて離れません」

なぜこんな話をしたのか、雄介には考えがあった。それと同時に、自分なりの決意を雄介は紗子に話すつもりでもあった。

「紗子さん、俺は近いうちにこの家を出ようと考えています」

「……」

何も言わない紗子。雄介は言葉を続ける。

「もちろん今すぐにとはいきません。でも、あのがこの町にいる以上。紗子さんや里奈さんに迷がかかるかもしれない。だから……」

「だから出てくの?」

「はい、もう……失う辛さを味わいたくないんです……」

沈黙がその場を包む。やがて、紗子は立ち上がり、雄介を抱きしめるように隣に座る。

「そんなの貴方を家族に迎えた時から覚悟はできてるわ。だから、そんな寂しい事言わないで、家族でしょ?」

「でも! 俺と居たら危険かもしれないんですよ?」

「家族が危険なら、それを何とかするのは家族の役目。里奈だって、お父さんだって同じ気持ちだと思うわ。だから、貴方はここに居なさい……」

雄介は言葉が出てこなかった。なんでこのタイミングで、この事を言ったのか、それは家に帰っているはずの人間が、居ない時の怖さを、先ほど思い出したからだ。 この人達を失いたくない、この人達に生きていてしい。雄介は強くそう願っていた。だからこそ、あのが…滝沢絵里がこの町に現れた時に雄介はずっとこのことを考えていたのだ。

「紗子さん……俺は!」

「分かってる、私たちに迷を掛けたくないと思ってるんでしょ? でもいいのよ。家族なんだから、迷だって共有出來るわ……」

紗子さんの言葉が、雄介の心には強く響いていた。雄介は家族を失っている。だからこそ家族の大切さは誰よりもわかっている。だからこそ、危険な目に合わせたくないのだ。

「それに、あたしがそれを許しても、里奈がそれを許さないと思うわよ?」

「あははは……そうでした」

苦笑いをしつつ里奈の事を思い浮かべる雄介。雄介は、里奈だったら自分を縄で縛ってでもこの家に留めておきそうだと考え、苦笑いを浮かべる。

「それに、警察だってバカじゃないわ。何か対策だってしてくれる。雄介はいつも通り生活してなさい。良いお友達もたくさんできたんでしょ?」

「……はい」

「後、くれぐれも敵打ちなんて考えないのよ……私はそっちが心配……」

「大丈夫ですよ。もう、昔みたいに子供じゃないですから……」

雄介はそこで紗子に噓をついた。本當ならこんな噓はつきたくない雄介だったが、こればっかりは譲れなかった。 その日は、紗子の最後の休みであった。雄介はそれを狙ってこの話をした。明日の朝には仕事に復帰するらしく、その晩は家族三人で晩飯を食べ、すぐに就寢した。 そして、翌朝。雄介も里奈も學校があるので、早めに起き紗子の見送りをする。

「雄介、里奈に気をつけなさい」

「どういう意味よ!」

「気をつけます……」

「ユウ君まで!!」

玄関先で言葉をわす三人。また何か月も會えないとなると、なんだかんだで寂しい。なので三人は毎回こうして玄関先で話をする。

「あと、の事もゆっくりで良いから治しなさい…。織姫ちゃんの事もお願いね」

「はい、わかりました」

「里奈もあんまり雄介に、迷かけるんじゃないわよ?」

「迷なんてかけてないわよ。次に會った時にはユウ君は私の彼氏になってるかもね!」

「じゃあ、行ってくるわ」

「はい、お気をつけて」

「ちょっと! 何スルーしてるのよ!!」

紗子はそのまま迎えの車に乗って仕事に戻っていった。騒がしかったが、なんだかんだで紗子が家にいた方が楽しいとじた雄介。今は紗子の……母の居ない家に寂しさをじていた。

「ユウ君、寂しい?」

「良くわかりますね、正直言うとそうです……」

まるで友達が引っ越してしまうような、楽しかった日々が終わってしまったかのような寂しさをじる雄介。 そんな雄介に里奈は両腕を広げてこういった。

「寂しいならお姉ちゃんのないても良いのよ!! ハァ…ハァ…」

「紗子さぁぁぁん! 戻ってきて!! ここに猛獣が! もとい変態がいるぅぅぅぅ!!!」

紗子が居たおかげで、里奈の過剰なスキンシップが最近自重されていたのだが、紗子の居なくなった今、里奈はに飢えた猛獣のような目で、雄介を狙っていた。

「ユウ君! 今日はお姉ちゃんとお風呂りましょう! そして寢ましょう! まぁ、多分朝まで眠れないと思うけど……」

「何をする気ですか! マジで紗子さん帰って來てぇぇぇぇ!!!」

雄介の悲痛なびが家中に響いた。

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