《草食系男子が食系子に食べられるまで》第1章 草食系と食系

の日差しがジリジリと頭をやき、からは汗が流れ落ちる。 もう夏も終わりの9月だというのにまだまだ猛暑日が続く。 アスファルトの道を歩いて今村イマムラ 雄介ユウスケは學校へと向かっていた。

「あっち~」

新學期が始まって5日が過ぎようとしていた今日も、雄介は重い足を學校に向けて歩いていた。 周りには同じ様に學生服を著て登校する生徒がチラホラ見えた。みんなYシャツの襟を持ってパタパタしたりして、しでもを冷やそうとしている。

「なんでこんな暑いんだよ~」

獨り言をつぶやきながら、目の前の校門まで歩いていた。みんなダルそうにしながら、校門をくぐり校へと吸い込まれるようにっていく。 そんな中に一人だけ、涼しそうな顔で歩いて行く子生徒が一人いた。

同じクラスの加山優子カヤマユウコだった。長い茶の髪をなびかせながら、キビキビと歩いて行く、男子生徒はその姿に目が釘付けになる。それもそのはず、スタイルも良く格も明るくていつも元気で、何よりテレビの畫面から飛び出してきたかのような、とびっきりのだった。

この學校で彼の事を知らない人はいないであろう。學當初からその注目を集め、告白された回數はすでに二桁を超えているという。

が登校してきた瞬間、背中を丸めていた男子生徒たちは背筋をばして彼を目で追っていた。彼が登校しただけで男子生徒はこうなる、さっきまでのあのだらしない歩き方は何だったんだと言うほどに、今は軽快な足取りで昇降口に向かっている。

しかし、彼が目の前を通っても雄介は別に何の反応も示さない。

「相変わらずだな~、加山」

雄介は背中を丸めダルそうな表を浮かべながら彼を見送る。

「早く行こう……」

雄介は重い足を無理やりかして教室に向かった。

教室にり席に著く、雄介の席の前には人だかりが出來ていた。學當初からこの人だかりは日常的に続いている、その中心にはいつも加山がいる。

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不幸か幸運か、雄介の前の席は加山の席で、休み時間や晝休みには何人もの人が席に集まってくるのだ。

後ろの席の雄介には、迷以外の何でもなかった。今日も朝から加山の席では、加山と仲良くなろうと闘する男子生徒や、彼と仲良くなって加山にくっついてくる男の中から彼氏をゲットしようとする子生徒が加山の周りに集まっていた。

「優子、今日暇? みんなでカラオケ行こうよ」

「ごめんね、今日は用事あるんだ~、また今度って」

いつものように加山は遊びにわれていた。毎日毎日われて迷ではないのだろうか? そんな事を考えながら、雄介はバックから教科書を出して整理し始める。

「うーす、雄介」

教科書の整理をしていると、友人の山本慎ヤマモトシンが聲をかけてきた。慎と雄介は、中學時代からの友人であり、學校でも大抵は一緒にいた。 容姿は整っており、いわゆるイケメンだった。良く告白などをけているのだが、一度も告白に対して、首を縦に振った事はなかった。

「慎か、おはよう」

「毎回すごいな、お前の前の席」

「俺からしたら迷だよ」

「でも良いじゃないか、加山の後ろの席だぜ。誰だってうらやましがる」

「俺は別に加山が好きなわけじゃない。憧れてもいないからな、ただ迷だよ」

「本當にお前ってそう言うの興味無いのな…」

「分かってるなら言うなよ」

慎の言うと通り、雄介は子にあまり興味が無いし、あまり好き好んで接しようとしない。俗にいう草食系男子であった。それも普通よりもしばかり重傷なほどに、とかかわりを持とうとしない。なので友達なんてものはできたこともなかった。

「それよりも今日もバッティングセンター行こうぜ。ホームラン賞が変わったんだよ」

「前回は確か、店長のお手製Tシャツだったよな……。今回もロクなもんじゃねーよ」

「どうせ暇だろ?」

「わかったよ。どうせ無理やりでも連れていくんだろ?」

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雄介はため息をつきながら、慎のいを了承する。

そんな話をしているうちに、チャイムが鳴り擔任である、石崎勇吾イシザキユウゴが教室にってきた。

「お前ら席付け~。ホームルーム始めるぞー」

石崎がそう言うと、俺の前の席に出來ていた人だかりは無くなり、みんな自分の席や教室に戻っていった。

「んじゃあ、放課後開けとけよ」

「分かったよ」

慎も雄介の席を離れて、自分の席へと戻っていく。

帰るのが今日も遅くなりそうだ、そう思いながら雄介は外をぼーっと見つめていた。外を見つめていると、ふと前の方から視線をじて、雄介は前を向く。 石崎にぼーっとしてるのがバレたと思ったが、石崎は黒板に何かを書いていて、こちらなど見ていなかった。

代わりに前の席の加山が、なぜか機に突っ伏していた。合でも悪いのだろうか、そう思いながら雄介は、黒板の方に向き直った。

*

時間は経って、現在は放課後。雄介は帰る仕度をしていた。

「雄介、行こうぜ」

「あぁ、そうだな」

 準備をしていると、帰り仕度をすませた慎が席にやってきた。雄介も急いで準備をして、席を立った。

「あれ? 加山がもういないなんて珍しいな」

雄介の前の席を見ながら慎が言った。雄介も前の方を見る、いつもなら放課後も何人かの生徒に囲まれているはずなのだが、今日は早々と帰宅したようだった。

「用事でもあったんだろ、そんな事より行こうぜ」

「それもそうだな」

雄介と慎は教室を後にして、そのままバッティングセンターに向かった。

時刻は19時を回っていた、雄介はバッティングセンターで慎と別れて、今は一人で帰宅していた。まだ9月という事もあり日は高く、周囲は明るかった。

夕日がきれいに住宅がを照らし、周囲はオレンジが一面に広がっていた。そのまま住宅街を歩いて、雄介は自宅を目指す。

ようやく自宅が見えるところまで到著した雄介は、早く家に帰りシャワーを浴びたいと考えながら、し急ぎ足で足を進める。

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すると家の前に誰かが立っていた。夕日の逆で、シルエットしかわからないが、長い髪のから、であることが確認できた。

「うちに何か用ですか?」

雄介が尋ねると、はこちらを向いた。 そこにはなぜかはわからないが、加山が立っていた。

「あ、今村君」

「なにかよう?」

雄介は疑問だった、學してから加山と話したことは、ほぼ無いに等しかった。それもそうだ、あっちは子や男子に人気のあるクラスの人気者。 雄介は普通のクラスメイト、しかも子が苦手で子とは好んで會話なんかしない地味な男子生徒。 だからこそ、雄介はこの狀況が不思議だった。

「うん、ちょっと今村君に話があって」

「話? すぐ終わるか? この後夕飯作らなきゃいけないんだ。長くなるんだったら明日學校で頼む」

「大丈夫。一言だけだから!」

とびっきりの笑顔で雄介に話してくる加山。雄介は何を言われるのか想像もつかなかった、自分が加山に対して何かしてしまったかを雄介は考えていた。

「んで、俺なんかした?」

「何もしてないよ、私が言いたい事あるだけだから」

「なんだ?」

「うん。あのね……」

そういうと加山は一歩、また一歩と俺の方に歩みよってきて、ついにはお互いの距離は10センチにも満たないところにまできてしまった。

「加山……ち……近いんだが」

「今村君って付き合ってるひと、いないよね?」

「いないけど………と……取りあえず……離れてくれ」

変な汗が出てきてしまう。雄介は平常心を保とうと、いろいろなところをキョロキョロし始める。

「私、今村君の事好きなんだよね~」

小悪魔のように笑いながら、更に顔を近づけてくる。その顔は、いつもの彼の顔ではなかった。 雄介は危機をじて、加山を引きはがした。

「待て、急展開すぎる! 狀況がさっぱりわからん!!」

「ん? だから、私が雄介に告白してるの。大丈夫?」

「大丈夫じゃない! 意味がわからん! て言うか、いきなり呼び捨てか!!」

 雄介は急なことで混していた、ただでさえ暑いのに、さらに暑くなってしまう。

「だから、私が………」

「それはいい! なんで俺なんだ! 今まで接點なんてなかっただろ?!」

そう言うと、彼はまた小悪魔のような笑みを浮かべながら、耳元で雄介に囁くように言った。

「忘れちゃったの?あ・の・こ・と」

「?!?!?!!」

 雄介はパニックになり、加山から距離をおいた。

「お………俺とお前の間には、何もないだろ! あの事ってなんだよ?!」

「えー、忘れちゃったの~。私の事をこんなにさせたくせに~」

「何もしてねーだろ! そもそも俺は、子が苦手だから、好んで関わりを持とうとした覚えなんてない!」

「まぁ、あの事はゆっくり思い出して貰えればいいか………。とりあえず、付き合ってくれる?」

そう言いながら加山は再度、雄介の元にしづつ近付いていく。

「悪いが、俺は加山とは付き合えない!」

そう言うと加山は足を止めて、戸いの表を浮かべる。

「え………私………じゃダメ? な………なんで?」

「加山の気持ちは嬉しいけど、俺はが苦手って言うか、し怖いんだ……。だから、付き合うとかはちょっと………」

 加山は俯いてしまった。雄介はどうしたら良いかわからず、一人でアタフタしていた。

「いや………でも、加山ってモテるじゃん。俺じゃなくても、相手なんていっぱい居るんじゃ………」

フォローをするが、俯いたまま加山は顔を上げない。

「そんな理由で振られたの? ………私」

 加山は俯きながら、靜かに話し始めた。

「俺にとっては、重要なんだ………なんか悪い」

 雄介は申し訳なさそうに加山に言うと、家の中にって行こうと、加山の橫を通ろうとする。しかし、加山に腕を摑まれてしまい、家にる事は葉わなかった。

「ど………どうした? 加山?」

「…………まだ諦めてない………」

「へ?」

「まだ諦めてないって言ってるの!!」

 顔を上げて、し聲を荒げて言う加山。雄介は、いつもの加山では考えられない言や行に驚きながら、ただ黙っているしかなかった。

「な………なに……が?」

「私って、結構モテる自覚はあるんだよ?」

「それが………なにか?」

「あんな理由で斷られるのは、私的には納得できないよ!」

雄介の腕を摑んで離さない加山。雄介は早く家にりたいと考えながら、彼の話を聞いていた。

「だから、俺はがどうしてもだめなんだよ。俺もこのままじゃいけないと思ってるけど、今はとにかく無理なんだ」

「じゃあその嫌いがなくなれば、私と付き合ってくれる?」

上目遣いで雄介に尋ねてくる加山。

「ま………まぁ、そうだけど」

しながら、思わず加山の言ったことを認めてしまった雄介。それを聞いた加山は、またしても小悪魔のようにニヤリと笑い、雄介に詰め寄る。

「じゃあ、雄介の嫌いを治してあげる。それならいいでしょ?」

「はぁ!? いきなり何を!」

「それと同時に私の事を好きにさせて見せるわ!」

「まてまて、俺の嫌いが治る保証はないんだぞ! それに、一どうやって治すんだよ」

自信たっぷりに言ってくる加山に、雄介が言った。雄介自信も何回かそういう努力はしてきた、しかしすべてが失敗だった。雄介自も諦めかけていた。

「どうするって………こうするの!」

「うわっ!」

雄介に勢いよく抱き付く加山、抱き付かれた雄介は困して、きが取れなくなってしまった。

「うふふ、こういう事をしていれば、いつかは嫌いもなくなるでしょ?」

嬉しそうにいう加山、しかし雄介からの返事はなかった。

「嬉しくて聲も出ない? そうだよね~、あんまりの子からこんな事しないよ~」

嬉しそうに笑いながら再度、雄介に耳元でいう加山。しかし、またしても雄介からの返答はない。

「ねぇ~、聞いてる?」

そう言いながら、いったん雄介から離れ、雄介の様子を確認する加山。

「気絶してる……」

あまりのショックで立ったまま気絶していた。

*

夢を見ていた。ずっと昔の夢だった、まだ雄介があの家にいた時の夢だった。

いやだ、痛い、やめて。

夢の中の雄介はあるに向かってそうびながら、泣いていた。 なぜだろうかが重い、全が金縛りにあっているようだった。

「…………!」

誰かが呼んでいる、雄介は呼ばれた方を振り向くが誰もいない。

「…………!」

誰かが俺を読んでいる、起きなくては。そう思った瞬間、雄介は目が覚めた。

「あ、ユウ君起きた?」

「何やってるんですか? 里奈さん」

雄介はソファーの上に寢かされていた。その上にはが一人、覆いかぶさるようにして、雄介を見下ろしていた。

「離れてくれませんか? 里奈さん」

「兄弟なんだから気にしない気にしない~。それより、心配したんだよ~」

雄介の上に乗っているの名前は今村里奈イマムラリナ、雄介と同じ高校の2年生で、雄介の義理の姉である。

「そういえば俺、加山に抱き付かれて………」

「そうだよ、その子が家に運んでくれたんだよ~。謝しなきゃね~」

「元々あいつのせいなんだけど………。で、加山は?」

「あそこだよ~」

里奈の指さす方向には、椅子に座って麥茶を飲んでいる加山がいた。

「ごめんね、雄介。やりすぎちゃって………」

申し訳なさそうに言う加山、反省はしているようだった。

「まぁ………いいけど。てか、まだ居たの………」

「そんな言い方酷いよ! 心配したのに………」

「元兇は加山だろ………」

「うっ………まぁ、そうだけど………」

「まぁなんでも良いんだけど、ユウ君? この子誰?」

加山と雄介の話を聞いていた里奈が割ってってきた。笑顔を浮かべながら話してはいるが、目は笑ってはいなかった。

「いや、里奈さん。加山はただのクラス………」

「彼です!」

「おい!」

雄介の言葉をさえぎって加山がいった。その意外な言葉に、雄介は思わずんだ。

「なに言ってんだよ!」

「だって、いつかは彼になるんだし~」

「ならねーよ! 斷っただろ!」

「だから、私は諦めてないんだって」

「だから、無理なんだって!言っただろ………」

加山と雄介が言い爭い始める、その様子を靜かに見つめる里奈。

「へーそうなんだ………」

「里奈さん違うから、里奈さんだって知ってるでしょ? 俺がの人とかダメなの」

「うん、知ってるよ~。安心して、その子の冗談だってわかってるから」

ニコニコしながら雄介に話す里奈。その言葉を聞いて安心した雄介は、息を吐いてし笑顔になる。

「冗談なんかじゃないです! 本気です! 私は雄介の事、本気で好きなんです!」

あまりにもストレートな一言に思わず赤面してしまう雄介。心では思わずしドキッとしてしまった雄介。

「う~ん、加山さんだっけ? そう言っても、ユウ君が付き合えないって、言ってるんだよ~? ここは大人しくを引かないと」

「大丈夫です! 絶対に落とします!」

「崖に?」

「なんでだよ!」

里奈の一言に、思わず突っ込む雄介。雄介の話であるはずなのに、當の本人は蚊帳の外で、二人は話を進める。

我慢が出來ず、雄介が無理やり加山に話を切り出した。

「加山、本當に気持ちは嬉しいよ。でも、俺は………」

「待ってユウ君、その続きは私が言うわ。その方が信憑も高いでしょ?」

「里奈さん………」

雄介の言葉をさえぎって、真面目な顔で里奈が會話にってくる。 し天然ぽい所もあるが、いざっていう時には頼りになる姉だ。雄介はそう思っていた。

里奈は學校でも副生徒會長を務めたり、茶道部でも部長をしていた責任のある人であった。俺が説明するよりも上手く説明ができると雄介自思っていた。

「加山さん。つまりね………」

「な………何ですか?」

先ほどとは違い、真面目な雰囲気の里奈に加山はしたじろいでしまう。

「………ユウ君はね、お姉ちゃんと結婚するから、あなたとは付き合えないって言ってるのよ」

「は?」

「へ?」

思わず変な聲が出てしまった加山と雄介。

「り………里奈さん! なに言ってるんですか!!」

「恥ずかしがらなくて良いのよ~。お姉ちゃんも恥ずかしいけど、本當の事言わないと~」

雄介を自分の元に抱き寄せながら里奈は続ける。

「そもそも姉弟なんだから無理です!」

「大丈夫よ~。縁関係が無ければ、姉弟でも結婚はできるのよ」

雄介は里奈を引きはがそうとするが離れない。里奈ががっちりとホールドしているため、し苦しいくらいに雄介は思っていた。

「そもそも俺は里奈さんとは結婚しません!」

ガーンと言う効果音でも流そうなくらいにわかりやすく、ガッカリとした表を見せる里奈。 あまりの衝撃だったのか腕の力が緩み、その隙に雄介は里奈の元から出した。

「な………なんで? お姉ちゃんの事大好きって、言ってたじゃない!?」

「何年前の話ですか!!」

「いつも朝起こしてくれるじゃない!」

「そうしないと、里奈さんが遅刻するからです!」

「いつも朝晝晩、ご飯作ってくれるじゃない!」

「二人で暮らしていて、里奈さんが料理が出來ないからです」

「一緒に買い行くじゃない!」

「家族だからです」

「一緒に旅行に行くじゃない!」

「家族だからです。それに母さんと父さんもいます」

「毎日一緒にお風呂にるじゃない!」

「家族だ…………前提としてってません!!」

里奈の言うことをすべて否定する雄介。結婚したいなんて、小學生の時にいった、半分冗談のようなものだと雄介は思っていたが、里奈は本気だったらしい。

「一緒に………オ………お風呂………」

「加山! 違うぞ!」

半分空気になっていた加山がボソッと言った一言に、雄介は間髪れずに否定する。

「そんなぁ~、お姉ちゃんはユウ君の事こんなに好きなのに~」

「だから、俺たちは兄弟で………」

「お姉さんも振られてるじゃないですか!! だったら大丈夫だよね? 雄介?」

里奈と加山に挾まれながら、半分雄介の取り合いのようになってしまった現在の狀況。

自分の事を諦めさせるために里奈に頼んだが、間違いだった事に雄介はいまさら気づいた。なぜなら、雄介は里奈が自分の事を溺していることを知っていたからだ。

そんな弟にの匂いがあれば、何をしでかすかわからない事くらいわかっていたはずだった。しかし、それ以上に狀況が切迫していてそのことが頭に浮かばなかった。

雄介は自分の頭の悪さを呪った。

「余計めんどくさくなったな………」

「これで、私の告白を斷る理由はなくなったわね」

「加山………お前は何を聞いていたんだ」

「だって、お姉さんと結婚するから私とは結婚できないんでしょ?」

「加山………お前なぁ………」

「なに? 付き合ってくれるの!」

雄介は加山は殘念な奴なんだと思いながら、再度説明を始めた。

「あのな、俺はある理由でが苦手なんだ。さっきもお前が抱き付いた時に気絶下だろ? あんなじで、れられたりすると俺のは拒否反応を起こしちまうんだ。だから付き合うのは無理なんだ」

「でも、さっきお姉さんに抱き付かれても平気だったじゃない」

「それは家族だ………」

「お姉ちゃんが大好きだからよ」

「里奈さんちょっと黙って!」

雄介の言葉を毎回さえぎって掻き消してくる里奈。現在は、雄介に振られたショックで、涙目である。

「家族は大丈夫なんだよ。でも、ほかは無理なんだよ」

「お姉さんだって、大丈夫なら私だって大丈夫だもん!」

拠がおかしいだろ………」

「そう、だからユウ君はおねえちゃんと結婚するしかないの」

加山と雄介の話に、ショックから立ち直った里奈が參加してきた。

「なんでそうなるんですか………」

「だって、お姉ちゃんが唯一、ユウ君と普通に接することができるなんでしょう? それならお姉ちゃんと結婚するしかないよ!!」

「なんでそうなるんですか! お姉さん! それ以前に雄介とあなたは兄弟なんですよね? そんなの元々結婚なんて世間的に無理です!」

「義理だから大丈夫なの! 加山さんもしつこいよ!」

「なんですって! お姉さんだからって許しませんよ! 雄介は私のです!!」

「お姉ちゃんのよ!!」

雄介を置いて人二人が喧嘩を始めてしまった。雄介はもう勝手にしてくれと言うじで二人を放置して、夕飯を作り始めた。

30分くらいして、ようやく落ち著いたのか、二人とも大人しくなっていた。雄介は食事の準備をいったん止めて、リビングにもどった。

「二人とも落ち著いた?」

「えぇ………だ………大丈夫よ」

「ユウ君、お水ちょうだい………」

「はいはい」

雄介はコップにお水を注いで、二人に渡す。

「んで、加山は諦めてくれたか?」

「諦める? むしろ気合がったわ」

「は?」

加山の意外な一言に呆気にとられる雄介。

「絶対に雄介を私のものにする! の子が苦手だって言うのも克服させて見せる!」

「なかなかのある子じゃない。良いわよ、じゃあ私も全力でユウ君を落としにいくわ!!」

加山と里奈の間で、何やら激しい火花が散っているのを雄介は見たような気がした。

「絶対にお姉さんには負けないわ!」

「私こそ! 今までライバルがいないから、油斷してた分をユウ君にぶつけるわ!」

「あの~、俺の意見は?」

「「そんなのありません!」」

二人の聲が同時に重なる。雄介は、あぁもうだめだ、そう思いながら、ただ立ち盡くしていた。

「今日はもう帰るわ」

「あぁ、気をつけてな……」

加山を送るために雄介も加山と一緒に玄関に向かう。

「雄介。私、本気だから」

「お……おう」

加山の真剣な眼差しに、雄介は押されてしまった。しかし、雄介はこうも考えていた。あれだけ真剣に好きだと言われた手前、もうあっちが飽きるまで付き合ってやるしかないのだろうと。

雄介は加山がドアを閉めて家を出た後に、カギを閉めてリビングに戻った。明日からは家だけが、自分のオアシスになりそうだ、そんな事を考えてリビングに戻る。

「ユウ君、今日はお姉ちゃんとお風呂にりましょう。それから一緒のベットで寢ましょう、今日から毎日」

どうやら雄介のオアシスはどこにもないようだ。

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