《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 中編 草食系とお嬢様
 雄介の調が落ち著き、今は加山と慎、そして雄介の三人で雄介の自宅に向かって歩みを進めていた。沙月は用事が終わってから來るらしく、加山の方に連絡があった。
「楽しみだな~、雄介のお母さま!」
「何がそんなに楽しみなんだか...」
嬉しそうな表で言う加山に雄介はため息じりに言う。そんな二人の會話を慎は楽し気に眺めていた。
「紗子さんっていつまでいるんだよ?」
「あぁ、三日間くらいは休みで家にいるらしい。相変わらず忙しいみたいでな」
「そうなのか。じゃあ、里奈さんも大人しくなんじゃねーのか?」
「逆だよ。いつも以上に騒がしくなって大変だよ」
慎に愚癡をこぼしながら、雄介は昨日の悲慘な慘狀を思い出す。そんな場所にこの二人を連れてきてしまって大丈夫だったのだろうかと、今頃になって雄介は考え始めた。もしかしたら、昨日よりもややこしい事態に発展するんじゃないのだろうかと、心ビクビクしていた。
「お姉さんもいるの?」
考え事をしていた雄介に、加山がジト目で聲をかける。
「そりゃあ、家なんだからいるだろう。あ、でも今日は生徒會があるんだったかな?」
「あの人いると、雄介とイチャイチャできないんだもん」
「いつした、お前と俺がいつイチャイチャした!」
會話をしながら、歩くうちにあっという間に今村家に到著した。ついに來てしまった、雄介はそう考えながら、家に紗子がいないことを祈って自宅のカギを開けた。
「ただいま」
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「お邪魔しまーす」
「雄介の家は久しぶりだな」
雄介に続いて、加山と慎が家の中にっていく。リビングの方からテレビの音が聞こえるところから、紗子が在宅している事がわかり、雄介の願いは打ち砕かれてしまった。
「雄介お帰り。あら、友達?」
リビングの方から、普段著姿の紗子が出迎えにきた。
「お久しぶりです、紗子さん」
「あら、慎君?久しぶりね~。そちらのお嬢さんは....」
紗子は慎を見た後に、加山の方を見て首をかしげる。加山は満面の笑みで紗子に自己紹介を始めた。
「初めまして、雄介君と同じクラスの加山優子と申します!」
「かわいらしいお嬢さんね~。雄介がの子連れてくるなんて初めてじゃない?」
やわらかい笑顔を浮かべている紗子。雄介は、加山が何か変な事を言うと思っていたので、意外と普通の自己紹介をしているのに驚いてしまった。
「まぁ、そうだね。加山は俺のの事を知ってるから、最近仲良くしてるんだ」
「そうだったの?私うれしいわ~、雄介はの子を敬遠しがちだと思ってたから、安心したわ」
「そうなんですか?雄介君には日頃からお世話になっていますよ」
「本當に禮儀正しいお嬢さんね。こんなところじゃなんだから、リビングにいらっしゃい」
加山と紗子の普通の會話に雄介は安心していた。加山も変な事を言う気配がないし、紗子さんの機嫌もよさそうだし、何より一番ややこしい里奈さんが帰宅していない。このまま何もなく終わってしいと願いながら、雄介はリビングに向かった。
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「そこに座ってゆっくりしてて、いまお茶でも出すから」
そういうと紗子は、慎と加山にソファーに座るように促し、キッチンに向かった。
「紗子さん、そんなの俺がやるので、座っててくださいよ」
「たまには母親らしい事をさせなさい、あんたも友達來てるんだから、家事は私に任せなさい」
「でも、せっかくの休みなのに......」
「良いのよ、私がやりたいからやってるのよ。さ、行った行った」
雄介は紗子に背中を押されて、キッチンから追い出されてしまった。そのまま雄介は慎が座っている隣に座り、雑談を始めた。
「お前の母親と久しぶりに會ったけど、相変わらず若いな~」
「あの見た目で高校生の息子と娘がいるなんて思われないだろな......」
「私もビックリしたよ。こんなに若いなんて...」
慎や加山が、紗子についての想を雄介にこっそり話し始める。雄介から見ても紗子は若々しいと思っていた。初めて會った頃から何も変わらない容姿とスタイルで、一緒に出掛けた時なんかは、よく姉と間違われてしまうくらいだった。
「まぁ、あの姉の母親だからな...」
「里奈さんの事か? まぁ、確かに顔だけ見れば人だからな、里奈さんは...」
「フーン...」
「どうした加山?」
「べっつにー」
加山はジト目で雄介を見る。雄介はその視線の意味が分からず、不思議そうに加山を見る。慎はそんな雄介と加山を見てクスクスと笑っている。
「お待たせ、こんなものしかないけど...」
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紗子は紅茶とお菓子をもってキッチンから現れた。
「それにしても、本當に以外ね。雄介がの子連れてくるなんて」
「後でもう二人ほど來ますよ...」
肩を落として、苦笑いで答える雄介。紗子は相変わらずニコニコしながら、そのようすを見ている。
「ずいぶん友達が増えたのね~。私嬉しいわ、雄介は格がこんなのだから、山本君以外に友達なんて居ないんじゃないかって...」
「さらっと酷いこと言うのやめてもらえませんか!?」
「お母さんそんなことありませんよ、雄介はすごくいい人ですから」
加山が雄介のフォローにる。雄介には加山が紗子に気にられようと、いい子を演じているようにしか見えず、すごく変なじがした。
「ホントに良いお嬢さんじゃない、雄介には勿ないわ~」
「紗子さん、勿ないとか言わないでください。そういう関係じゃないですから!」
「あら? そうなの? 私はてっきり彼なのかと思っちゃったわ」
不思議そうな顔で雄介のほうを見て紗子は言った。雄介はやっぱりそういう勘違いをされてしまったか、そう思いながらため息をつき、紗子に説明を始める。
「違いますよ!加山とは...その、いろいろあって......」
「々?なにがあったの?」
紗子は疑問を浮かべながら、雄介を問い詰めるように聞き返す。雄介はどう言って良いのかわからず、「えっと...」と言いながら考え込んでいる。そんな様子を面白く思い、慎は一言いった。
「雄介が加山を振ったんだよなぁ~」
「慎!お前な!!」
「事実だろ~」
「くっ......」
狀況を面白がりながら、慎は笑みを浮かべてそういった。それを聞いた紗子は大きく目を見開いて、加山のほうを見る。
「そうなの?」
「はい、振られちゃってます......」
加山は紗子の質問に対して恥ずかしそうに頬を赤くして答える。それを見た紗子は雄介のほうを向いた。
「雄介、なんでこんな可らしいお嬢さんを振ったの?お母さんに言ってみなさい!」
「なんでそうなるんですか! 紗子さんだって知ってるじゃないですか!! 俺のの事!」
「雄介、まさかそれを理由に斷ったの?」
「そうですよ、當たり前じゃないでか......」
雄介の言葉を聞いた瞬間、紗子は大きくため息をついて正面に向き直った。
「なんて勿ないことを......優子ちゃんはあんたの質のこと知ってるんでしょ? それでも好いてくれてるなら、を克服する良い気會になるでしょう......」
「いや、加山は格に難があって......」
「何言ってるの、こんなに良い子じゃない?」
すっかり紗子は加山の味方に付いてしまった。雄介は、やっぱり加山を家に連れてきたのは大きな失敗だったと悔やんだ。 紗子に加山との一件を説明しつつ、加山となぜ付き合わないのかを雄介が説明していると家のインタフォーンが鳴った。
「あら、お客さんね」
「あ、もしかしたら後から來るって言ってた友達かもしれません。私が出ちゃって大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。私は雄介と話をしなくちゃいけないから」
「だから! 紗子さんの誤解なんですよ!」
もはや自分の家のように振る舞いだす加山。雄介は紗子の誤解を解く為に説明を繰り返すのに必死で加山にまで気が回らなかった。 加山は、思通りといった様子で笑みを浮かべながら、玄関先に向かいドアを開ける。
「遅かったね、さつ......き?」
「あ、お母さんごめん。鍵忘れちゃ......って? なんで?」
加山がドアを開けると、待っていたのは沙月や凜ではなく、今村家の長である里奈だった。里奈も母親が出ると思っていたのか、加山の顔を見て驚きの表を浮かべる。
「また來てたの? 何度も言ってるでしょ? 私がいる限りユウ君は渡さないわよ!」
「いえいえ、大丈夫です。お姉さんの許可が得られなくても、お母様の許可を得られそうですので」
「っ!! ま、まさか!!」
里奈は何かに付き、加山を押しのけて家の中にっていった。加山は余裕の笑みを浮かべながら、その様子を見ていた。 リビングまで來た里奈は、紗子の姿をとらえると傍まで駆け寄る。紗子は紗子で、雄介と加山との一件をまだ話していて、里奈に気が付いていない。紗子よりも先に気が付いたのは雄介だったが、雄介にとってこの狀況は最悪だった。
「お母さん! 優子ちゃんになんか言われたの?!」
「あら?帰ってたの?お帰りなさい、あなたもお菓子でもどう?」
「あ、ありがとう......じゃなくて! ユウ君も! なんでお母さんに優子ちゃんを紹介したの!」
「違いますよ!ただ友達だって言っただけです!でも加山が......」
「あんた知ってた? 意外と雄介モテるみたいよ? 加山ちゃん良い子なのに、なんで告白斷っちゃったのか、勿ない...」
客がいるのもお構いなしで、いつも通りの家族の日常をまざまざと見せつける今村家の人々。慎はそんな三人の姿を見て腹を抱えて笑っている。し遅れてリビングに戻ってきた加山はリビングの様子を見て同じく笑っていた。
「あ、加山ちゃん良いところに戻ってきたわ!まだ雄介の事は好きなの?」
「ちょっ! 紗子さん何言ってるんですか!」
「お母さん! 何言ってるのよ!!」
「どうなの?」
紗子は戻ってきた加山に詰め寄り、そう言った。雄介と里奈は聲を大にして紗子の加山に対する質問に異議を唱えるが、紗子の耳には一切、雄介と里奈の言葉はっていなかった。 慎はその様子を今度は腹を抱えて涙を流しながら傍観している。聞かれた加山は、頬を赤く染めながらこう答えた。
「はい...」
いつもの加山ではなく、どこか恥じらいを見せるような加山の回答に雄介は加山が貓を被っていることを確信した。 加山の回答に紗子はうれしそうな顔で、加山の手を取る。
「加山ちゃん。雄介は不想で面白くない男だけど…」
「あの...紗子さん??」
この時、雄介と里奈は多なりとも嫌な予がしていた。次の瞬間に紗子が雄介と里奈の考えている通りの言葉を言ってしまえば、狀況がかなり面倒臭いことになってくる。雄介も里奈も後悔したが、後悔するのは遅すぎた。
「雄介をよろしくね!」
「紗子さん!!」
「お母さん!!」
予想通りの言葉に大聲で反応する雄介と里奈。最強の味方であったはずの母親が敵になってしまった。このことは雄介にとっても里奈にとっても大きな痛手だった。
「わかりました!任せてください!」
紗子の問いに、加山は自信たっぷりにそう答える。どんなに後悔しても遅いが、雄介はやっぱり合わせるべきではなかったと、數時間前の自分を恨んでいた。
「ちょぉぉっとまったぁぁぁ!!!」
雄介が後悔している隣で、里奈が大聲を上げる。
「何よ、うるさい子ねぇ」
「何とんでも無いこと言ってるのよ!!」
「別に変なこと言ったわけじゃないでしょ?」
「言ってるわよ!そんな親公認にしちゃったら、雄介が一週間以に大人になっちゃうわよ!」
「なんでそんな的に......」
里奈は紗子に食って掛かり、雄介はその様子を肩を落として見ていた。加山は嬉しそうな笑顔を浮かべながら雄介の事を見ている。 雄介はそんな加山をリビングから廊下に連れ出す。
「加山!お前、狀況をややこしくしやがって!!」
「ひどいな~、私はお母さんから聞かれたことに答えただけなのに~」
「そのせいでややこしくなってんだよ!!見ろ!リビングで里奈さんが暴れてんぞ!」
リビングの中では、里奈が紗子さんに向かって何かをびながら暴れている。慎は流石にの危険をじたのか、慎はテーブルの下に避難している。 そんな中、またしても家のチャイムが鳴る。雄介は加山から離れ、玄関のドアを開ける。
「すいません、今立て込んでるので......」
「立て込んでる?」
「えっと、お邪魔でしたか?」
ドアを開けた先に居たのは沙月と凜だった。二人とも制服姿で學校から真っすぐに來たことが伺える。雄介はこの二人が來ることをすっかり忘れていた。それと同時に、この後更に面倒臭い事になるのは容易に想像が出來た。
「すまない、ちょっとややこしい事になってるんだ......」
「どういう事?」
「雄介さん大丈夫ですか?顔が......」
「あぁ、疲れてるだけだよ。気にしないで」
「とにかく、お邪魔するわね」
「あ、沙月さん!」
沙月は、雄介をどかして家の中にっていく。玄関にった瞬間に沙月は加山を発見し、加山も沙月の姿を見て「遅かったね」と一言。 凜も沙月に続き、申し訳なさそうにしながら家の中にる。
「なんで廊下にいるの?」
「ちょっとね。でもお母さまには認められたよ」
沙月はリビングの中を覗き込んだ。リビングの中では、紗子と里奈がいまだに言い爭いを続けている。
「なにあれ?」
「加山がややこしくしやがったんだよ......」
「ややこしくなんてしてないよ~、酷いなぁ、雄介は~」
小悪魔のような笑みを浮かべながら、雄介の様子を見る加山。そんな加山の様子を見た沙月は、何かを察した様子で雄介の方を見た。
「まぁ、同はするけど、私は基本的に優子の味方だから」
「同するなら助けてくれよ......」
「なんでも良いけど、これじゃあリビングにはれないわね。貴方の部屋に行ってもいいかしら?」
「はぁ! なんでそうなるんだよ!」
「だって、あんな狀況の部屋にってはいけないわよ。というわけで、さっさと行きましょう」
沙月はまるで雄介の部屋を知っているかの様子で、二階に上がっていく。
「なんで、俺の部屋知ってるんだよ!」
「あぁ、あたしが教えたの」
「なんでお前が知ってんだ! 加山!」
雄介の知らないところで、々な報が彼たちに知れ渡っているらしい。
「なんでも良いから行きましょう。凜ちゃんも早く」
「あ。はい! お邪魔します......そういえばお兄ちゃんは?」
今まで黙っていた凜が、先に來た兄が居ないことを不審がる。雄介はそんな凜に、兄が今あの修羅場と化したリビングに居る事を教える。凜は兄を心配することなく「あぁ、そうですか。自業自得ですね」と言って、加山と凜に続いて二階に上がっていった。
「勘弁してくれよ......」
雄介の口からはため息しか出ない。どうしてこうなってしまったのか、やっぱり加山たちと紗子さんを合わせるべきではなかったと、今は自分の愚かな行為を後悔するしかなかった。 雄介は二階の自分の部屋に向かった。見られて困るものはないが、あまり部屋を荒らされるのも困るので、監視の意味で部屋に向かう。
「おい、なにやってんだ」
「あ、雄介! 気にしないで!」
「気にするわ! 人のベットに寢っ転がりながら匂いを嗅ぐな!!」
ドアを開けた雄介が見たのは加山がうつ伏せになり雄介のベットに寢っ転がりながら、ベットの匂いを嗅いでいる景だった。健全な男子であれば、喜ぶべき場面なのであろうが、雄介からしたら迷以外の何ものでもない。
「まったく、優子は見境が無いんだから」
「そういう沙月さんは何やってるんだよ」
「エロ本探し?」
「そんなもんは無い!凜ちゃんも俺のクッションの匂いを嗅ぐのはやめてくれ!」
雄介のクローゼットを開けてエロ本を探す沙月と雄介の部屋のクッションを抱きしめながら、加山と同じように匂いを嗅ぐ。
「ゆ、雄介さん! 別に私は匂いなんて......」
「クッション抱きしめながら言われても説得力ないよ……」
雄介は、これ以上部屋を荒らされてはかなわないと思い、三人を座らせて大人しさせた。
「頼むから大人しくしていてくれ、こんな狹い部屋にと一緒ってだけでこっちは調が悪いんだ」
実際雄介の調はあまり良いとは言えなかった。家に子を連れてきた事なんてなかったし、自室に子が三人もいるという狀況が雄介にとっては辛かった。
「で、優子と付き合うの?」
「「はぁ!?」」
驚いたのは雄介と凜だ。いきなりの沙月の言葉に二人の聲が重なってしまった。沙月は何を思ってそういったのか、雄介は訳が分からなかった。
「なんでそうなるんだよ!」
「そうですよ! 沙月先輩!」
「だって、もう親公認なんでしょ?」
「違う! 別に公認にされたわけじゃない!」
「もう、雄介ったら恥ずかしがっちゃって~」
「加山! お前は黙ってろ」
確かに紗子に加山は認められたかもしれないが、それは別に彼として認められたわけでは無い。
「まぁ、そんな事だろうと思ったけど、道のりは長そうね」
「む~、良いじゃん別に~、付き合って損はないよ?」
「お前の場合は絶対なんかしてくるだろうが」
「別に変なことなんてしないよ、ただ一緒にベットの中で......グヘへ」
「一ベットで何する気だよ......」
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