《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 後編17 草食系とお嬢様

「おーい、今村! ちょっと手伝ってくれー」

「あいよ~」

出しが決まり數日が過ぎた。本格的に文化祭の準備が始まり、雄介も放課後は文化祭の準備で忙しい日々を過ごしていた。いつもは教室の片隅で大人しくしている雄介だが、こういうイベントになると嫌でも手伝いに駆り出されてしまう。 雄介はクラスの男子に呼ばれ、店の飾りに使う大道の手伝いに向かう。

「何をつくってんだ?」

「看板だ、この俺! 部期待のエース渡辺が三日かけて完させた力作だ!」

を張り、ドヤ顔で言う自稱エースの渡辺。雄介はどんな看板なのかが気になり、看板を見てみた。

「……なぁ、俺が言うのもなんなんだが……」

「どうした? 素晴らしくて言葉で言い表せないか?」

雄介がまだ想を言っていないにも関わらず、もう稱賛の聲を上げられたように自慢げな渡辺。

「多分だけど、これは子からブーイング來るぜ」

「な…なんだと! この素晴らしい看板のどこにそんな要素があるというんだ!」

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「強いて言うなら、このいかにもアニメキャラっぽいメイドのデザインとポロリもあるよっていう一言……」

確かに渡辺の絵は上手かった。上手かったのだが、看板のメイドのキャラクターの絵が、が大きく開き、ものすごいミニスカートを履いたメイドの絵であり。更には、メイドカフェのロゴの下に小さく「ポロリもあるよ」と書かれており、まるで大人の世界の如何わしい店の看板みたいだった。

「バカやろぉ! 店の集客と一度見たら絶対に記憶に殘るところが良いんじゃないか! まったくこれだから、アニメが好きだからという理由だけで、オタク扱いしてくる連中は…」

「いや、俺は別にそうは思ってないが……」

「雄介!」

渡辺と雄介が看板のデザインについて議論している最中に、優子が雄介の方にやってきた。

「おう、どうかしたのか?」

「うん、沙月と山本君が買い出しに行ったんだけど、荷が多すぎて二人じゃ持って帰れないみたい。だから、一緒に行って運ぶの手伝ってくれない?」

「それは良いが、そんなにたくさん必要なものあったか?」

既に店の飾りに必要な木材や垂れ幕などの大きな材料は運びこんだはずだった。それ以上に大量に必要な道などあっただろうかと雄介は考える。

「何言ってるの? 一番重要なメイド服でしょ!」

「あぁ~、そういえばレンタルするって言ってたな」

メイド服やコスプレ裝などは、作るとなると時間も費用も掛かってしまうという事から、裝のレンタルをやっている店で借りる事になっていた。注文したのはメイド服が20著とその他コスプレ用の服が數點。確かに大荷だと雄介は納得した。

「分かった。悪い渡辺、帰って來てから手伝うよ」

「はぁ~、良いよな彼持ちは……俺に構わず行っちまえよリア充。発しろ!」

「お前、隨分変わり早いな……」

渡辺は急に雄介に対する態度を冷たくし、看板に向き直って作業の続きを開始する。

「じゃあ、行こうぜ優子」

「うん! 手つなぐ?」

「絶対ヤダ」

「も~照れちゃって~可いなぁ~」

「んな事言ってっと、行かねーぞ」

「あぁん、ごめんって! 機嫌治してよ~」

いつものような會話をしながら雄介と優子は教室を後にし、慎と沙月の元に向かう。 教室では、そんな優子と雄介の様子を噂していた。優子の告白宣言から、一次は學校全がその噂で持ち切りだったが、一週間ほど雄介と優子の絡みが學校で見られなくなり、最近は噂が消滅しかけていた。 しかし、二人の様子に最近変化が起きた。今までは優子が一方的に雄介に好意を向け、雄介がそんな優子から距離を置こうと必死だったのだが、最近は二人とも仲がいい。

「やっぱり、付き合ってんのかな?」

「う~ん、わからないけど。優子ちゃんはあれ、絶対好きだよね?」

クラスでも中心に居る生徒の堀と江波が話始める。すると、作業中だったクラスのみんなが二人に話に混ざってきた。

「絶対付き合ってるって! 最近優子、付き合い悪いし、それに最近また一段と可くなってない?」

「でもよぉ、今村って今まで子と話そうとした事すらねーし。一部の子の間じゃ、山本と出來てるって噂も……」

「そうよ! 今村君がしているのは親友である山本君だけよ!! あぁ、きっとあの二人は、二人だけの時はもっといけない男同士のあそびを……」

「とりあえず、そこの腐子はほっといて、やっぱ付き合ってんのかな? 最近は加山さん、あんまりギャルっぽい子たちとも遊んでないっぽいけど?」

クラスメイトの中で、雄介と優子の関係について意見が飛びう。それもそのはずで、學校一のについに彼氏が出來たのだ、注目されない訳が無いし、しかも相手があまり目立つ事の無い男子生徒だったらなおさらだ。

「そういえば俺聞いたんだけどさ」

「なんだよ?」

一人の男子生徒が思い出したかのようにみんなの前に出て話始める。

「俺の兄貴って、警察だからここら辺で事件とかあると、俺に気をつけろよって言ってくんだけど、この前町の外れにある工場で軽い事件があったらしいんだ」

「事件って……それがあの二人となんの関係があるのよ?」

「それが大有りなんだよ! その事件って、加山さんが柄の悪い連中に工場に連れ込まれたって事件だったらしいんだ!」

男子生徒の話に、教室の全員がざわつく。

「そういえば、あの二人ってこの前、職員室に呼ばれてたよな?」

「まさか、その事件の事で? でも、今村はなんで呼ばれたんだ?」

男子生徒の話に興味津々なクラスの生徒達、話を切り出した男子生徒は続きを離し始めた。

「兄貴も現場に行ったらしいんだけど、そこにはピンピンした様子の加山さんと今村。そしてこの學校の副會長が居たらしい。しかも、床には倒れた不良が6人いたらしくってさ~」

「ま……マジか……」

「あの、今村が……」

「あぁ、事を聴いた様子だと、今村が全部やったらしいって兄貴が言ってた」

クラス中が雄介の意外な一面に驚き、再びざわつき始める。すっかり準備の手は止まり、みんな話に夢中だ。

「なんていうか……嫌いな相手にそんな事しねーよな?」

「え?! なに! じゃあ、優子の危機に今村君が助けに行って、優子を守ったってこと? なにそれ超カッコイイじゃん!!」

「なんだか俺、今村になら加山さん取られてもいい気がしてきた…」

子は黃い聲を上げてはしゃぎだし、男子は雄介に対する評価を改め始める。

「でも、実際はどうなの? 付き合ってるの?」

「うーん、確かに……なんだかこのままわからないままは気持ち悪いな……」

「じゃあ、帰ってきたら、それとなーく聞いてみる?」

「お! それ良いな! よし、男子は今村! 子は加山さんにそれぞれ探りをれてみよう!!」

「「「おぉ!!」」」

雄介と優子の事で盛り上がりを見せる教室。そんな教室の外で、一年二組、つまりこのクラスの擔任の石崎は心の中でこう思っていた。

(団結力があるのは良いが……作業しろよ……)

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