《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 後編19 草食系とお嬢様

教室で男子生徒達が、雄介から優子との関係を聞き出そうとしていたのと同じ頃、子更室に向かった1年2組陣は、優子から話を聞こうとしていた。

穂…どうやって聞く?」

江波に一人の子生徒が、著替えの途中でやってきて尋ねる。歩とは江波の下の名前で、フルネームは江波穂エナミミホという。子からは大下の名前で呼ばれる事が多く、クラスの子は大名前で呼ぶ。

「どうやってって…子なんだから、誰かが適當に話して、流れで聞き出すのよ! だから、由! あんたが切り出しなさい!」

「なんであたし?! 別に好きな人なんて……居ないし」

「じゃあ、その一瞬の間は何よ! ほら、みんなの為だと思って!」

「だから居ないって……」

「ねぇ! みんな知ってるー! 由って、山本君の事がー」

「なんで知ってるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

高らかに宣言する歩を由が大聲を上げてかき消そうとするが、既に遅かったらしく、著替え途中だった子生徒全員が、由を見て話しを始める。

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「え? 由ってまだ諦めてないの?」

學當時からだよね? もう諦めなって、あんたじゃあのイケメンは無理」

「なんでみんな知ってるのよ……」

肩をがっくりと落とし、へこむ由。そんな彼にみんな呆れた様子で口々に言う。

「だってあんた、暇さえあれば山本君見つめて、うっとりしてるじゃない?」

「いや、気持ちはわかるけど……山本君はねぇ……」

「あんたらねぇ! 良いでしょ! 好きなんだもん! 何が悪いのよ!!」

涙目で訴える由に、みんなヤレヤレといった様子。そんな由に一人だけ共を持って接してくれる子生徒がいた。

「分かる! わかるわよ由! 私もそうだもん!!」

「優子…あなた…」

に一人だけ共を持って接するその人は、加山優子だ。噂の當人であり、由がこんな狀態になっているきっかけとなった人歩は、この狀況に心の中でガッツポーズをする。流れで優子が由に共し、自分のバナを始めれば、あとは簡単だ。 優子は由の手を取り、話を始める。

「私も好きで好きでしょうがないの! でも最近、なんだか私に構ってくれなくて……」

その場にいた子生徒は「今村の事だな…」と思い浮かべながら、優子の話に耳を傾け、話の続きを今か今かと待っている。もちろん皆、著替えの途中である。

「それって…今村の事?」

「そう! なんか最近他ののところに行ってるらしくて……」

加山の言葉にその場の子全員が「今村最低」と思い。本人の知らないところで、子からの好度が一気に底辺まで下がり始めた。

「何それ最低! 優子があんなに好き好き言ってんのに、他ののとこ行ってるの? それでも山本君の親友?!」

(((それは関係ねーよ……)))

優子と由の二人以外の子生徒がそう思い、すっかり目的を忘れた由は、どこか真剣な様子で加山と話を進める。

「良いの……だって私、一回振られてるもん…」

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」

この優子の一言には、更室の子生徒全員が驚きの聲を上げる。この事実を知っていたのは、優子と沙月だけであり、二人は誰にもこの事を言っていなかった為、皆がこの真実を知ったのはこの時だった。

「え! 何? 振られてたの?? 私はてっきり、今村が逃げてるのかと……」

「じゃあ、もう友達で行くってこと?」

「でも、友達にしては仲良すぎない?」

優子の発言に、更室中が騒がしくなる。皆、服のサイズ合わせをすっかり忘れ、話に夢中になっている。 次第に優子の方にみんなの視線が集まり、説明を求めるように迫ってくる。そんなみんなに、優子は笑顔で答える。

「うん振られたよ! でも好きだから……諦めないって決めたんだ!」

(((なんて健気!!)))

評価の下がった雄介とは違い、優子の評価はみるみる上昇していく。そんな事は知らず、優子は由を勵ましていた。

「由はまだ振られたわけじゃないんだから! 私よりみあるよ!」

「そ…そうかな?」

「そうだよ! 私、最近よく山本君と話すけど、好きな人とかは居ないみたいだから、大丈夫だよ!!」

「ゆ…優子……」

涙目で激する由。そんな二人を見ながら、更室の子達は今村への怒りを燃やし、新たな目的を見出していた。

「今村ぁ~あんなに健気な優子を~」

「許せないよ! いくら不良から助けたからって、振ったの子に気使わないで、他ののところに言ってる宣言するなんて!」

雄介がすっかり悪者になり始めたそのころ、更室で著替えをしていた子生徒一人が著替えを終えた。

「……フリフリね……」

沙月だ。みんなが優子の話に夢中になっている間、沙月は裝に著替えを済ませ、サイズを合わせていた。

「あれ? 沙月著替えたの? メッチャ可いじゃん!」

「ありがとう。貴方もいつまでも下著姿で居ないで著替えたら? 風邪ひくわよ」

「あ、そういえばメイド服の試著に來たんだった! 早く著替えないと遅くなるわよ~」

みんな、本來の目的を思い出し、急いで著替えを始める。優子も雄介に見せようとニコニコ笑顔を浮かべながら、著替えを始めた。

「メイド服なんて、雄介の家を思い出すなぁ~」

「「「今なんて!?」」」

「え? 雄介の家を思い出すな~って…」

「「「今村の家? しかもメイド服って何??」」」

著替えを始めたのにも関わらず、優子の一言で皆手を止めて、またしても優子に注目し始める。歩はみんなを代表して優子に聞いた。

「えっと……優子って、今村の家に行って、メイド服にどんあ思いれがあるの?」

「え? あぁ、雄介のお姉さんと一緒に來たんだよね~。でも、その時は雄介に見せてないから、雄介は知らないよ?」

「「「今村って……」」」

今村雄介はこの時、クラスの子から、制服好きの変態男子という認識をけてしまった。本人がこの事実を知るのは、もうし先の話である。

「……著替えなくていいの?」

沙月は一人、再び騒がしくなった更室でぽつりとつぶやいた。

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