《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 後編22 草食系とお嬢様
織姫はずっと、雄介が自分を外に出すために、こんなにも自分に積極的に関わろうとしているのだろうと考えていた。だから、最近は雄介に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。こんなにも自分の為に頑張っている雄介に、自分は何も応えることが出來ない、そんな自分が嫌だった。
「じゃ……じゃあ…なんで…」
「なんでって言われても、普通にお前と話すのが楽しいと思ったからだよ」
「え……」
織姫はその言葉に、頬を赤く染める。最初からあんなに失禮な態度で接し、散々雄介に々言ってきたのに、雄介は楽しかったと言ってくれた。そんな雄介に織姫は__
「もしかしてMなんですか?」
「おいコラ。なんでこの話の流れで俺が自分の癖を暴しねーといけねーんだよ」
織姫の返答に、雄介はし腹を立てる。しかし、別に本気で怒っている訳ではない。雄介は話を戻し、なぜ自分が織姫と関わり続けるのかを話始める。
「前も言ったかもしれねーけど。俺はお前の過去に何があったとか、どうして外に出ないのかなんて聞かねーよ。ただ……俺は、友達になった引きこもりのの子の家に遊びに行ったり、一緒にゲームしてたつもりでいただけだよ」
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「……」
雄介の言葉に、織姫は言葉を出せなかった。言葉が見つからなかったのもあるが、一番はうれしくてしかたなかったのだ、初めてできた男の友人が、長く外に出ておらず、友人として自分に接してくれていた、雄介の気持ちがうれしくて、言葉を発したくても涙を堪えるのに必死で、聲が出せなかったのだ。
「……でも、やっぱり、友達と思ってたのは俺だけか……悪かったよ。慣れ慣れしく呼び捨てなんかして」
違う、嫌なんかじゃない。織姫はそう言いたいのに、鳴き聲を堪えるのに必死で聲が出せない。
「お前がもう來るなって、言うなら俺はもうここに來ないよ」
嫌だ! そんなの絶対に嫌だ! また、この屋敷で一人ゲームに明け暮れる日々は嫌だ。織姫はそんな事を頭の中で想像しながら、涙を流して部屋のドアでうずくまる。ドアの外から聞こえる雄介の聲が遠くなるのをじる。
「今日はとりあえず帰るよ。なんか調悪いみたいだし、じゃあ、また來れたら來るよ」
織姫は雄介の聲が遠ざかるのをじた。  そして……織姫は気が付くと部屋を飛び出していた。
「雄介!!」
そして、昨日まで顔もわからなかった友人を追いかけ、廊下を駆け出す。ここで雄介を追いかけなければ、何か大切なものを失う気が、織姫はしていた。そして、織姫はし先にいた雄介の手を取った。
「織姫……お前……」
手を取られた雄介は驚き、目を丸くする。 織姫は雄介の手をしっかり握り、を震わせ、膝をがくがくさせながら、涙目で雄介を見つめる。怖い、織姫はずっとそう思っていたはずの男の手を取っている。自分でも信じられなかった。今すぐにでも逃げ出したかった。でも、ここで逃げたら大切な友人を無くす気がした。だから、織姫は雄介の手をしっかり握って離さなかった。
「わ……私も……あなたと話せて楽しかった! ずっと……一人だったから……あなたが……雄介が來てくれて! うれしかった! だから! これからも……」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、織姫は雄介にぶように言う。自分の思いをどれだけ雄介に救われたかを__
「織姫……俺は…」
雄介は織姫の言葉に応えようと、織姫を見る。織姫は涙をぬぐい、雄介の顔を見る。
「にられると気絶するから……」
「キャーーー、雄介! 雄介? 誰かぁ!!」
雄介は織姫に手を摑まれ、拒絶反応を起こし、その場に倒れ込んでしまった。織姫は驚き、すぐにメイドを呼んで別室のベットに運ばせた。
「なんなんですか……」
ベットで眠る雄介を見つめる織姫。あんなに怖くて、暴だと思っていた男が、自分のせいで倒れてしまった。そんな事を考えると、おかしくて自然と笑みがこぼれる。
「う……うぅ…」
「目が覚めましたか?」
「ん? あぁ……って織姫?!」
「はい、貴方の大嫌いなです」
笑顔で答える織姫。雄介はそんな織姫を不思議そうに見つめる。それもそのはず、いままで顔を見た事が無かった織姫の顔が、すぐそこにあるのだ。
「お前、普通に話せんじゃねーかよ」
「貴方は、手を握っただけで気絶するんですね」
「うっせぇ! しかたねーだろ。これでもし良くなったんだ……」
ふてくされた様子で雄介は、織姫の反対側を向く。
「お前と一緒だよ…」
「え……」
「俺はこうやって普通に話す事は出來るが、にれられるとこうやって気絶しちまう。お前となんも変わんねーんだ俺も」
「でも、貴方は學校に行って、普通に暮らしているではありませんか?」
「いや、かなり気を付けてるよ。絶対ににれられないように、教室ではほとんど子と関わらなかった。ま、それでも何回か気絶して、々な人に助けてもらったよ……」
「そうなんですか……」
織姫は靜かに雄介の話を聞き思った。自分は何も努力をしなかったんだと。雄介は自ら努力して、普通でいようとしていた。しかし、織姫は家にこもり、何もしなかった。もしかしたら、自分も學校に行けたかもしれない、もしかしたら自分も普通になれたかもしれない。なのに、織姫は何もしなかったのだ。
「あの……私も……學校に行けるでしょうか?」
織姫は雄介に尋ねる。自分も変わりたい! 自分も今のこの一人きりの狀態から抜け出したい! そう思い、一歩を踏み出す勇気を固めた。 そんな思いをじたのか、雄介は織姫の方を向き、起き上がっていう。
「あぁ、大丈夫だ。お前は俺を追って部屋から出れたじゃねーか、それにこうして俺と話せてる。だから…大丈夫だ」
織姫は気が付くと泣いていた。あの時部屋を出てよかった。あの時勇気を出してよかった。雄介と出會えてよかった。そう思って涙をこぼした。それと同時に雄介に対する思いが、友とは違う事にも気が付いた。
(そっか……これが、好きって気持ちなんだ……)
織姫は雄介の顔を見て頬を赤く染める。この人ともっと仲良くなりたい、この人ともっと一緒に居たい。そう思い、織姫は雄介に笑顔で言う。
「ありがとう」
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
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