《草食系男子が食系子に食べられるまで》第13章 文化祭と新たな火種 1

文化祭を二日後に控えた今日。雄介たち1年2組は、メイド喫茶で出すメニューの施策を家庭科室で行っていた。

「まぁ、お茶はパックで良いだろ? 問題は食いだよなぁ~」

文化祭でメイド喫茶を提案し、張り切っている堀は、顎に手を當てて考え込む。発案したのは自分だからと、積極的に文化祭に強力しており、今も自ら中心となって、メニュー作りに勤しんでいる。

「あんた、料理出來んの?」

「出來ない」

「……」

考え込む堀に尋ねたのは、江波だった。クラスの子の中心的存在で、文化祭の準備にも積極的に參加して頑張っている。堀の頼り無さに、言葉も浮かばず、江波は呆れながら、手を頭に當てる。

「なんだよその反応! お前だって出來んのかよ!」

「う……で、出來るわよ……」

「ほ~ぉ? 何が作れんだよ?」

「ゆ……ゆで卵……」

「どこの元プロ野球選手だ!! そんなの料理とは言わん!!」

言い爭う二人を、雄介と優子、そして渡辺が見つめていた。なぜこんな人選になったのかは理由があった。雄介は、日常的に料理をしている事を理由に江波に頼まれ、そんな雄介に優子と渡辺はついてきたのだ。

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「う~ん、喫茶店って何を出してたっけ?」

「まぁ、アニメなんかだと、メイド喫茶にはオムライスが定番だよな?」

と江波を抜きに、雄介と優子、そして渡辺がメニューについて話を始める。雄介も考えるが、あまり喫茶店というものに馴染みが無く、何を出す店なのかが浮かんでこない。

「まぁ、學園祭の喫茶店なんだから、そこまで頑張る必要はないだろ、喫茶店なんかはお茶を飲みながら、軽くお菓子を食べる店だろうし、俺達も簡単なお菓子を作って提供できれば良いんじゃないか?」

「おお~流石私の未來の夫……」

「加山さん、それは違う」

雄介の提案にいつものようなノリで言う優子だったのだが、意外にもそれを否定したのは渡辺だった。雄介は驚きと共に、渡辺がわかってくれた事を嬉しく思っていた。

「それに、教室で店をするんだったら、調理場は限られてくるし。それにあんまり予算もないからな……」

「そうだな、俺は雄介の意見に賛だぜ。後はパフェなんかも良いんじゃないか? あれって、グラスに順番に材料をれてるだけだろ?」

「あぁ、基本はそうだな。甘いものを中心にメニューを作るか……」

「あのさぁ……」

雄介と渡辺が相談をしていると、優子がジト目でそんな二人を見ながら不満そうに聲を上げる。

「どうした?」

雄介は優子に尋ねる。すると優子は頬をふくらまし、雄介と渡辺を互に見る。

「なんか、仲良すぎない? ついこの間まで、話したことすらなかったのに……」

「ん? あぁ、まぁそうだな。なんだが、渡辺だと話やすくてな、自然と話せるんだ。なんでお前は不機嫌なんだよ?」

「ん~。なんかな~、渡辺君男子だけど、ライバルの匂いがするっていうか……」

「はぁ? なに言ってんだ。兎に角時間も無いし、お前も手伝え。卵くらい割れるだろ?」

そういって材料を取りに行く雄介。殘された優子は渡辺を睨む。渡辺もその視線に気が付き、加山を睨み返す。ここで渡辺と優子はお互いがライバルである事を互いに確認した。

「好きって気持ち、私にもわかるからバカになんかしないけど、全力で勝ちに行くから」

「加山さん。別なんて関係ないんだよ。だから、俺も全力で行く」

バチバチと火花を散らせる渡辺と優子。そんな二人を傍から見つめる、堀と江原は目を丸くしてその様子を見ていた。

「え? 何? あの二人がライバル??」

「ちょっと! 堀どうなってんのよ! 健全な私のクラスで、健全とは言えなさそうな事が起こり始めてるんだけど!!」

「俺だって知るかよ! あ! そういえば、渡辺が最近三次元に興味を持ったって話を聞いたが……まさか!!!」

し離れたところで材料を確認する雄介と、渡辺を互に見る。そして気が付き、顔を真っ青にして無言で驚いていた。

「堀! なに私を置いて気絶しようとしてんのよ! 私一人に、この複雑すぎる三角関係をどうにかしろって言うの?!」

「はっ! すまん! あまりの出來事でつい……」

事実に気づいた堀と江波。優子と雄介の現在の関係を知る、という目的から、隨分ややこしい展開になりつつある現狀。二人は気まずそうに三人の様子を見つめる。すると__

「おい、気が済んだなら手伝ってくれ。時間も人員も足りないんだ」

二人の背後から、雄介が聲をかけてきた。二人は飛び上がって驚き、歯切れ悪く返答をする。

「あ…い、今村……わかった……すぐ…取り掛かろう」

「そ…そうね……うん……急ぎましょう……」

そんな二人の様子に疑問を抱く雄介。しかし、時間が無いのは事実なので、あまり気にせずにメニューの試作を作っていく。

「おい優子。どさくさ紛れにくっ付こうとするな」

「え~、だって雄介の一番近くに居たいんだもん」

「俺は居たくないんだが……」

作業が始まり、いつも以上に積極的雄介に近づいて行く優子。しかし、そんな優子の行を渡辺が許すはずもなく、二人の間に渡辺がっていく。

「雄介。分量はこれで良いのか?」

「あぁ、もうし生地が固い方が良いな、もうし小麥れてくれ」

「おう、了解」

間にった渡辺は優子に向かって勝ち誇った笑みを浮かべる。そんな渡辺に優子は頬を膨らませて怒りをアピールする。 そんな三人の様子を、向かい側から見ていた堀と江波は気まずくて仕方なかった。

「おい……なんだあれ?」

「今村をめぐって、クラスのアイドルと元オタク男子がいがみ合ってるわね……」

衝撃の事実を知ってしまった二人は、居心地が悪かった。正直、このことを誰にも言う気に二人はなれなかった。理由は至極簡単で、誰も信じないと思ったからだ。

「あ、おい堀。小麥れすぎだ」

「え? あ、あぁすまん」

「二人してさっきから何コソコソしてんだ?」

向かいの雄介が二人に注意をする。雄介の言葉に、堀と江波はをビクッとさせる。

「べべべ…別に……コソコソなんて……しし、してな、イッツ!」

あからさまに挙不審になる堀を江波が、持っていた軽量カップで頭を叩く。

「なにすんだよ!」

「あんたはどんだけバカなの! あんだけきょどってたら、不審がられるでしょうが!」

江波の不安とは裏腹に、雄介は別に不振がっていなかった。ただ、変な奴。というだけの想で済ませ、料理を続けていた。 そんなこんなで作業は進み、それぞれ試作品が完したのだった。

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