《草食系男子が食系子に食べられるまで》第13章 文化祭と新たな火種 7

「まぁ……気にすんなって」

「気にするなと言う方が無理だ。あの時のお前を見る限り、何か重要な事のように思えたのだが?」

雄介は黙ってしまう。 何かを察している北條。そんな北條に雄介は、しだけでも真実を伝えるべきか、それとも伝えて注意を促すか……。

「北條…すまんが、これに関しては言えない。俺個人の問題だ」

雄介は伝えない道を選んだ。 これは誰か一人に話せば、確実にどこかで綻びが生じてしまい、が他の親しい人に伝わってしまう恐れがあったからだ。 北條は、雄介の答に目をつぶって何かを考えるように口を閉じる。

「分かった。確かに、人には言えない事の一つや二つあってもおかしくない。だが、これだけは教えろ…」

「まだあるのか、赤鬼?」

「赤鬼と呼ぶな!!」

場を和ませようと、雄介が冗談を言う。 雄介のおかげで肩の力が抜けた北條は、ため息を吐いた後に壁にもたれかかって雄介に尋ねる。

「本當に、お前は加山さんの事をなんとも思っていないのか?」

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「あぁ、微塵も」

「即答か……じゃあ、なんで加山さんの悲しい顔を見たくないんだ?」

北條が呆れた様子で尋ねると、雄介はし寂しそうな表で、外を見つめる。

「優子だけじゃねーよ……知ってる奴の悲しい顔なんて見たくねーだろ……」

「………」

雄介の言葉に、北條は考える。 一雄介はどんな過去を持っているのか、何を隠しているのか、それは雄介にとって重要な事なのか……。

「そうか……そろそろお互い教室に戻ろう。手伝わないでさぼっている訳にもいかん」

「そうだな、じゃあな、赤鬼」

「そろそろぶん毆るぞ!」

そういって最後はお互い笑顔で別れた。 雄介は教室に戻る道すがら、考えていた。流れとはいえ、北條に自分のケンカを見せてしまった。口止めをしなければ、々と厄介になるかもしれないと。 そんな事を考えていると教室に到著し、雄介はドアを開ける。

「おぉ、雄介帰って來たか」

「今村君、時間が無いわ。早くこれ著て」

「お、おう。なんだ來れ?」

雄介は帰って來て早々に雄介と沙月に捕まり、コスプレの裝を渡される。は黒で、なんだか見た限りは普通の服の様だ。

「じゃあ、著替えてくるわ」

「いや、あそこで著替えてこいよ。今は簡易更室にしてるから、男子専用の」

「そうなのか? じゃあそっちで……」

雄介は言われるがまま、教室の黒板側の隅に壁で區切られ、部屋のようになっているところにっていく。 中は狹く、男子が三人はったらもうぎゅうぎゅうだ。

「ゆ…雄介!」

「おう、渡辺も著替えてたのか?」

中には渡辺が一人、著替えをしていた。 雄介をって來るのに気が付くと、なぜか前を隠す渡辺。

「お前は何を著るんだ?」

見たところ、渡辺は今制服をいでいる途中で、何を著ようとしているのか分からない。

「あ、あぁ。俺はこれだ」

「なんだ…この黃い耳の生えた生き?」

「ニャフッシーだ」

渡辺が雄介に見せてきたのは、全が黃で耳の生えた貓のような生の著ぐるみ。 著ぐるみなんてものまであるのかと雄介は思いながら、著替えを始める。

「んで…お前は何を著るんだ?」

「あぁ、よくわからん。さっきこの裝をもらったからな……それより、なんで顔赤いんだ?」

「気にするな……」

著替えを始めた雄介を凝視しる渡辺。雄介はそんな渡辺の視線に背中にゾクっとした何かをじる。

「なぁ、あんま見ないでくれないか? いくら男同士でも、そこまで見られるのはちょっと……」

「あ、あぁすまん。気にするな」

「渡辺、鼻出てるぞ?」

渡辺の顔を見ると、鼻から大量のを流していた。 咄嗟に花を抑える渡辺だが、がどんどん溢れて行く。

「すまん! 先に出る」

そう言いながら鼻を抑えて渡辺は出て行った。 雄介は「疲れているんだろうか?」と思いながら、渡辺を見送り、著替えを再開する。

「なんだ、普通じゃないか…」

黒いパンツに、白のYシャツ。そして暗い青のネクタイとチョッキ。すべて著終えてもこれと言って、なんのコスプレなのかいまいちわからない。 他の奴のを見た限りでは、國民的人気アニメのキャラクターのコスプレやら、裝やら々あり、雄介も覚悟していたのだが、普通過ぎて面白くなかった。

「なぁ…これってなんのコスプレだ?」

「おぉー、似合うじゃんか」

「良いじね。まぁ、ルックスもまぁまぁだから、良いんじゃないかしら?」

室から出て來た雄介に、慎と沙月は想を告げる。 沙月の言葉がし引っかかったが、まぁ似合っているなら良いかと思い、雄介は改めて自分の姿をみる。

「これってなんのコスプレなんだ?」

「あぁ、それは喫茶店にはマスターが必要って事で用意した『喫茶店のマスター』よ」

「まんまじゃん……」

沙月にツッコミをれつつも、変な服じゃなっか事に安心する雄介。

「そう言えば慎。お前は何を著るんだ?」

「俺はスーツだ」

「ん? それってなんのコスプレだよ?」

「ホストらしい」

「あ~、なんだか納得できる」

雄介はスーツ姿の慎を想像しながら納得する、イケメンでスタイルも良い上に、今回は接客がメイン。となると、客を呼ぶための慎は、が喜ぶような格好で接客しなければならない。 ホストはまさにはまり役だ。

「雄介~!」

慎と沙月、雄介が話をしていると、相変わらずメイド服姿の優子が、雄介の元にやってきた。 何やらすごく興しながら、スマホのカメラを構えている。

「ゆ…雄介! 寫真撮って良い?? こんなレアな雄介の格好、見れる機會なんて、そうそうないから!!」

「わ…わかったから、あんま近づくな…」

息を荒くして、頬を赤らめながら優子は、雄介にスマホのカメラを向け。ニヤニヤしながらシャッターを押しまくる。 被寫の雄介は、複雑な表を浮かべながら、優子に寫真を撮られ続ける。

「はぁ……なぁ、もう良いか?」

「うん! 満足~。あ、私と一緒に撮ろうよ!」

「はぁ? なんでお前とツーショットなんて…」

「良いから良いから! 沙月、シャッターお願い!」

優子は沙月にスマホを預けて、雄介の隣に並んで立つ。雄介は優子からし距離をとって並び、シャッターが切られるのを待った。

「行くわよ。はいチーズ」

「イエーイ!」

「はぁ……」

撮影された寫真には、メイド服姿でハシャグ優子と、頭を抱えてため息を付く雄介の姿が寫っていた。 これが雄介と優子の初めてのツーショット寫真になった。

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