《草食系男子が食系子に食べられるまで》第15章 文化祭の開始3

「ここなら大丈夫だろ」

「まんま、お化け屋敷にきましたが……」

雄介達三人は、お化け屋敷をしている教室の前に來ていた。 2年1組、ここは里奈の教室でもあり、雄介は若干の不安もあったが、里奈には説明すればわかってもらえるだろうと思い、このクラスに來た。

「ここなら、中は暗いし、人の目も無い、それに學園祭っぽいだろ?」

「な、なるほど……それは分かるんですが……さっきから異様な雰囲気が中から漂ってくるのですが……」

織姫の言った通り、なぜか教室からは異様にどす黒いオーラが漂ってきている。 まさか、本當に幽霊が? 三人はそう考えるが、どうやらそうではないらしい、教室の中からそのどす黒いオーラを出している張本人が白裝束を著て中から出て來た。

「ゆ~う~く~ん~」

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

まだ中にもっていないと言うのに、雄介は大聲を上げてび驚く。 異様なオーラの正はこの白裝束の徒であり、しかも里奈であった。 雄介は々と嫌な予がして、必死に説明を始める。

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「いや、あれですよ! 前も言ったじゃないですか! これは紗子さんから頼まれた一軒の延長で……」

「うふふふ、お姉ちゃん言ったよね? 一人で來てって……なのに、何? その綺麗なメイドさんと可の子は?」

「だから、星宮の家の人達で……言うなればそう! おもてなしをしてるんですよ!」

「おもてなし?? 本當に? まさかと思うけど……ユウ君は、またの子に目なんか使ってないよね?」

笑顔なのに、全く笑っている様子を見せない里奈。 うっすら浮かべる笑みが異様に怖く、織姫は涙目で倉前の後ろに隠れている。 雄介はどうにかして、里奈をいつもの狀態に戻さなければと思い、々と言ってはみるのだが、一向に狀況は変化しない。

「あの、雄介様のお姉さまですか?」

「いえ、妻です……」

「違います、姉です……」

もう半分壊れてしまった里奈に、倉前がいつもの笑顔で尋ねる。 里奈はうっすら目を開けて、口元をゆがませながら、妄想が混じった回答を倉前さんにしていた。

「そうでしたか、いつも大変お世話になっております。私は星宮家のメイドをしております、倉前と申します。どうぞよろしくお願いします」

「え……あ、こちらこそお世話になってます……」

倉前の落ち著いた対応に、里奈は調子を崩し、素に戻り倉前と挨拶をわす。

「雄介様のお姉さまはお綺麗ですね~。やはり若いと言うのは羨ましいです」

「いや~、そんなそんな、あはは……」

倉前の言葉に、里奈は頬を染めて照れている。 倉前のおかげで、里奈は落ち著きを取り戻し、先ほどまで出ていたオーラも消えていた。 落ち著いたところで、雄介は里奈のクラスに來た経緯を説明する。

「なるほどね~、確かに……この二人は々目立つわよね…」

「もう既に周りがすごい事になり始めてますけどね……」

周りには、既に多くの人が集まっていた。 目的は倉前と織姫のようで、ほとんどが男子生徒や男客なのだが、それに混じって子生徒や客も野次馬として集まり始めていた。

「やばい! 織姫が結構限界っぽい!!」

「う……人、人が……いっぱい……男が……」

織姫は倉前さんのに隠れながら、顔を真っ青にして目を回していた。 今にも倒れてしまいそうなほどに、元々白いが、更に真っ青になっていく。

「た、大変! 早く中に!!」

「あ、ありがとうございます!!」

倉前さんと織姫をとりあえずお化け屋敷の中に押し込み、雄介と里奈は息を吐きだす。 野次馬は二人がお化け屋敷にったのを見ると、徐々に解散していった。

「注目はされると思ったけど……まさかここまでとは……」

「ホントよ、すごく可い子だったわね、織姫ちゃん…」

里奈はそいう言いながら、白裝束の格好のままそっぽを向いて膨れた態度をとる。 雄介は、またややこしい事になったと、思いながら肩を落として里奈に説明をする。

「里奈さん……あいつは、俺と似てるんですよ……孤児院で一人だった俺と……」

「知ってるよ、初めて家に來た時のユウ君と似てるもん。あの日、お母さんの後ろにしがみ付いて家に來たユウ君に……」

里奈も理解はしていた、織姫がどんな狀態でこの學園祭に來たのか、この前まで外にも出られなかった事も雄介から聞いて知っていた。 だが、実がすごく可くて、そんな子と好きな人が一緒に居るのを見て、里奈はし不貞腐れてしまっていた。

「ねぇ、ユウ君……」

「はい?」

「お姉ちゃんの事好き?」

「え……」

不安げな瞳で、雄介を見つめる里奈。雄介はいつものふざけたじでない里奈の言葉の意味を考え、里奈に笑顔でその答えを告げる。

「はい、大好きですよ」

「……前のお姉ちゃんより?」

里奈の今までに無かった問いに、雄介は一瞬戸ったが、すぐに気が付いた。里奈が不安なんだという事に……。 最近は里奈に迷を掛けっぱなしの雄介は、あまり里奈と話をしていなかった。 それを里奈きっと嫌われたのだろうかと思ったのであろう、雄介はそれに気が付き、笑顔のまま答える。

「里奈さんは里奈さんです。前の……由姉さんと比べるなんて間違ってますよ……」

里奈は靜かに聞いていた。聞き終えた里奈はどこかすっきりした顔で、雄介に笑顔で答えた。

「そうだね、変な質問してごめんね。お姉ちゃんはまだ、クラスの仕事があるから、あとでユウ君のクラスに行くね」

「はい、待ってます」

そういうと、里奈はお化け屋敷の中に消えて行った。 雄介は里奈の背中を見ながら、里奈と出會った十年間を思い出す。 そして、悲し気な視線を姉の瀬背中に向けて靜かに言う。

「ごめん……里奈姉さん……」

雄介は初めて里奈を姉さんと呼ぶ。 言い終え、里奈の姿も見えなくなったところで、出口の方から倉前と織姫が出て來た。 雄介は表を戻し、二人の元に向かう。

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