雄介は、織姫たちと別れクラスに戻っていく途中だった。　織姫の前向きな姿を見て、雄介は自分の今からしようとしている事を考える。

「……きっと、俺はあいつみたいに強くないんだろうな……」

何も変わらない自分と、自分を変えようとしている織姫。　本當にこの道を選んで間違いではないのか、雄介は再び考える。

（間違いでも……この決意は本だからな……）

雄介は考えをまとめ、自分のクラスに帰っていく。　時刻はもう16時を回ろうとしていた。雄介たちのクラスは、本日分が終了し、皆それぞれ學園祭を回っていた。　雄介は慎と合流し、學祭を回ろうと慎に連絡をするが、先ほどから電話を掛けても一向に出ない。

「なんだ？　おかしいな……教室行ってみるか……」

雄介はとりあえずクラスに戻り、クラスの誰かに慎がどこに行ったか聞こうと思い、教室までの道のりを歩いていた。

「なんだ、教室も誰もいないのか…」

先ほどまでは売り上げの計算で、多くのクラスメイトが居たはずだったのだが、教室にはもう誰もおらず、もぬけの殻だった。

「一どこ行ったんだ？」

雄介はスマホで再度、慎に連絡を取ろうと、近くの椅子に座ってスマホを作する。

「おい、今村」

「ん？　なんだ、赤鬼？」

「お前いい加減にしろよ…」

雄介が電話を掛けようとした瞬間、赤鬼姿で棒を持った北條が教室の中にってきた。

「どうした？　なんか用事か？」

「あぁ、おまえにこれを渡すように頼まれてな」

「ん？　手紙か？」

北條が雄介に手渡したのは四つに折りたたまれた紙だった。　雄介はその紙をけ取り、中を確認すべく紙を広げる。

「！！　おい！　北條！　誰に貰った！！」

「し、知らない男だ…多分學祭に來ている客だと思う……どうした？」

雄介は紙に書いてある文字を見た瞬間、北條に詰め寄り、誰に渡されたのかを尋ねる。　北條は雄介のいきなりの行に驚く。

「どんな奴だ！！　特徴は？！」

「落ち著け、一どうしたって言うんだ！」

雄介が北條から渡された紙には『今から全部を壊してあげる』と一言だけ書いてあった。　その言葉が何を意味するのか、雄介は瞬時に理解した。　このメッセージが、滝沢絵里からのものである事に……。

「あ、あぁ。すまん、取りした……」

「何か、あったのか？」

文面からして、きっと滝沢はもう學校にっている確率が高い。雄介は北條に被害が無いように、校から出るように切り出す。

「北條、今は何も聞かずに學校外に出ろ！」

「急にそんな事を言われてもな……何があったんだ、俺で良ければ相談にだって乗るぞ？」

北條は心配そうに雄介の顔を見る。　しかし、雄介は心配する北條に耳を貸さない。今は一刻を爭う事態だ、被害者を出さないためにも、早く北沢を見つけ出す必要があったからだ。

「悪い！　北條、兎に角お前は學校を離れろ！」

「あ！　おい！！」

雄介は北條を教室に殘し、教室を飛び出し校を走り出した。　理由はもちろん滝沢を探すためだ。

（教室には誰も居なかった、しかもあの手紙……まさか！！）

雄介はそこで気が付いた、滝沢がバスで雄介に言った『大事なを全部壊す』という発言は、雄介の友人や家族を指すものだとしたら、クラスメイトが狙われるのは想像が出來る。

「クソ！！　明後日って言ったのは噓だったか！」

雄介は若干は予想していた。　あのがわざわざ予告してその日に行するメリットなんて無い、むしろデメリットの方が多い。　雄介はそれを見越して、小畑達警察に連絡をしたのだった。　しかし、雄介は考える。なぜ校に滝沢たちがって來れたのかを……。

「學校は常に警察に監視されていたはずなのに、なんで……」

雄介は考えながら、校を駆け回って滝沢を探す。　探し始めてし経った頃、校放送のアナウンスが鳴った。

『ピーンポーンパーンポーン、今村雄介く～ん。今すぐ屋上に起こし下さ～い』

雄介は放送の聲を聴いて気が付く。　この聲には聞き覚えがあった。雄介はその聲の主の名前を靜かにつぶやく。

「滝沢……」

周りの生徒やお客さんもおかしな校放送に気が付き、ざわつき始める。

「なんだ、この変な放送？」

「今村って、加山さんの彼氏だっけ？」

ざわつく校の人々。　放送はまだ続いており、滝沢は続きを話し始める。

『なお、學園祭はこれでお開きでーす。速やかに、一人殘らず校から出やがってくださーい。さもないと……殺しちゃいまーす』

そこで放送は終わった。　放送を聞いていた周りの生徒やお客さんは、最初は悪戯だと思い気に留めてはいなかった。　しかし、次の瞬間、放送の言葉が本當だったと皆が理解する事になった。

バーン！！

「さっさと出ろ」

大きな銃聲が廊下の雑音をすべて消し去った。　最初は皆何事かと思ったのだろうが、若い男が天井に向けて構えていを見て、沈黙が悲鳴の嵐に変わる。

「きゃぁぁぁぁ！！」

「なんだあいつ！！　銃持ってるぞ！！」

「逃げろぉぉ！」

拳銃を構える男と逆の方向に皆は逃げて行く。　しかし、雄介はその場に殘り、男を睨む。

「おい、お前もいけ、死にたくなければな…」

「生憎、俺は屋上に呼ばれてんだよ。だからよ……」

「ぬお！！」

雄介は男の懐に素早くり込み、を低くして、そのまま拳を男の顎めがけて振り上げる。

「ぐぁ！！」

男はをのけぞらせ、そのまま床に倒れる。　毆られた衝撃で、拳銃は手から離れ、床に転がる。雄介は拳銃を遠くに蹴り飛ばすと、床に転がった男の倉を摑み、懐に忍ばせたナイフを突きつける。

「言え、お前の他に、何人學校にってきている」

雄介の口調は淡々としていた。　怒りをむき出しにするでも無く、ただ淡々と目的だけを尋ねる。　男もナイフを突きつけられているというのに、表を変えず何も答えない。

「言わないと殺すぞ」

「無意味だ」

「なに？」

「私は、いや…私たちは死を恐れない。こんな事をされても口は割らない」

男も淡々とそう言い、靜かに目をつぶる。　まるで男は「さっさと殺せ」そう言っているよな気がした。

「お前に、家族は居ないのか」

「私はただ殺すために作られた。オリジナルであるお前からな……」

「！！　な…何を言っている……」

雄介は男の言っている言葉の意味が分からず困する。