《草食系男子が食系子に食べられるまで》第15章 文化祭の開始10

「なぁ……一どうなってんだよ…」

狀況を見ていた堀は困していた。 クラスメイトが今、首筋に何かを押し當て、その瞬間に苦しみだし、瞳のを変変させて、この事態を引き起こした元兇である滝沢を睨んでいる。

「なぁ……今村って何者なんだよ!」

「あぁん? あぁ、そうか……こいつらは雄介とあたしの過去を知らないんだったねぇ~」

の言葉に、北沢は笑みを浮かべて答える。 この場に連れてこられた、堀達クラスメイトや沙月と優子、そして織姫と倉前も堀と同じ疑問を浮かべていた。 優子や沙月、そして織姫は特に知りたかった。 雄介が何を隠していたのか、雄介とこのに一に何があったのか。

「…雄介が言っていた、家族の敵……それがあんたなのか…」

口を開いたのは慎だった。 真剣な表で滝沢に尋ねる。滝沢は慎の方に視線を移す。 別に、を縛られている訳ではないのに、慎はきが出來なかった。 滝沢の狂気に満ちた視線が、不気味な笑みが、慎のきを封じているかの様だった。

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「あぁそうだよ、男君。私が十年前、雄介から家族を奪ったのさ! 両親はすぐ殺しちゃってねぇ~、遊び足りなかったよ~、でも姉の方は最高だったねぇ~。最後の最後まで、雄介をかばって、海に落ちて沈んでいったよ~。あの子は面白かったよ……でも、バカだったからねぇ~」

得意げに語る滝沢に、その場に人質として連れてこられた全員が恐怖をじた。 人を人と思わない言に、この狂ったような格。その場の全員が、滝沢を普通ではないと思った瞬間だった。

「おい、んな事はどうでも良い、それよりも……」

「なんだい? しくらい良いじゃないか、思い出話くらいしたってさぁ~」

雄介はアンプルをに打ち込んでから、初めて言葉を発する。 見た目は変化したが中はいつもと変わらない雄介。

「さっさと始めよう。俺もこれを打つのは十年ぶりだからな……」

「あはは! 良く持ってたね、そんな試作品。への負擔が半端な言って言うのにねぇ~」

「あぁ、それでもお前を殺すには十分すぎる武だ。それに、こいつらが俺と同じだとしても、俺は絶対に負けない」

雄介を取り囲むように、スーツの男たちは雄介にジリジリト詰め寄る。 そして、懐から全員が拳銃を取り出し、雄介に向ける。

「負けない? 無理無理。こいつらに投與したのはあんたの実験で使ったを更に強化した完版だぁ~。勝てるわけがないんだよ! いいかい! 半殺しにしな! とどめを刺すのは私だよ!」

「はい」

答えたのは、先ほど雄介と廊下で一戦えた男だった。

「おい、お前は我々の先輩にあたるのであろう? ならば、大人しくやられてはくれないか?」

「そういう事は、俺に一発でも打ち込んでから行ってみろ後輩」

雄介は拳銃を構えて淡々と話す男にそういう。 男は一切表を変えない。そしてそのまま再び口を開く。

「俺たちは、ただ殺しをするために作られ、殺すために毎日を生きて來た。何百何千という命を奪い、命の価値なんてものもわからなくなった今。自分の命でさえも惜しいとは思わない、今村雄介、貴様がどんなに強かろうと、我々は全員捨てで貴様に向かって行くぞ」

男の淡々とした口調に、雄介も眉一つかさずにじっと聞きっていた。 そして、雄介は男に短く答える。

託は良い、さっさと來い」

短く一言だけ雄介は言う。 男は雄介の返答を聞くと、呼吸を整えて、他の8人に指示を出す。

「やれ」

短く一言、男が告げると、一斉に拳銃の引き金を引く。 拳銃から発された弾丸は、雄介に向かって飛んでいく。 雄介はよけようとしない、両腕で顔を覆うように隠し、すべての銃弾をけた。

「雄介!!」

「い、今村!」

「いやぁぁ!!」

その景を目の當たりにしたクラスメイトは聲を上げる。 織姫と優子は泣きび、慎は怒りの表を浮かべて狀況を見ていた。

「あはは、全部けてどうすんだろうね~。まぁ、でも薬を投與したんだ、死んではいないだろう?」

滝沢は笑いながら、スーツの男に確認するように指示をする。 しかし、次の瞬間雄介は何事も無かったかのように、スーツの男たちに毆り掛かってきた。

「おらぁ!!」

「ぐわっ!!」

「な、なぜだ! 銃弾はしっかりとに!」

雄介は傷一つ無い狀態で、スーツの男を一人、また一人と毆っていった。 発砲の指示を出したスーツの男は、それまでの無表な顔つきが一変し、驚きの表を浮かべながら、雄介の様子を見ていた。

「おやぁ? なんで流すらしていないんだろうね~、まさか……フフフ、やっぱり最高だよ、雄介ぇぇぇ!!」

滝沢が何かにづき、今までにないび聲を上げる。 そうこうしている間にも、スーツの男は雄介によって倒され、とうとう指示を出した男一人になってしまった。 雄介はゆっくりとその男の元に近づきながら、言葉を発する。

「お前、名前はあるのか?」

「何を言っている、今村雄介!」

今までの淡白な表とは裏腹に、苦い表を浮かべる男。 雄介は男を睨みながら、靜かに言う。

「……可哀そうだな……」

「……なんだと!」

「俺はすべてを失ったが、両親から貰った名前は殘っている。でも、お前は何もないんだな……」

「黙れ」

「やめろよ、俺はそのさえ殺して、人質を解放できれば、お前らに用はない」

「……黙れ!」

「今からでも遅くない、生き方を変えろ。そののところじゃ、お前らは道として使われるだけだ」

「黙れぇぇぇ!!!」

男はそれまでの態度からは考えられないほど、をあらわにして聲を上げる。 雄介は足を止めて、男を見る。 雄介の表は穏やかだった。

「お前に何がわかる! 心ついたころには既に銃を取り、Kというコードネームを與えられ、人を殺してきた!! 地獄のような日々の中を生きて來た! 今更それ以外の生き方なんて考えられるか!!」

雄介は自らをKと名乗った男の話を聞いていた。 Kは表をむき出しにして、ナイフを構えて雄介に向かって行く。

「……お前も俺と同じか……フン!」

「ぐぁ!!」

雄介は向かってきたKを毆り飛ばす。 Kは倒れ、そのままうずくまる。

「俺はお前らとは違う……俺は、もう……本の化けなんだ……」

「う……一……貴様は……」

Kは言い終える前に意識を失った。 雄介はそんなKに悲し気な視線を送り、視線を滝沢に戻す。

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