《草食系男子が食系子に食べられるまで》第15章 文化祭の開始13

「そうさ、まずは手始めにってとこさねぇ~、これが何かわかるかい?」

そう言って滝沢は江波に拳銃の銃口を向ける。 江波は涙目で顔を青くし、小刻みにを震わせ、恐怖している。 恐怖で何も言えず、ただ震える江波。

「フフフ……いいねぇ~、その恐怖に歪んだ表……今からその真っ白なメイド服を真っ赤に染めてあげるよ」

「い……いや……」

滝沢が一歩、また一歩と江波に近づいていく。 周りのクラスメイトも、滝沢の異常さを目の當たりにしておりけない。 滝沢はその場を恐怖で支配し、楽しむように歩みを進める。

「させねぇって言ってんだろ!」

「な! ブグッ!!」

歩みを進める滝沢の前に雄介が瞬時に立ちはだかり、思いっきり滝沢の腹部に重たい一撃を叩きこんだ。 滝沢は人質とは反対方向の屋上の柵まで吹き飛び、柵にもたれかかるようにして倒れた。

「はぁ……はあ……大丈夫か?」

「い、嫌……」

雄介は江波の方を見て尋ねる。 しかし、江波は安心するどころか、今度は恐怖の視線を雄介に向けていた。 江波だけではない、その場に居た人質全員が、雄介の力を恐れ、恐怖していた。 雄介はすぐさま視線を滝沢に戻した。 皆の顔を見たくなかった。みんなの視線が雄介は怖かった。

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「あはははは! 強い、強い! 流石私のしごきに生きて耐えただけはあるねぇ~。でも、何か混じってるね~、私の他に誰かに戦い方を教わったねぇ~」

「あぁ、姉さんが言っていた空手の道場……そこにし通って、戦い方を教わった。すべてはお前を殺すために」

「いいねぇ~、いいねぇ~。そんな努力も虛しく雄介、あんたは負けるんだ!」

「俺にはもう、負けるなんて選択肢はない。お前を殺す以外に道を考えてはいないんだよ!」

雄介の言葉が終わった瞬間、雄介と滝沢はぶつかり合う。 人間とは思えない反応速度と力で、互いに毆り合い、つかみ合う。 雄介は人質の方に滝沢が近寄らないよう注意をしながら、拳を振るい。滝沢は雄介との戦闘を楽しんでいた。

「やるねぇ~、まさか十年も前の薬でここまでやるなんて、思いもしなかったよ。でも、ダメージが無い訳でもないようだねぇ~」

雄介ののあちこちから、が流れる。 滝沢の攻撃のせいではない、雄介自の限界が近いのだ。

「うるさい……言っただろ? お前を殺す以外の道を俺は考えていない」

「アハハ! いいねぇ~その目……じゃあ、もっと楽しくしようか!」

「なっ!!」

滝沢は足で地面を蹴ると、あっという間に人質の居る場所に立っていた。 そして、一人を選び、滝沢はその一人を雄介に見せるようにして前に出す。 選ばれたのは織姫だった。

「織姫!!」

「お嬢様!!」

雄介と倉前が同時にぶ。 滝沢は拳銃の銃口を織姫の頭に當てる。 織姫は恐怖で泣きじゃくり、言葉も出ない狀態だ。

「雄介、この子とはどんな関係だい? 中々可いじゃないか~、それにお嬢様? まさか金持ちのお嬢さんかい?」

「やめろ! 何をする気だ!」

「え? 殺すに決まってるだろ? そうすれば雄介はもっと面白くなりそうだからねぇ~」

「ふざけんな! そんな事……う、ぐぅ……」

雄介はを押さえて呼吸を荒げる。 への負擔がピークに來ていた。 織姫を助けに行きたいが、雄介の足はかない。 雄介がどうするか考えていると、織姫をかばうようにして、倉前が前に出て來た。 織姫を抱きしめ、いつもの優しい表とは真逆の怒りの表を滝沢に向ける。

「私を打ちなさい! この外道!」

「倉前さん……」

「今度こそ…私が……お姉ちゃんが、貴方を守るから……」

倉前さんは織姫に優しくそう言って、織姫のを抱き寄せる。 その姿に滝沢はまたしても狂ったように、そんな倉前をあざ笑う。

「アハハ! なんだい? しい主人ってやつかい? 良いねぇ~、おみ通りあんたから殺してあげるよ!」

織姫に向けていた銃口を倉前の額に向けなおす滝沢。 雄介はそんな姿を見ながら、ひとり考える、どうやって二人を救うか、どうやって滝沢の元に行くか。

(これしか無いな……)

雄介は殘り2本のうちの1本のアンプルをシュータにセットし、首筋に當てて薬を打ち込んだ。

「うぅぅぅ!! あぁ!! ………はぁ……はぁ……これでいける」

2本目の薬の投與、それは雄介のを極限まで強化すると同時に、にかかる負擔も更に大きくなる。 しかし、今の雄介にこれ以外の考えは浮かばなかった。

「滝沢ぁぁぁ!!」

「な! なんでけ…ぐはっ!!」

雄介は滝沢元に瞬時に移し、今度は顔面に拳をれる。 滝沢はそのまま倒れ込む。 しかし、雄介の攻撃はそれだけでは終わらない、そのまま滝沢の首を摑んで、投げ飛ばす。

「ぐは! な、なんで…もうけないんじゃ……」

「簡単な話だ、もう1本薬を打って無理矢理かした。さぁ、もう終わりにしようぜ……滝沢絵里!!」

「……ふ…フフ……フハハハハハ!! やっぱりあんたは最高だ! 薬の連続投與! それが何を意味しているか! あんたわかっててやったねぇ~」

「あぁ……でも、俺はそれでいい……」

滝沢と雄介はお互いの方を向き、対峙する。 そして、二人同時に相手の方に詰め寄り、またしても攻撃を繰り出し始める。 しかし、先ほどとは違い、雄介が押されていた。

「はぁ……はぁ……う! ぐはっ!!」

「アハハ!! どうしたどうした? もう終わりかい?」

雄介は滝沢の攻撃を防ぐことしかできないでいた。 滝沢の攻撃を防ぎきれなくなってきた雄介は、とうとう脇腹に蹴りをけてしまう。 雄介はそのまま倒れ込む。 それでも滝沢の攻撃はやまない。

「ぐ……く、クソ……」

「なんだい、大口叩いたわりにはもうおしまいかい? まぁ、薬の影響が大きいんだろうねぇ~、よく頑張ったほうだよ。 じゃ、そのまま見てな、お前の大事なが壊れるさまをね」

雄介は倒れたまま滝沢の顔を睨みつける。 滝沢は再び人質の皆の元に向かい、雄介に見えるようにして銃口をちらつかせる。

「ぐ……やめ……ろ……」

「アハハ! バカだね~、あんたはどう頑張ってももう戦えない。それに実際もうあんたの大切なは壊れ始めてる! 私はそれを完全に壊すだけさ!」

「な……なにを……」

雄介は上を起こそうと腕に力を込める、しかしかない。 代わりにに激痛が走る。 滝沢の言った、『もう壊れ始めている』という言葉を雄介はづいていた。 たとえ滝沢を殺したところで、雄介の大切な人たちは雄介と関わるのをやめる。雄介とクラスメイトの皆や友人たちとの絆が壊れ始めているのを雄介は知っていた。 だから江波をかばった時、雄介は皆の目を見るのが怖かったのだ。化けを見るような、その視線が……。

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