《草食系男子が食系子に食べられるまで》第16章 新たなる朝

事件當日の話をしようと思う。 俺こと山本慎が通う高校が殺人鬼に襲撃され、俺はその事件に巻き込まれた。 この事件は全國的なニュースとなったが、詳しい報道は規制され、本來の出來事とは異なっていた。 雄介が気絶し、殺人鬼のも気絶し、人質は解放され、すぐさま警察の機隊が學校の屋上に突してきた。 小畑という刑事の話では、この事件にかかわっていた連中の事は機扱いになっており、その場に居た全員に匿義務が課せられ、他言はしないように言われた。 雄介はそのまま病院に搬送されたが、その病院の場所も俺たちに知らされることは無かった。 加山はひたすら雄介を心配し、毎日雄介の院先を探している。 他のクラスメイトは、まだあの時の事を信じられず、今村雄介という人間に疑問を抱いていた。 しかし、そんなクラスメイトの中にも、雄介を信じる奴がいた。江波と堀だ、短い間であったが、雄介と接する時間があったため、雄介を普通の友人として心配し、帰りを待っている。 そして、事件後の久しぶりの學校に、俺は來ていた。

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「おはよー」

「おう!」

「久しぶり」

學校は実に一週間ぶりだった。 現場検証だ、なんだと休校になっており、クラスメイト全員が顔を合わせるのは久しぶりだ。 俺はいつも通り席に座り、ホームルームが始まるのを待つ。

「お~し、ホームルーム始めんぞ~」

擔任の石崎が教室へとってきて、いつものように點呼を取る。

「今村は……當分欠席っと……」

そこで飛び出した雄介の名前に、教室はざわつく。 いくら匿義務があると言っても所詮は學生。 噂になってしまうのも早く、事件當日の雄介を見たクラスメイトが々な噂話をしていた。

「まぁ、々あったが、今日から通常通りの學校生活に戻っていく。學園祭は殘念だったが、まぁ、犯人も捕まったし、安心して學校生活を送ってしい、以上だ」

ホームルームが終わり、俺はふと雄介の席を見る。 つい先月まで一緒に笑い合っていた親友は居ない。 すべてを投げ出して、雄介はあの滝沢というと戦い、ボロボロになって倒れた。 一、あいつは何処で何を間違ってしまったのだろう。 一緒に居て、なぜあいつは俺に相談してくれなかったのだろう。 今ではそれもわからない。

「……退屈だ」

雄介が居ないと面白くない、何もする事が無い。 俺は機に突っ伏して目をつぶる。 あの日の出來事がすべて夢だったらどれだけ良いものか思いながら……。

「おーし、今日はここまでだ。気を付けてかえれよ~」

いつの間にか授業が終わっていた。 俺はさっさと帰り支度を済ませて、學校を後にする。

「寒いな……」

もう10月も終わり、11月になる。風は冷たく、気溫も低い。 帰る途中で、ふと俺はよく雄介と通ったバッティングセンターやゲームセンターに立ち寄った。

「つまんね……」

どこも一人ではつまらないだけだった。 いつも隣にいたはずの雄介はそこには居ない、なにをやってもつまらない。

「帰ろ……」

俺はさっさと帰ろうと思い、足を自宅の方に進める。 最悪な事に雨まで降ってきたようだ。 頬に雫が垂れてくるのがわかる。 空はこんなに綺麗な秋晴れだというのに……。

私、加山優子は最近ありとあらゆる病院を駆け回っていた。 理由はもちろん雄介を探すためだ。

「……そうですか……ありがとうございます……」

また駄目だった。 これまでで30以上の病院に出向き、電話で確認を取った病院は數えきれない。 一人暮らしの部屋で一人、私は雄介と取った初めてのツーショットを見ながら一人涙を浮かべる。

「……雄介」

思い人の名をつぶやきながら、私は一人部屋で泣き続ける。 警察も學校の先生も誰も雄介の院先を教えてくれない。

「……會いたいよぉ………」

もう會えない、もう聲を聴くことが出來ない、そう思うと私は涙が止まらなかった。 どんな過去があってもどんなであろうと、私の雄介に対する気持ちは変わらない。 ただ大好きだから、私は彼を探し続ける。

「里奈……悲しいのは分かるけど、學校は行きなさい」

母が私、今村里奈に優しくそういうのは、本日3回目。 弟であるユウ君が院してもう一週間。學校も今日からなのだが、私は行く気になれない。

「……何度も言ってるでしょ……ユウ君は何処に居るの……」

何回も母に聞いた、毎日毎日尋ねた。 それなのに、母は教えてくれない、父が病院に付きっ切りで看病しているらしいが、なぜか私にはお見舞いも面會も許してくれない。

「何度も言ってるでしょ……今は言えないわ」

「なんでよ! 家族なのよ! 確かにはつながってない! でも。家族なのよ! なんでお見舞いも行かせてくれないの!!」

「駄目なのよ……今は……行って後悔するのは、貴方なのよ……」

私はあの日、現場に居合わせる事が出來なかった。 最後に雄介を見たのはあの日、お化け屋敷で別れた時の顔だけ。 他人からの説明では狀況はよくわからない、でもユウ君は結局、仇を打とうとして戦い、ボロボロになって病院に運ばれたらしい。

「なんで……私は……私は………」

顔を見て安心したかった。 いなくなっては居ないんだ、死んではいないんだという確証がしかった。

「……ごはん、今日は出前取るわ……」

そう言って母は部屋を後にした。 私は一週間、部屋で泣き続けた。 大切な人が居ない、いつもそこにいる場所に居ない、私は泣くことしかできなかった。

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