《草食系男子が食系子に食べられるまで》第16章 新たなる朝11

「あの……お見舞いですか?」

雄介はドアの前に居る優子に聲を掛ける。 優子はそんな雄介を見て涙をこぼした。

「え…ちょ……どうかしましたか?」

雄介は急に涙を流す優子に驚き、戸う。

(なんで…お見舞いに來る人全員、泣いているんだ……)

雄介は同時にそんな事を思っていた。 今日病室にお見舞いに來た人全員に共通する事であり、雄介が一番困る反応だった。 確かに、怪我をして院した友人や知人が無事で、うれしくて泣いているのなら雄介も納得がいく。 しかし、雄介のお見舞いに來た人全員、別な理由でも涙を流していた。 それが、雄介にとっては凄く困るものだった。

「ご……ごめんなさい……記憶……無いんだよね?」

「えっと……泣いている貴方にこんな事を言うのは失禮だと思いますが……まったく覚えていません……貴方の事も……」

雄介は申し訳なさそうに、優子に言う。 優子は涙を流しながら「そっか…」っと一言だけ言う。

「立ち話もなんですから、座ってください。自分も々聞いてみたいので」

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雄介は自分のベッドに戻り、優子にベッドの脇の椅子に座るように指示する。 優子は言われるまま、椅子に座る。

「すいません、最初に貴方の名前と自分との関係を教えてもらっても構いませんか?」

「そうよね……覚えてないんだもん、自己紹介しないとね」

優子は涙を拭き、笑顔で雄介にそう言うと、自分と雄介の関係を話し始める。 今までの事や學校でどのように過ごしていたか、雄介が自分に何をしてくれたか。 雄介はその話を靜かに聞いていた。

「……學校ではこんなじだったよ」

「そうですか……じゃあ、自分と加山さんはクラスメイトなんですね……」

「……うん」

優子は、自分が雄介に告白をして振られている事を伏せていた。 そんな事を急に話しては、雄介がびっくりしてしまうと思ったからだ。

「でも、びっくりしました」

「え?」

「加山さん見たいな可い人と、自分が友人だったなんて……自分たちはどうやって仲良くなったんですか?」

「それは……」

優子は悩んだ、ここで打ち明けてしまうのが良いのか、それとも言わない方が良いのか。

「……私ね、貴方が好きだったの」

「え……」

優子は正直に言う事を選んだ。 記憶が戻らなくても、雄介を好きだという気持ちに、優子は変わり無かった。 だから、記憶が無くなっても自分が雄介を好きだという事を、雄介に伝えると同時に自分い言い聞かせていた。

「私はね、雄介が大好きで……告白して…振られて……でも、雄介は好きでいてくれてありがとうって言ってくれて……振ったはずの私を助けに來て……もう、どうやって諦めろって言うのよ、雄介みたいな良い男」

「そ、そうだったんですか……」

雄介は織姫に続き、思いを打ち明けて來た優子に驚く。 恥ずかしさもあり、雄介の頬はほんのり赤く染まり、思わず優子から目を逸らした。

「フフ、前の雄介は絶対そんな反応しないわよ? きっと、無表で『あぁ、ハイハイ』って私をあしらうでしょうね……」

「なんていうか……俺最低ですね……」

「そうかもね、でも私はそんな雄介が好きだったのよ……」

病室に長い沈黙が流れる。 時間にすれば數分だっただろうが、雄介と優子には何時間にもじられた。 そんな沈黙を破り、話を切り出したのは雄介だった。

「やっぱり……自分が貴方を振った理由は、前の自分の質があったからなんでしょうか?」

「そうね……でも、私は諦める気なんて無かったわ……いつか雄介の質が治って、ちゃんと私を対象として見てくれるようになるまで、私はいつまでも待つつもりだった」

「……あの、一つ良いですか?」

雄介はし複雑な顔をしながら優子に話を切り出す。

「ん? どうかした?」

「いや……前の自分が貴方の事を質で振ったのだとしたら、その質が無かった場合はどうだったのかなって……」

「え……」

雄介の言葉に、優子は目を丸くする。

「それはどういう意味?」

優子は雄介に尋ねる、すると雄介は「失禮します」と言うと、優子の手を握った。 優子は驚いたが、雄介のに異常が出ない事を確認すると、更に驚き聲も出なかった。

「自分は、記憶が無いので、告白の返事や、自分が貴方をどう思っていたのか分からない……でも、今の自分は子恐怖癥ではありません。加山さんの手もこうやって握れます」

「……そ、そうなんだ」

優子は驚きやうれしさがり混じった複雑なで、雄介に応える。 ずっと雄介とこうしたかった、普通に手をつないでドキドキしたり、抱き著いたりしたかった。 今なら、雄介にそのすべてが出來る。 しかし、雄介の記憶はない……。

「多分ですけど、前の俺は……貴方の事を気にっていたんだと思います」

「え……」

突然の雄介の言葉に、優子は頬を赤らめる。 確かに最近は仲が良くなってきたと思っていた。 しかし、雄介が自分を気にっているとは、あまり思えなかった。

「だって、普通振ったを……しかも恐怖癥なのに仲良くなんてしませんよ……まぁ、ただの憶測ですけど」

「……」

雄介は手を離し、優子の方を見る。 優子はまた泣いていた。 優しく笑いながら、雄介を見て泣いていた。

「雄介は……本當に優しいね……記憶が無くても……」

「正直、話を聞く限りはあまり優しいじではなさそうですけど……」

「フフ、確かに今は特別優しいかも……」

優子は涙を拭きながら、雄介に笑顔で答える。 雄介はそんな優子を見て思う。なぜこんなにいい子が自分を好きなのだろう、こんなにも自分がされているのだろうかと……。

「ごめんね……もう遅いから帰るわ」

「あぁ、はい。遅いので気を付けて……」

そう言うと、優子は立ち上がり突然雄介の顔に自分の顔を近づけて來た。 雄介は突然の事に驚き、を引き顔を赤くする。

「あ、あの……」

「本當は口が良いけど……今はここ」

そう言うと優子は、雄介の頬にキスをした。 雄介は頬に伝わってくる優子の溫をじ、更に顔を真っ赤に染める。

「大好きだよ……記憶が無くなっても……」

優子は優しく雄介の耳元でそうつぶやき、病室を勢いよくっ飛び出した。 殘された雄介は、先ほどまで優子のれていた部分をなぞり、頬を赤く染める。

「……俺って……本當に何者なんだ…」

今日一日で起きた々な事を思い返しながら、雄介は一人、病室で考え込む。

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