《草食系男子が食系子に食べられるまで》第17章 帰宅と登校2
「えぇ、寢る時も一つのベッドに二人で毎晩くっ付いて寢て居たわ」
「……」
「雄介、気づいていると思うけど、噓よ……」
「はい、なんかそんな気がしました」
段々と里奈との接し方に慣れて來ていた雄介。 一人で話を続ける里奈を殘し、三人は家の中にっていく。
「お、お邪魔します」
「違うわよ、雄介」
「え…?」
先に家にった紗子に言われる雄介。 しかし、何が違うのか雄介にはわからない。 そんな雄介を見かねてか、玄が雄介に笑顔で言った。
「ここは雄介の家なんだよ。だから帰って來た時に言うことが他にあるだろ?」
「あ……た、ただいま…」
「「お帰り、雄介」」
雄介は変なじがしていた。 全然知らない家のはずなのに、なんだか懐かしいじがして、どこか安心した。
「雄介の部屋は二階だったのよ」
「そうなんですか?」
雄介は紗子に手招きをされ二階への階段を上がり、紗子の後をついて行く。
「ここよ、部屋は貴方が居なくなってから一切ってないから、し埃っぽいかも」
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「ここが……」
記憶を無くす前の自分の部屋。 雄介は自分を知ることが出來る一番の手がかりが、この部屋にあると思うとなんだかドキドキした。 紗子が部屋のドアを開けて雄介に中を見せる。 きっちりと整頓されており、散らかっている様子はない。
「片付いてますね……」
雄介はそう言いながら、足を部屋の中に進めキョロキョロと部屋の中を見回す。
「雄介は綺麗好きだったから、直ぐに散らかしちゃう私達にとっては、いつも掃除をしてくれて助かっていたわ」
「そうなんですか………ん? これは何ですか?」
「それは……」
雄介は機の上の寫真を指さし、紗子に尋ねる。 機の上には二つの寫真が飾られている。 一つは紗子達、今村家の全員と一緒に寫っているもの。 そしてもう一つは、雄介が本當の家族と映っている寫真。
「この寫真は……自分の元の家族ですか?」
「……えぇ、そうよ」
紗子はそれ以上何も言わなかった。 言えなかったのだ、急に元の家族の話をしても雄介を混させるだけだと思ったからだ。
「これが……うっ!」
「どうしたの?! 雄介!」
雄介は突然頭を押さえて苦しみ出す。 そんな雄介を見た紗子は気が気ではない、慌てて雄介の元に駆け寄る。
「痛い……頭が…割れる……あ……」
「雄介! 雄介!」
雄介はそのまま紗子にもたれ掛かるようにして倒れる。 紗子は涙を浮かべて雄介のな目を呼ぶ。
*
真っ暗で何もない世界だった。 どこまで行っても真っ暗で、自分がどこにいるかさえもわからない。
「ここは……」
雄介はそんな世界に一人立ち盡くしていた。 周りには何もなく、ただ真っ暗で靜かだった。
『よ、俺』
「誰だ!」
振り返るが誰も居ない、聲はするが人影すら見えない。 それ耳かと思ったが、違うらしい。
『おまえ……俺の代わりになってくれよ……俺はもう……戻れない』
「何を言って…」
『俺はあいつらに合わせる顔が無い……元々居なくなる覚悟だったんだ、後悔はないさ』
聲は言葉を続ける。 雄介は聲の主を探して辺りを見回すが、誰も居ない。 一誰が自分に語りかけているのか、雄介はそんなこの狀況が、不気味だった。
「誰なんだ! ここは一!」
『頼むぜ、お前の方があいつらと居るにはふさわしい。こんな……俺みたいな化けと違って……』
「だから誰なんだ! 教えてくれ!」
雄介は必死に問いかける。 しかし、聲は何も答えない。
『お前はそのまま、普通に生活を送ってくれ、そうしていれば、自然に俺は消える』
「消える? なんのことだよ……」
雄介は訳が分からなかった。 聲の主が何を言いたいかも、何を伝えようとしているのかも、全く分からなかった。
『じゃあな、そろそろ紗子さんが心配で倒れそうだ。戻ってやってくれ』
「待ってくれ! なんで紗子さんを知ってる!」
雄介は必死に語りかける。 しかし、聲はどんどん遠くなっていく。
『……じゃあな、俺』
「! ま、まさか……俺?!」
聲がどんどん遠くなり、聲が完全に消える瞬間、雄介は確かに見た。 自分の前方を歩いて行く、もう一人の自分の姿を……。
*
「……すけ! ……ゆう……すけ!」
誰かが自分を呼んでいる。 雄介はいつの間にかベットに寢かされており、目を覚ますと紗子が涙を浮かべて自分を呼んでいた。
「雄介! 大丈夫??」
「……自分は一……」
「急に倒れてびっくりしたわよ! 大丈夫?」
「はい……あれは一……」
頭を押さえる雄介、頭痛は消えており、痛みは無い。 あの聲は何が言いたかったのか、あれは一何だったのか、雄介は気になっていた。
「大丈夫? やっぱりまだが……」
「いえ、きっと疲れてしまったんですよ。大丈夫ですから…」
雄介は紗子に笑顔でそう告げると、を起こす。 紗子はとりあえず大丈夫そうな雄介を見て安心する。
「あんまり無理しないでね……退院したばかりなんだから、何ならし寢てても良いわよ」
「ありがとうございます。それじゃあ、ちょっと橫にならせてもらいます」
紗子は雄介の部屋を後にした。 部屋に一人殘った雄介は、あの不思議な験を思い出していた。
「一何だったんだ……消えるって……」
聲の主の言葉を思い出す。 そして最後に見た、自分とうり二つの人影の姿。 一何を伝えたかったのだろうか、それとも雄介自のただの夢なのだろうか……。
「はぁ……俺は、本當に俺なのか……」
自分のを見ながらそんな疑問を抱く雄介。 なんだか別人のにって生活をしている気分だった。 視線を傾けると、そこには俺のらしいものが部屋に置いてあるが、なんで買ったのかもなんで持っているかも一切思い出せない。
「上手くやっていけるのかな……」
これからの生活に心配しかじない雄介。 ベッドから立ち上がり、部屋をし始める。
「自分の部屋なんだし……大丈夫だよな?」
他人の部屋を家探ししている気分になり、なんだか悪い事をしている気分になる雄介。
「アルバム……か」
雄介はクローゼットの中から一冊のアルバムを見つけた。 表紙には今から5年ほど前の年號と日付が書いてあり、中は綺麗に整理されていた。
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