《草食系男子が食系子に食べられるまで》第17章 帰宅と登校8
最初に切り出したのは優子だった、頭にが上っているのか、先ほどまでの恥じらいなどどこかに捨て去り、勢い任せに言葉を発する。
「私の方がキスしてるんだから一歩リードよ!」
それに対抗するかのように、織姫も目くじらを立てて反論する。
「頬にじゃないですか! 私だったら…く……口に行けます!!」
それを聞いていた里奈は、段々と狀況を理解し始める。 そんな里奈の様子を雄介はアタフタしながら見つめていた。 里奈の背後から、何か黒いオーラが出始める。 やがて里奈はゆっくりと雄介に近づいてきた。雄介はの危険をじ、助けを求めようと両親の方を見るが、ちょうど二人はどこかに行ってしまっていない。 慎の方に視線を向けても慎は首を橫に勢いよく振って「俺には無理だ」とアピールしている。 一か八かで堀と江波に視線を向けると、二人は口笛を吹いてそっぽを向いている。
「ゆ~う~く~ん」
「は、はい!」
そうこうしているうちに、里奈は雄介の元にやってきて、黒い笑みを浮かべながら、雄介に尋ねる。 雄介はは覚えているのだろう、震えが止まらず、背中からは変な汗が出てきていた。
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「あの二人が言っている事は本當?」
「そ、そう言いますと…?」
「キス……したの?」
まるで心霊験をしている気分いなる雄介。 姉である里奈のが重たいのは知ってはいたが、ここまでとは思わなかった雄介。 これは噓を言っては直ぐにバレると思った雄介は、あの日の二人との出來事を正直に里奈に話す。
「そう……ほっぺにね……」
「は、はい……」
「なんだ、それなら大した事無いじゃない」
「え?」
先ほどまでの黒いオーラが消え、里奈はケロッとして笑顔で言い爭いを続ける二人の元に行き、仲裁にり始めた。
「そこの二人、よく聞きなさい!」
「な、なんですか貴方」
「お姉さん邪魔しないでよ!」
先ほどまで言い爭いを繰り広げていた二人が、里奈の方に向き直る、里奈はなぜかドヤ顔で話始める。
「ほっぺにちゅう位で騒いじゃって、おめでたいわね」
「「な、なんですって!」」
そして里奈は、二人と隅で丸くなっている里奈に対して、核弾並みの大きな弾を投下する。
「ユウ君のファーストキスは、私がもう奪った後なのよ!」
里奈の発した言葉に、周囲の人間全員が振り返り、言葉を失う。 數秒の沈黙の後、リビングに居た全員が聲を上げて驚く。
「「「「「「はいぃぃぃぃぃ!?」」」」」」
これには雄介も驚いた。 おそらくは記憶を無くす前の話であろうが、まさか自分が姉とキスをするような関係だったなんて思いもしなかった。 先ほどまで言い爭っていた織姫と優子は、ドヤ顔を続ける里奈に対して詳しい説明を求めていた。
「フフフ、ほっぺにチュウで騒いでいるようじゃ、私には勝てないわ! 私は雄介に今からベッドでセ……」
「お願いですからそれ以上はやめて下さい! 倫理的に!」
何かとんでもない事を言われそうだと悟った雄介は、里奈の言葉を止める。 先ほどまで言い爭いをしていた二人は顔を真っ赤にして固まり、凜は丸くなったまま倒れ込んでしまっている。
「な、な…なな……そんな…まさか…」
「ど、どうせお姉さんの噓でしょ!」
「殘念ね、これは本當よ、わかったらもう二人はユウ君からを引きなさい、ユウ君は私のモノって決まってるんだから」
「俺に権利はないんでしょうか……」
「無いわ!」
(曇りなき瞳でこの人は凄い事を言うなぁ……)
完全に狀況をややこしくする里奈に、雄介はため息を吐いて頭を押さえる。 しかし、同時になぜか懐かしい覚を覚えていた。 こんなにも頭の痛い狀況なのに、記憶のどこかでは懐かしく思い、どこかこの日常に安心を覚えている。
「なんだか、戻ったってじで良いな……」
そう言ったのは慎だった。 先ほどまでのニヤニヤと狀況を楽しんでいるような表では無く、どこか安心した表で言い爭う三人を見ていた。
「どういう事?」
雄介は慎の言葉の意味が気になり、尋ねる。 慎はそんな雄介に笑いながらこういった。
「俺の……いや、俺たちの大好きな日常がやっと戻ってきたと思ってな……」
雄介にはいまいちピンとこなかったが、それに同調した人がもう一人いた。
「そうね……やっぱり、優子はあぁじゃなくちゃね」
「あぁ、そうだな…」
沙月が食事を終えて、雄介と慎の話に混ざってくる。 この二人の言っている日常がどういうなのか、雄介は良く分からなかったが、なぜだか雄介は嫌な気分にはならなかった。
「なんだか……懐かしい気がするよ…」
「あぁ、そうだろうな、お前の日常はいっつもこんなじで騒がしいんだよ」
「でも、悪くは無いわ……見ている方はだけど」
「當事者の気持ちも考えてくれよ…」
いつかは思い出せるのだろうか? そんな事を考えながら雄介は狀況を見守る。 しかし、いまだにわからない事がある。 自分がなぜ記憶を無くしたかという理由だ。 普通なら記憶を戻すきっかけになるかもしれないのに、誰も雄介にその事を話したがらなかった。 こんな慌ただしい日常を過ごしていた自分であるのならば、一どんな理由であそこまでの怪我を負い、記憶を失ったのか、ますます気になり始めていた。
「二人に聞きたい事があるんだ」
「ん? どした?」
「何かしら?」
雄介は気が付くと聲に出して慎と沙月に尋ねていた。
「俺は、なんで記憶を失ったんだ? なんであんな怪我をしていたんだ?」
「「……」」
二人は困った顔をで何も答えない。 雄介はもう限界だった。何も知らないまま、日常生活を送れる自信が無い、一刻も早く記憶を戻したい。 雄介は今日は何を言われても引く気は無かった。
「雄介……ちょっと外行こうぜ…」
雄介の気持ちを察したのか、慎は雄介を外に連れ出そうとする。 しかし、沙月はそれを許さなかった。
「ちょっと! 話すつもりなの! 早すぎるわよ!」
「早くなんかねぇよ。遅すぎたんだ……それに、學校に行ったら、嫌でも耳にる……」
沙月はそれ以上言葉が出なかった。 慎のもっともな言い分に、反論できなかったのだ。
「行こうぜ、散歩しながら話すよ」
「う、うん」
雄介はドキドキしていた。 ようやく自分の記憶が無くなった理由がわかる。 その事で頭の中は一杯だった。
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