《草食系男子が食系子に食べられるまで》第17章 帰宅と登校14
「あの事件だって、一歩間違えば死人が出ていた! しかもだ! 今村はそれを知っていたにも関わらず、我々教師にその事を黙っていた! 今村に一切責任が無いとは言えないのではないですか?」
「……」
「我々教師は、親さん達から大切なお子さんを預かっている。危険を招く存在が居るのなら、即刻退學にすべきです! 學の時だって、私は反対したはずだ! それを貴方が強引に校長を説得し、學させてしまった事で、今回のような事件が起きてしまった! 聞けば、警察にも何回か厄介になっているらしいではないですか! それでも貴方は庇えますかな?」
湯島は言い終えると得意げな顔で石崎を見る。 石崎は黙って聞いていたが、湯島が言い終えたのを確認すると立ち上がり、湯島の正面に立って言う。
「言いたい事はそれだけでしょうか? 湯島先生?」
「な…なんだと!」
「なら、次はこちらの番ですね……確かに貴方の言う通り、我々は親さんからお子さんたちを預かっている立場だ、それは今村も変わらない」
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石崎は今まで眠たそうな表から一片し、眉間にシワを寄せて湯島に話始める。
「我々教師は、不審者から生徒を守る義務がある、しかし今回の事件、生徒を守ったのは我々教師ではない、今村だ!」
「そ、それは……」
「確かに、原因は今村の過去にあったかもしれない、しかし、こいつだって被害者だ! 好きで事件に巻き込まれたわけでは無い! しかもこいつは、我々に迷を掛けまいと、親しい刑事に連絡を取り周辺の警備を頼んでいた。これでも今村が責任をじていないと言えますか!」
「だ、だが…校では最近、今村絡みの暴力事件だって……」
「それを見て見ぬふりをしてきたのは、どこのどなたでしょうな?」
「うっ……」
石崎の言葉に、湯島は段々押されて行く。 雄介と慎はそんな二人の會話を黙って聞いていた。 職員室中の視線が二人に集まり、二人以外は誰も言葉を発しない。
「それに、今村は績も優秀です。私には今村が誰かに喧嘩を吹っ掛けるような生徒には思えませんな……」
「しかし、最近では今村の悪いうわさが校に出回っている。これが何よりの証拠では!」
「噂? そんな、どこから出て來たかも知れない、デマの可能の方が大きい。貴方は教師でありながら、そんなで生徒の評価を決めるのですか?」
「う…うぅ……」
「私もハッキリ言います。貴方は教師失格です。特定の生徒を教師が目の敵にするなど、あってはならない……」
  言い終えて、石崎は再び椅子に座り、背もたれに全を預ける。 大恥をかかされた湯島はプルプルと肩を震わせ、怒りをあらわにしている。 そして、湯島は勢いにまかせて言葉を発した。
「そんな化けの何が生徒だ! 怪我が一瞬で治る上に、能力だって異常に高い、そんなの持ちぬし……を……」
石崎は椅子を蹴り飛ばし、湯島の倉を摑み言葉を止めさせる。 石崎の行に、職員室は一瞬騒然となった。
「もう一度行ってみろ! お前に今村の何がわかる! こいつはずっと悩んでいたんだ! みんなと違う自分を!! 自分の事を自ら化けと蔑み! 一人でずっと!!」
「あ……う……」
「だから、極力誰ともかかわりを持とうとせず、自分から孤獨を選ぼうとしていた! あんたにそんな今村の何がわかる!」
石崎は怒りにを任せ、湯島に毆り掛かろうとする。 しかし、そんな石崎を止めた人がいた。
「これこれ、落ち著きなさい。彼らもいるんだから…」
「赤坂先生……」
石崎を止めたのは、らかい笑みを浮かべる赤坂先生だった。 赤坂は石崎の拳に手を置き、湯島を離すように指示をすると、雄介と慎を見て笑顔で言う。
「二人とも、もう行きなさい」
「は、はい……」
「行こうぜ、雄介」
そう言って雄介と慎は職員室を後にしようとする。 雄介が職員室を出ようとした瞬間、赤坂は雄介に向かって笑顔で言葉を掛ける。
「今村君、君は化けなんかじゃない、わしらと同じ、赤いが流れた人間だ。気にしてはいけないよ」
「は…はい」
雄介は返事をして職員室を後にする。 殘った職員室には沈黙が殘り、赤坂がらかい笑みを浮かべて、言い爭っていた二人に言う。
「不安になる気持ちも、許せない気持ちもわかります……しかし、生徒がいる前でする話ではありませんよ?」
「す…すいません……つい」
石崎は赤坂に謝罪しする。 湯島は立ち上がり、フンと一言鼻を鳴らし、職員室を後にする。
「今日の職員會議は荒れそうですなぁ~」
「め、面目ない……」
「しかし、私は見直しましたよ」
「え?」
「石崎先生が、生徒をあそこまで思っていたなんて……あの言葉は今村君だけではない、彼を知る皆を代表して言った言葉だったのでしょう?」
「……はい、最近々思う事があって……」
石崎は赤坂の優しい言葉に気まずそうに答える。 そんな石崎の肩をポンポンと二回、赤坂は叩きその場を後にする。 石崎にも自分らしくなかったという事は分かっていた。 ただ、湯島の言葉どうしても許せず、思わずあのような行に出てしまっていた。
「なにやってんだ……俺は」
椅子にもたれ掛かり、石崎はため息を付く。 ただでさえ事件の事で、教師陣も皆ピリピリしているというのに、こんなところで自分が問題を起こしてしまうなんて、そう考えながら石崎は目を閉じる。 職員室は、いつもの雰囲気を取り戻し、みんなの視線は石崎から離れていた。 そんな中で、石崎の元によって行く、男教師が居た。
「石崎先生、すごい啖呵でしたね! 僕、スカッとしましたよ!」
「お、大友先生、見ていらしたんですか……お恥ずかしい」
「いえ! あの言は許せませんよ! 人としてどうかと思います! 僕は大友先生の味方ですから!」
「あ、ありがとうございます……」
下手な想笑いを浮かべながら石崎はそう答える。 しかし、心石崎は見方が居ることに安心していた。 石崎の味方と言う事は、自的に雄介の味方という事にもな、石崎はそれが一番うれしかった。
「今村……お前は一人なんかじゃないんだぞ…」
石崎は初めて雄介と會った日を思いだしながら、ぽつりとつぶやく。 學する前、石崎が雄介のを知ったあの日の事を……。
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