《草食系男子が食系子に食べられるまで》第18章 石崎の過去

「あの……石崎先生…」

「あ、葉山先生……すいません、お騒がせしまして……」

心配そうな顔をしながら、葉山は石崎に近づく。 葉山は、あんなにも的になった石崎を見たのは、初めてだった。

「先生は知っていたんですか……あの……今村君の事……」

「そりゃあ一応擔任ですからね……」

石崎は目を細めて葉山に優しく言う。 教師の中で、雄介のすべての事を知っている人間は限られていた。 大抵の教師は、い頃に目の前で両親を殺された事とに対してが拒絶反応を起こす事だけだったのだが、今回の事件がきっかけで、教師全員が雄介の過去を知った。

「いつから知っていらしたんですか?」

「あいつが學する前ですよ……合格発表が行われて直ぐでした……」

「良かったら聞かせていただけますか?」

「面白い事なんて何もありませんよ? こんないい天気の日だったのは覚えていますが……」

石崎は窓の外を見ながら、葉山に雄介と出會った時の事を話し出す。

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俺、石崎勇吾は休日にも関わらず、學校の校長室に呼び出されていた。 何かしてしまったかと、若干焦ったが、穏やかな校長の顔を見て、一安心する。 ではなぜ、こんなところに、しかも休みの日に呼び出されたのか、俺は更に疑問を浮かべる。 季節は春、來月の頭には學式も控えており、新しい生活が始まろうとしていた。

「すいませんね~お休みの日に……」

「いえ、どうせやる事も無いですから」

「ははは、若い者が休日もゴロゴロしていてはいけませんぞ~」

常に笑顔で校長は俺に向かって話を続ける。 溫厚で優しく、校長でありながら生徒からの人気が高いこの人は、ニコニコしながら話を続けた。

「それにしても……早いですな……あれからもう7年………」

「……もう、流石に立ち直りましたよ」

「來月には式だったというのに……本當に可哀そうでした……」

「……過ぎた事を言っても、仕方無いですから……」

俺は7年前、結婚を約束したが居た。 しかし、彼はもうこの世には居ない、式の一か月前に通事故で死んでしまった。 俺は學校に連絡がり、急いで病院に向かった。 だが、その時には遅かった……。

「あの時の事は謝しています。校長が々気を使ってくれたおかげで、私はこうして教師を続けて居られます」

「いやいや、貴方自が強かったんですよ」

の彼を失い、俺は何もやる気が起きず、毎日家に引きこもっていた。 そんな時だ、この校長が俺を外に引っ張りだしてくれた。 今でも謝の気持ちは忘れていない。 この人が居たおかげで、俺は社會に復帰出來たと言っても過言ではないのだ。

「すいません、話がそれましたね。実は話と言うのは……新生の事なんです」

「はぁ……問題児でも學するんですか?」

「……ある意味、不良生徒の方が楽かもしれません……」

校長はソファーに座るように言い、一枚の學願書を見せてきた。

「今村……雄介……この子が何か?」

「はい、この子は々と訳アリでしてね……」

「なんですか? 合格発表後に問題でも起こしたんですか?」

「いえ、この子は問題どころか、試の績は上位10名の中にるほど優秀です」

「では、なぜこの子が?」

何か病気でも抱えた生徒なのか? 俺は最初そう思った。 たまにいるのだ、重い病気を抱えており、育などの特定の授業で特別扱いをせざる負えない生徒が、しかし自分の擔當は世界史だ、何か特別扱いをしなくてはならない理由は無いはずなのだが……。

「この子は、い頃に両親を目の前で殺害され、更に拐され、人実験に利用された過去をもっています」

「は……ほ、本當ですか?」

俺は驚いた。 そんな映畫のような人生を送ってきた年が居るなど、言葉だけでは信じられなかった。

「はい、彼の學にあたり、刑事さんからも彼の過去を伺いましたが、間違いないそうです」

「な……なるほど……それでこの子は今は?」

「心優しい夫婦に引き取られ、今は普通に暮らしているそうです。今年副會長に選ばれた、一年生の今村里奈さんを知っていますか?」

「はい、教師の間でも彼は評判ですから……まさか!」

「そうです、お察しの通り彼の義理の弟です」

姉の方の授業をけ持っていた俺は、姉の事を思い返していた。 績もよく、友人も多い印象で、なぜかわからないが、弟の話を楽しそうにしているのを覚えていたが、まさかその弟にそんな過去があったなんて……。

「彼は事件がきっかけで、に対して拒否反応を起こす質になってしまい、れられただけで、気絶してしまうそうです。おそらく、犯人のが原因だろうと、刑事の方が言っていました」

「なぜ、その話を私に?」

何となく察しはついていた。 俺は今現在クラスを持っていない、そのためこの話を俺にする理由は一つしか思いつかなかった。

「貴方にお願いしたいのです。彼の擔任を……」

予想通りの校長の言葉に、俺はやっぱりかと頭を抱える。

「校長、私には荷が重すぎます……他のベテランの先生に……」

申し訳なく思ったが、俺は校長にそう告げる。 彼が死んだときも、自分ひとりで立ち直れなかった俺に、この生徒は無理だと思った。 人生経験を考えてももっとベテランの先生に任せるべきだと、俺は思った。 しかし、校長は笑いながらこういった。

「ハハハ、やっぱりそう言いましたか……」

「予想してたなら、最初からベテランの先生に……」

「いえ、やはり貴方しかいないと、私は今確信しました」

「え?」

俺は校長の言葉の意味が全く分からなかった。 そんな重たい過去を抱えた年の擔任など、俺には無理だ。 自分のメンタルケアすらできづ、あの頃は何回自殺未遂を行ったか分からない。

「私は、彼を見た時思ったのです。石崎先生、貴方に良く似ていると」

「私に……ですか?」

「はい、よく似ています。あの頃の貴方に……」

「……それとこれにどんな関係が?」

俺が尋ねると、校長は笑顔で俺の元に近づき、笑顔で言う。

「とりあえず會って見て下さい。今から行くと、私が連絡をれておきました」

「え! 急ですね……」

「全は急げと言いますからね」

「急がば回れ、とも言いますが……」

校長の強引な押しに、俺は負けて會ってみる事にした。 校長から地図を預かり、俺は車を飛ばして、目的地まで向かった。

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