《草食系男子が食系子に食べられるまで》第18章 石崎の過去 3
「自分が悪くないのは頭でわかってるんだよな……でも、自分がこうしたら、こうしなかったら、そう考えると結果は変わったんあじゃ無いかって思って、自分を責め続ける……」
「じ、自分は……」
「知ってるよ。そうじゃ無いって言いたいんだろ? でも、そうなんだよ……俺もそうだった……」
俺は昔を思い出し、彼に話を続ける。 彼は大人しく聞いていた。 出されたコーヒーはもう冷め始め、次第に暖かさを無くしていた。
「々思うとこもあるだろうが、安心して學校に來いよ。過去の事で々あったかもしれねーけど、そん時は頼ってくれ、俺、君のクラスの擔任らしいしな」
「そうなんですか?」
「あぁ、だから來たんだよ」
彼は次第に笑顔になっていった。 俺の言った事が共できたのか、それとも不安な事が一つなくなったからか、その表所は先ほどまでのただの表ではない。 年相応の年の無邪気な笑顔だった。
「でも、自分はやっぱり他人から距離を置こうと考えています」
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「なんでだ?」
「自分は、々とまだ、決著がついていませんから……」
「逃げてる犯人の事か?」
「はい、もしまた自分を殺すために現れたら、おそらく自分と親しい人間の命も奪おうとします……だから、自分はなるべくクラスの人間には関わりません」
この事に関しては、俺は下手な事は言えない。 犯人がいまだ逃亡中と話も聞いて知ってはいたが、10年も経った今、本當に彼を狙ってくるだろうか? 個人的にはそんな考えが脳裏をよぎるが、殺人犯の考えは俺にもわからない。 そんな危険があると言われれば、納得もしてしまう。
「そうか……、まぁそう言う事は個人の自由だ。それに友達は一人くらいいるんだろ?」
「はい……一応そいつも一緒に験したので」
「なら良い、本當に信じられる奴が一人でもいるなら、それで良いさ……」
友人が居ると聞き、俺は安心した。 こういう過去を持った人間には、そのことをわかってくれる友人が一人でも居るのと、居ないのでは全く違う。 確かに、この今村雄介と言う年は問題かもしれない、だがそれ以上に、彼には味方が必要だという事が、俺は彼と話してよくわかった。
「この話は教師の中でもししか話さないから安心してくれ、の事や人実験の事は言わないかわ安心しろよ」
「はい、助かります」
安心した表を浮かべる雄介に、俺はらかい笑みで答えた。 俺もこんなじだったのかなと、ふと考え校長が直接會って話して見ろと言った理由が何となくわかり始めた俺は、冷めきったコーヒーを飲み干した。
「先生、一つお聞きしても良いですか?」
「ん? なんだ?」
真剣な表の彼に、俺は口に殘るコーヒーの苦みを気にしながら、話を聞いた。
「先生は……事故を起こした相手を殺したいと思った事はありますか?」
「な………」
その質問に、俺は驚き言葉を失う。 コーヒーの苦みなどどうでも良くなり、俺は彼の顔を見る。 何を言っているのか、最初はそう思った、しかし、段々わかってきた。
「君は……思っているのかい?」
俺は逆に質問で返した。 すると彼は、ためらいなく答えた。
「はい」
その答えに、俺はあまり驚かなかった。 自分も一時期思っていたからだ、事故を起こした車の相手を恨み。殺したいとまで思った。 だが、彼と俺では狀況が違う。 殺人と事故は全く違う。最初から悪意がある殺人の場合、犯人への怒りが無くなる事は無い、事故のように故意ではない場合は、犯人を許す事も出來る。 そのため、俺は彼のその言葉がすごく引っかかった。
「……今日初めて會った俺が、言うべきことではないかもしれないが……仇討ちなんて誰もんでいないんだぞ?」
俺は真剣な表で彼にそう告げた。 彼も真剣に俺の話を聞き答えた。
「……大丈夫ですよ。そんな事は考えていません。すいません、失禮な質問でしたね」
「まぁ……恨みを持つ気持ちも……わかるが…」
「大丈夫ですよ。でもやっぱり……早くつかまてしいと、思っています……」
窓の外を見つめ、何かを考えるように彼は呟く。 俺はこの時思った、この子には支えになれる人間が多く必要だと、彼を知り彼を思ってやれる人間が多くいなければ、彼は家族を殺した犯人と同じ人殺しになってしまうと……。 俺はその後すぐに今村宅を後にし、學校に戻った。
「校長……」
「おや、お帰りなさい。で、どうでしたか?」
「校長の言った意味が分かりました。それと同時に、彼の事を聞いて決心もつきました」
「……やはり、そう言うと思っていました……」
この校長室に來るまでの間、俺は考えていた。 彼を知ってしまったからだろうか、それとも昔の自分に似ていたからだろうか、俺は彼の事が心配になり始めていた。 彼が間違いを犯さないように、俺に何か出來ないか、そんな事を今も考えていた。
「彼を頼んでも良いですか? 石崎先生……」
「はい、自分に何が出來るか分かりませんが、頑張ります」
俺は彼の過去と今の様子を知り、決意した。 彼の味方で居続けようと。
*
すべてを話し終え、石崎は葉山の顔を見る。
「そんなじで、俺はあいつを學當初から見てきました。相変わらず、山本意外とは誰ともつるまず、基本は一人だった。でも最近、あいつの周りが騒がしくなって、俺はうれしかった。俺以外にもあいつをわかってやれる人間が増えて、俺は安心してました……」
「……そうだったんですか」
だからこそ、石崎は今回の事件のあとが気がかりだった。 湯島のような人間が、雄介の事を言い、雄介が悪者にされるのが。
「あいつは、化けなんかじゃない………ただの高校生だ」
學して一か月ほどした時に、クラス全員で撮った寫真を石崎はデスクに飾っていた。 その寫真をでながら、石崎はつぶやく。
「先生……本當にお優しいんですね」
「そんな事は無いですよ。結局、俺はあいつらの居る前で、湯島にあんな話をさせるきっかけを作ってしまった……殘酷な事をしてしまった……」
「でも、今村君には伝わっていますよ。きっと……」
優しく微笑み、葉山は石崎にそういう。 その笑顔に安心し、石崎は笑顔で葉山に言う。
「葉山先生の笑顔を見ていると、安心できます。ありがとうございます……」
「そ、そうでしょうか?」
顔を赤らめ、石崎から顔を逸らす葉山。
「はい、葉山先生みたいなのが……」
「わ、私みたいなのが?」
石崎の意味深な言い回しの続きが葉山は気になり、石崎の方に寄る。 石崎はを逸らしながら、言葉の続きを言う。
「た、擔任だったら、生徒は幸せですね」
「あぁ、そうですよね……知ってました……」
「急にしょんぼりしないで下さい……」
石崎の言葉に、期待した葉山だったが、結局はいつも通りの石崎の思わせぶりに、背なかを丸めてしょんぼりする。
「じゃあ、俺はそろそろホームルームに行きます」
立ち上がり、職員室を後にしようとする石崎。 そんな石崎に、葉山は一言だけ聲をかけった。
「私も石崎先生の味方ですから!」
その言葉を聞き、石崎は口元を緩めて笑い、笑顔で自分の教室に向かった。
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