《草食系男子が食系子に食べられるまで》第19章 クラスメイトと雄介 3

こんなにも暖かい場所さえも雄介は手放し、仇が打ちたかったのか。 それは本人にも今は分からない、しかしこのの痛みが、段々雄介は分かり始めていた。

「おーい、次は今村と山本だぞー」

教卓の前に居る堀が、雄介と慎にくじの順番を告げる。

「お、じゃあ行くか…って言っても、加山が行かせてくれればだが……」

気が付くと、雄介は加山に制服の袖を捕まえれ、涙目で雄介を見ていた。

「雄介~、今の席は嫌なのぉ~」

「えっと……なんていうか……」

雄介は返答に困ってしまう。 こんなに悲しまれると思わなかったので、なんと言っていいか分からない。

「はぁ……優子、それなら今度は今村君の隣を引けば良いでしょ……」

「いってらっしゃい雄介! 絶対私の隣を引いてね」

「う…うん…頑張てみるよ……」

優子は沙月に言われ、コロッと態度を変えて、雄介の袖を離し笑顔でそう言う。 雄介は、いくら何でもそれは無理だと思いながら教卓に向かい、用意された箱からくじを一つ引く。

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「お! 俺は今の加山の席だな、窓際ラッキー。雄介はどうだった?」

「えっと、今の席と変わらないかな?」

「すげーな、変わりなしかよ。じゃあ、席が前後で近いな」

「うん、そうだね」

これは雄介にはありがたかった、今のところ慎と一番砕けて話が出來るし、何より信頼が出來る。 とりあえず、慎と雄介は先ほどまでいた雄介の席付近に戻り、優子に結果を告げる。

「どうだった?」

「あぁ、俺は今の加山の席で、雄介は変わらずだ。だから、加山はこの席を取らなくちゃな」

「よし! 頑張る!」

「優子が頑張っても仕方無いでしょ……」

そんな事を離しながら、優子と沙月は教卓の方に向かい、くじを引きに行った。

「まぁ、加山には申し訳ないが、確率が低いからな……」

「だよね、流石に狙った席には……」

なんて話を慎と雄介がしていると、教卓の方から優子の元気な聲が聞こえて來た。

「やったぁぁぁぁ!! 雄介やったよ~!」

雄介と慎は、そんな加山の様子から優子が目的の席を獲得した事を察する。

「マジかよ……」

「加山さんって、運良いんだね……」

こんなところで運を使って大丈夫なのだろうか? そんな事を考えていると、優子が雄介の元に戻ってくる。

「やったよ! 流石! の力は凄いね~」

「あ…なんだ……」

加山の言葉に苦笑いで答える雄介。 結局雄介の席の狀況はたいして変わらなかった。 前に居た優子が隣に移し、前の席に慎が來たくらいだ。

「ん……終わったか?」

丁度全員くじを引き終わったところで石崎が目を覚ました。 椅子に座りながら大きくびをし、委員長に席替えが終わったかを尋ねる。

「後は、席を移するだけです。先生も移してください、邪魔になります」

「教師に邪魔って言うなよ……よっこらせ! ふぅ……」

石崎は立ち上がり、教卓に椅子を戻して、席を移させるように指示を出す。 石崎の指示に従い、クラスの生徒は全員移を開始する。

「う~ん、結構景は変わったな……うるさい奴らが隣同士になったもんだ……」

石崎は、目の前の一番前の席に仲良く席を並べる、堀と江波を皆がら言う。 堀と江波は、石崎に言われ聲を揃えて「こいつと一緒にしないでください!!」と言っていた。

「なんであんたが隣に居るのよ!」

「それはこっちのセリフだ! しかも黒板の目の前って……地獄だ…」

は絶的な表を浮かべながら、頭を抱え俯く。 そんな堀に対して江波はまだ諦めていない様子で、先生にやり直しを要求する。

「先生! やり直してください!! こいつ一緒じゃ、うるさくて授業に集中出來ないです!」

「んー、まぁ頑張れや」

「返答適當過ぎませんか!!」

寢起きで頭が回らないのであろう、石崎は江波に適當に返事をすると、大きなあくびをした。

「まぁ、お前らは席が離れてもうるさいし、どっちにしろかわんねーから良いか……」

「「良くねーよ!!」」

またしても聲を揃えて言う江波と堀、雄介はそんな二人を見て、本當に仲が悪いのか疑問に思う。 そんな事をしている間に、一時間目終了のチャイムが鳴り、授業が終わりを迎えた。

「良し、じゃあここまで、じゃあ俺は職員室に帰る……」

職員室と言う単語に、雄介はし引っかかった。 石崎は朝、雄介の事を悪く言った湯島に対してし行き過ぎた反撃をした。 職員室で白い目で見られていないかし心配になった。

「あ、今村。そんな可哀そうな人を見る目で俺を見なくても大丈夫だぞー、一応俺にも見方は居るみてーだから……」

教室を去る間際、石崎は雄介にそう言い殘して教室を後にする。 心配するな、と言う意味だろうか? と考えながら、雄介は石崎が言った言葉の意味を考える。 雄介が真剣に考えている中、それを隣から見つめる強い視線がある事に、雄介は直ぐに気が付いた。

「あ、あの……加山さん……」

「もぉ~、優子で良いって言ったのに……」

「す、すいません。優子さん何か?」

頬を膨らませ、雄介の呼び方に対して不満をいう優子。 雄介は直ぐに呼び方を訂正し、なぜそこまで凝視していたのかを聞いてみる。

「あぁ、なんでもないよ~、気にしないで~」

「は、はぁ……」

雄介はあまり納得のいかないままに會話を終了し、再びボーっと外を眺め始める。 すると今度は前の席から聲が掛かった。

「なに見てんだよ?」

「ん? あぁ、ちょっと外をね……」

「なんか面白いものでもあんのか?」

「いや、別にないよ…でも、なんていうか懐かしい気がして……」

「ふーん、まぁ確かに、お前は記憶を無くす以前も、良く外を見ていたからな」

慎も雄介と同じく、窓の外を眺め始める。

「……あとは……」

「ん? 後は?」

「隣の視線が強すぎて、逆方向を向いていたいからかな……」

「あぁ……こりゃあ耐えられんわ……」

慎は隣の席を見ながら納得する。 隣の席では、優子が雄介の事をすごく見ていた。 目を輝かせ、時に表を変えて雄介を凝視している。 雄介はそんな視線に耐えられず、外に視線を逃がした意味もあった。

「にしても、加山が隣って事は、これからの授業も大変そうだな……」

「この狀況から察するに、自分もそう思うよ……」

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