《草食系男子が食系子に食べられるまで》第20章 ただいま 2

目を覚ますと既に朝だった、雄介はベッドから起き上がりカーテンを開け、外を見る。 外は快晴で気持ちがよく、寒いが、日差しが照り付けて溫かい。

「……學校、行きたくねーな」

雄介はそんな良い天気の外を見ながらつぶやく。 時刻は6時半、一階からは紗子が料理を作る音が聞こえてくる。

「帰って……來たのか……」

記憶を取り戻した雄介にとって、その日の朝はし憂鬱だった。 まず、家族にどう接してよいかわからない。

「はぁ……どうしよう……」

昨日までは普通に接する事が出來たが、いざ記憶が戻ると、どうしたら良いのかわからなくなってしまう。 ベッドに腰かけ、とりあえず落ち著いて考えをまとめる雄介。

「……ただいまか……」

夢で言われたことを思い出し、雄介は意を決して部屋のドアを開ける。 そのまま一階に向かい、雄介はリビングのドアを開ける。 そこにはエプロン姿で料理をする紗子が居て、ダイニングテーブルでは玄が新聞を読んでいる。

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「ん、あぁおはよう、雄介」

「あら、おはよう。今日は良い天気ね」

明るく挨拶をわす二人。 雄介のために長期の休暇を取り、最近はいつも家にいる。 本當に心配をかけてしまった。 二人の気持ちを考えると、自分のやろうとしていた事が、どれだけ罰當たりだったのか、考えさせられた。

「紗子さん……玄さん……」

雄介は涙を堪えながら、今の両親の名を呼ぶ。

「ん? どうかしたのかい」

「雄介?」

雄介はそこで気が付く。 自分の勝手さに、自分がどれだけこの二人に支えられ、今まで生きてこられたのかを……。 雄介は笑顔で二人に言葉を発する。

「ただいま……」

その言葉の意味に、紗子と玄は直ぐに気が付いた。 紗子は料理をしていた手を止めて、玄は新聞を機に無造作に置き、二人で雄介の元に駆け寄った。

「雄介! もしかして記憶が……」

「はい…大変なご迷をおかけしました」

雄介は深々と頭を下げて二人に謝罪する。 紗子は涙を流して雄介を抱きしめ、玄は目頭を押さえて涙を流している。 雄介は二人の反応に、心をひどく痛めた。そして、雄介はこの時誓った、もうこの二人を心配させない、もう不安にさせないと。

「でも……なんで思い出せたんだい?」

「なんだか、不思議な夢を見て、目が覚めたら思い出せてました。本當にすいませんでした」

「いいんだよ。記憶も戻って、本當の意味で雄介が帰ってきた……それだけで十分さ」

玄は雄介の肩に手を置き、語りかけるように優しく雄介に言う。 紗子は相変わらず涙を流して雄介を抱きしめていた。

「心配したのよ……また……あなたが……何かを失うかもって……」

「心配かけてすいません。もう、何も失いませんよ……俺は」

本當の子供ではない自分をここまでしてくれる紗子と玄に、雄介は本當に良い家に引き取られたと再確認する。 それと同時に、この大きな恩をいつか返せればと思っていた。

「ふあぁ~、おはよう……って、お母さんもお父さんも何してるの?」

里奈が起きてリビングにやってきた。 不思議そうに見つめる里奈に、雄介は微笑みながら里奈にも二人に言ったのと同じ言葉を言う。

「里奈さん、ただいま……」

「え、ユウ君……もしかして……」

「帰ってきました。っていうのはしおかしいでしょうか?」

「ユウ君!!」

里奈も雄介の記憶が戻ったことに気が付き、雄介の元に駆け寄って、雄介を抱きしめる。 いつも抱き著いてくる里奈だが、今回は違う。 本當に弟を心配し、記憶が戻った事を心の底から喜び、涙を流して喜んでいる。 隨分心配をかけてしまったと、雄介は考えさせられた。

「よかった……本當に……良かった………」

涙を流し、泣きじゃくる里奈を見て雄介は己の淺はかさを思い知った。 もし自分が死んでいたら、もっとこの人達を悲しませていただろう。 自分が滝沢を殺して、そのあと自分も死ねば、すべてが丸く収まると考えていた雄介だったが、それが間違いだということに改めて気が付く。 ようやく紗子と里奈が泣き止み、今村家一同はテーブルに付き、落ち著いて今後の話をしていた。

「とりあえず、俺は今日、病院に行ってこようと思います。記憶が戻った事を奧澤先生に伝えて、脳の検査を行ってもらわないと」

「じゃあ、私も行くわ、先生から話を聞かなきゃいけないし、玄もくるでしょ」

「もちろんだよ。どうせ家にいるだけだからね」

「すいません……本當に迷を……」

自分のせいで仕事を休む羽目になった二人に対して、雄介は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「良いのよ、どうせ今回のプロジェクトが終わったら、私はもう家から會社に通うことにしてたし」

「僕の方も気にしなくていいよ。仕事よりも雄介の方が大切だからね」

二人の言葉に、雄介はがいっぱいだった。 結局雄介は急遽學校を休み、病院に行くことになったのだが、大変なのはここからだった。

「それならお姉ちゃんも行くわ! 學校はもちろん休んで」

里奈は雄介の記憶が戻ったことで大変上機嫌だった。 しかも、さっきから雄介の腕にしがみついて離れようとしない。 本當に心配をかけてしまったこともあり、雄介は里奈何も言えずに、されるがままだった。

「……あんたは學校行きなさい」

「いや! ユウ君が心配」

「里奈、お母さんとお父さんが付いているから心配はいらないよ。それにそろそろ行かないと遅刻だよ?」

「學校よりユウ君の方が大事よ! それに、一日くらい休んだってだいじょ……」

ピンポーン

里奈が言っている途中で家のチャイムが鳴った。 紗子が玄関に行き、対応すると制服姿のと共に、リビングに戻ってきた。 雄介はそのに見覚えがあった。

「げ、佑ちゃん……」

「おはよう、里奈。さ、學校に行くわよ!」

リビングにってきたのは、里奈のクラスメイトであり、同じ生徒會の會計の石城佑セキジョウユミだった。 佑は無理やりに里奈を引っ張り、學校に連れて行こうとする。

「いや~、ユウ君と一緒にいる~」

「駄々をこねない! 今日も生徒會の會議なんだから! 里奈のお母さん、それじゃ預かっていきます」

「じゃあ、お願いね。里奈、いってらっしゃ~い」

「いーや~!!」

里奈は佑に無理やり連れていかれ、その様子を紗子は笑顔で手を振って見送った。 そんな風景を見て雄介は苦笑いをするが、同時にこんな日常が幸せなんだとじた。

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