《草食系男子が食系子に食べられるまで》第20章 ただいま 6

「だから、私は待つことにしました」

「え?」

「雄介のその質が治るまで、私は待ちます。今のままでは、私は対象としても認識されていないようですから、まずはそれからです」

なんだかどこかで聞いたような事を言っている織姫に、雄介はため息じりに言う。

「いつ治るかもわかんないのに、待ち続けられるのか? 正直別な良い人が現れると思うが……」

「多分現れないです。私は貴方が私を嫌わない限り、大好きですから」

あったばかりの頃は、自分の事を散々言っていたのに、なぜこうなってしまったのだろう。 そんな事を考えながら、雄介は顔を隠すように頭に手を當てる雄介。 真っすぐに自分に気持ちを打ち明ける織姫が、なんだか優子に似ていると思いながら、雄介はため息を吐いた。

「はぁ……なら好きにしたらいい……俺もこの質は治したいと思ってるしな……」

「あ、確かもうっちゃいけないんですよね?」

「あぁ、多分いまの狀態でお前にられたら、即気絶する」

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雄介は手のひらを織姫の目の前に突き出し、絶対にるなとアピールする。 そんなアピールをされた織姫は、頬を膨らませて文句を言う。

「うぅ……病室では手を握れたのに……」

「なんで唸るんだよ……」

「だって……こんなに近くにいるのに……」

「頬を膨らませるな、仕方無いだろ……」

ベッドの上で頬を膨らませ続ける織姫。 雄介はそんな織姫を見て、しほっとする。

「でも、お前が俺の部屋に來るなんてな、前は部屋の外でも嫌がってた癖に……」

「そんなにしたのは、雄介じゃない……」

「その言い方、外で絶対するなよ」

織姫は雄介をからかい笑みを浮かべる。 そんな時だった、雄介は織姫の目から涙が流れ出るのを見た。

「お、おい、お前……」

「あ、あれ? お、おかしいな……なんで……泣いて……」

織姫から溢れ出る涙は、どんどん大きくなり、大粒のになっていく。 雄介はなぜ、織姫が涙を流しているのかがわからず、一人でアタフタしてしまう。

「すいません……うれしくて………いつもの雄介で……いつもの……優しい……」

「織姫……」

織姫はただうれしかった。 いつもの記憶が戻り、いつもの雄介に戻り、前のようにこうして話せることが、どうしようもなく、嬉しかった。 だから、安心し、糸が切れたように涙が目から溢れて止まらなかった。 雄介はそんな織姫を見て再び気が付く。

「……ごめん、織姫。もう俺は、どこにも行かねーよ」

自分が居なくなり、悲しんでくれる人がいる。 忘れてはいけない、雄介はそう思っていた。 自分がどれだけ織姫に迷をかけ、どれだけ心配させてしまったのかを……。 雄介は、椅子から立ち上がり、泣いている織姫の頭をでる。 やはり拒絶反応が出た。 頭がクラクラし、吐き気が雄介を襲う。 しかし、雄介はやめなかった。

「ゆ、雄介……大丈夫?」

「あぁ…正直きつい……でも、お前はもっと辛かったんだろ?」

どんどん雄介の顔を青くなっていき、織姫はそんな雄介を心配そうに見つめていた。

「それに……こうでもしないと……治んねーしな……もう無理……」

「きゃー!! ゆ、雄介? 雄介?」

雄介はそのままベッドに倒れてしまった。 織姫は慌てて雄介に聲をかけるが、雄介は気絶してしまい、うーうー唸っている。 そんなところに、ドタバタと階段を駆け上がり、雄介の部屋のドアを開けて誰かが部屋にって來た。

「どうかしましたか、お嬢さ……ま?」

って來たのは、倉前だった。 倉前が見た景は、雄介がベッドでうつ伏せに倒れ、織姫がそんな雄介の上から覆いかぶさっている狀態だ。 倉前はコホンと一つ息を付くと、ポケットから四角い袋を出し、織姫に手渡した。

「ゴムはつけて下さい、それでは」

そういうと、倉前はすぐさま部屋を後にした。 殘された織姫は、渡されたを見ながら「なんだったのだろう?」と思いながら、首を傾げる。

「ち……ちがう……」

かろうじて意識のあった雄介は、苦しそうな聲でそういいながら、再び意識を失った。

「あぁ……まだ無理はしない方が良いかもな」

「そうですね、また倒れられても困りますし……」

雄介はしして意識を取り戻した。 起きて早々に、織姫が雄介に倉前さんから手渡されたを見せて「これって何に使うんですか?」と質問され、雄介はため息を付き、それをけ取ってごみ箱に捨てた。

「はぁ……あの人もいい人なんだがな……」

「あれは何に使うんですか?」

「自分で調べてくれ……俺が説明すると、いろいろ面倒だ」

段々力を回復させてきた雄介は、立ち上がって大きくびをする。

「一階に行こうぜ、今日は飯食って行けよ。久しぶりに俺も作るから」

「え! 雄介って料理できるの?」

「あれ? 言ってなかったか?」

雄介の料理が出來るという発言に、織姫は驚きを隠せなかった。

「うぅ~……私よりも子力高い……」

子じゃ無いっての……まぁ、し前まで引きこもってたお嬢さんじゃ、料理は出來ねーだろうな」

「うっ! 痛いです……なんだか心がとっても痛いです……」

図星をつかれ、織姫はを押さえてうずくまる。

「まぁ、子力なんて、料理だけじゃないだろ? ちゃんと化粧して、灑落もしてるお前は、別に子力低くないだろ?」

「え………そうですか? じゃあ、今日の私は可いで……」

「さて、久しぶりに腕が鳴るな」

「なんでこういう時だけ聞いてないんですか!!」

雄介は織姫の話を最後まで聞くことなく、部屋を出て行ってしまった。 殘された織姫は、雄介の部屋で一人、悲しく雄介への不満をんでいた。

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