《草食系男子が食系子に食べられるまで》第20章 ただいま 8

雄介は重たい足を引きづってクラスに向かっていた。 どこにいても誰かに見られているような気がしたが、それ自は問題ではなかった。

「はぁ~、慎くらいには、昨日のうちに電話で事を説明した方がよかったかもな……」

昨日は織姫たちが來ていた事もあり、雄介は記憶が戻った事を誰にも言わずにいた。 気が付いた時には既に夜中で、流石に迷かと思い、電話はひかえたのだが……。

「メールしときゃ良かったな……」

こういう時に限って、メールやSNS系のアプリの存在を忘れる雄介。 連絡を取り合う知り合いがいままで多くなかったので、そういう便利なの存在を雄介は忘れていた。

「はぁ~、とりあえず職員室だな……」

まずは石崎のところに行くことにした。 とりあえずは、先生に話しておくのが一番と思い、雄介は職員室に向かった。

「失禮します」

職員室の戸を開けて、雄介は中にっていく。 ここでもやはり視線が雄介に集まる。

「ん、なんだ今村か。話は病院の方から聞いてるぞ」

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「え、マジっすか……」

「マジなんすよ」

石崎のもとに行き、雄介が聲をかける前に、石崎は雄介に向かって口を開いた。

「まぁ、なんにせよ。良かったじゃねーか」

「先生……あの……俺……」

雄介はまずは謝るべきだろうと思い言葉を選ぶが、なかなか言葉が浮かばない。 いざとなってみると、いったい何から謝ったら良いのかわからない。

「まぁ、あれだ。多分お前の事だ、謝ろうって思って何言って良いかわからなくなってんだろ?」

「先生は良くわかりますね……」

「まぁ、申し訳なさがあるのは分かる、そういう時は、素直に言いたいことを言えば良い。変にがえる必要なんてないさ」

「はい」

石崎はいつものように椅子にもたれ掛かりながら、眠そうな顔で雄介に言う。 石崎の言葉に、雄介はし気が楽になった。

「先生」

「ん? どうした?」

雄介は石崎に頭を下げ、一言だけ、本當に言いたいことを言った。

「ありがとうございます」

言われた石崎は眠そうな顔をし歪めて笑いながら、雄介に言う。

「お前が改まって言うと、気持ち悪いな」

「先生、ひどすぎません?」

そんな皮を言われても、雄介は嫌なじは一切しなかった。 石崎の言葉に穏やかな顔で答え、雄介は職員室を後にし、教室に向かった。

「言いたいことをか……」

石崎から言われた言葉を思い出しながら、雄介は自分のクラスに向かっていく。 今まであまり関わってこなかったが、実際は良い奴らばかりなんだということに気が付き、雄介は心の中でバカな奴らだと思っていた事を恥じる。

「本當に、お人良しばっかりだな……」

記憶喪失時に學校に來た時の事を思い出し、雄介は笑みを浮かべて教室に向かった。 言わなければならない、自分を支えてくれた人に、クラスメイトに、どうしても言わなければいけないことがあった。

「す~はぁー」

教室のドアの前で雄介は深呼吸をし、雄介は覚悟を決めて教室にっていく。 謝りたかった。クラスの皆を危険に巻き込んだことを何も相談できなかったことを……。

「おはよう」

雄介は教室にり、そう言った。

「おう、おはよ」

「おはよ」

「おっはー」

返ってくる返事に雄介は軽く手を振って返す。 そして教卓まで足を進めみんなの前に立った。

「どうした今村? なんかあったか?」

「さては來週のテストの範囲を教えてほしいんだな?」

「あほ、きっとあれだ、新しい一発蕓のお披目」

「アホはお前だろ……」

雄介の突然の行に、クラスが雄介に注目する。 見渡すと、そこには慎が居て、沙月が居て、江波や堀、渡辺もいた。 そして、當然そこには優子もいた。 雄介はスクールバックを床に落とし、みんなの前で頭を下げ、雄介がみんなに対して今一番言いたいことを言う。

「ありがとう……みんな……」

こんな自分を庇ってくれた奴がいた。 こんな自分に優しく接してくれた奴が居た。 こんな自分と友人であり続けた奴がいた。 そんな人たちに、雄介は謝していた。 記憶喪失の時、彼らがいなければ自分はどうなっていたかわからない。 迷をかけまいとした行で、彼らを危険に巻き込んでしまったにもかかわらず、彼らは雄介を咎めなかった。 そんな人たちに、雄介はこの一言を言いたかった。

「雄介……」

「慎……」

「記憶、戻ったんだな……」

「あぁ、戻ったよ」

慎が雄介の前まで來てそういうと、クラスが一気に騒がしくなった。 慎は真顔のまま話を続ける。

「雄介、とりあえず歯を食いしばれ」

「え……ぶっ!」

慎はそのまま雄介の顔面にパンチをれた。 雄介はもちをついてしまい、床に座り込む。 毆った慎は笑顔で涙を流しながら雄介に言う。

「散々心配かけやがてこの野郎! お前らやっちまうぞ!」

「「「おうよ!!」」」

「お、おい! 慎、お前これってリンチだろ?!」

「うっせー、俺がどれだけ心配したと思ってんだ! 今日は毆られろ!」

慎の拳は、不思議とそんなに痛くなかった。 焚きつけられたクラスのみんなも優しくポカポカ毆るだけ。 そこで雄介は気が付く、慎が何を言いたいのか、みんなが何を言いたいのかを……。

「雄介! 散々迷かけたんだから、そろそろ私と付き合っても……」

「あぁ、それとこれとは別問題だ。それに俺の質戻っちまったから、陣は近づかないでくれ」

「ひどい!」

近づいてきた優子の方に雄介は出し、優子にそういう。 思えば、優子と會って自分の人生が変わったのかもしれない、雄介はそう思っていた。 おそらく一番心配をかけたであろう、あの時慎と一緒になって止めてくれなければ、自分はここに居なかっただろう。 雄介はクラスのみんなが自分だと思って毆っている何かをしり目に、優子に言う。

「ちょっと廊下出よう」

「え、なに? 駆け落ち?」

「あほ」

そういって雄介と優子は廊下を出た。 それに気が付ている者はなく、その一人であった沙月はそんな二人を見て、珍しく笑っていた。

「お前には々と心配かけたからな……その……なんだ……あれだ」

「うん、心配した。いっぱい泣いたし」

「だ、だよな……す、すまん……」

今回ばかりは頭が上がらない雄介。 強気になれず、すっかり優子のペースになってしまった。

「勝手に死ぬとか言い始めるし、勝手に院するし、勝手に忘れちゃうし……ほんと、心配したよ」

「す、すまん……」

雄介は何も言えなかった。 だが、そんな雄介に優子は優しく笑いながら言った。

「でも、戻ってきてくれたから。今回はデート一回で許してあげる」

笑みを浮かべて離す優子の目にはやはり涙があった。 雄介はそんな優子を見て思う。 本當に心配してくれていたんだと言うことに。

「優子……お前にもこれは、言っておかなきゃだよな……」

「? なに?」

涙を袖で拭いながら優子は雄介に尋ねる。 雄介はそんな優子に笑って言った。

「ただいま、優子」

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